事例紹介

地元に愛される温泉街がはじめたインバウンド受入のための第一歩 ~熊本市・植木温泉地区 国際スポーツ大会をきっかけに~

 2019年9月から11月に開催されたラグビーワールドカップ2019、12月に熊本県内各地で開催された女子ハンドボール世界選手権大会には、海外からも大会選手や観戦者が熊本を訪れました。この2つの国際スポーツ大会に向けて、熊本市は様々なインバウンド受入整備を進めてきました。

 

ラグビーワールドカップ熊本会場の
  試合日前に特別公開が始まった熊本城

女子ハンドボール世界選手権の
    タペストリー(熊本市中心部)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その中から今回は、熊本市中心部から車で北に40分ほど離れた場所にある植木温泉地区のインバウンドへの取り組み事例を取り上げ、取材しました。

 植木温泉は、親子3代で入浴に来るなど地元の方々に長く愛されており、ぬるぬるとした泉質が特徴の美肌の名湯。訪日旅行者に温泉を楽しんでもらうには、どのような整備が必要なのか。受入準備と対応状況はどうだったのか。熊本市観光政策課の黒木主査と植木地区のみなさんに尋ねました。

 

ゆったりと過ごせる植木温泉

Q.どのような準備を行ってきましたか

 (熊本市観光政策課 黒木慎也主査)

 インバウンド受入整備のため、平成29年度に、自治体国際化協会のプロモーションアドバイザー派遣事業注1を活用しました。当時、国際スポーツ大会開催を2年後に控えていましたが、具体的な政策を打ち出せていない状況でした。植木温泉街も外国人受け入れ経験がほぼない旅館ばかりだったので、インバウンド受入のために、まずやるべきことは何かを助言いただきたかったのです。アドバイザーには施設・旅館ごとに視察していただき、インターネット予約サイトの活用や利用者に口コミの記入を呼び掛けることなど、個別に具体的なアドバイスいただくことができました注2。当初はサイト活用に抵抗がありましたが、インターネット予約は、予約・決済がスムーズで日本のお客さんを相手にしているのとほとんど変わりません。また、アドバイザーからは、予約サイトの情報を充実させること、蓄積された口コミの重要性を教えていただきました。最初は口コミを書いてほしいとお願いするのを躊躇していたのですが、不快に思う人はほぼいないとのことで、今では積極的に声をかけられるようになったそうです。

 また、外国人受け入れにおいて不安の声が多かったのが、お風呂の入り方や宿泊プランなどの外国語での説明です。そこで熊本市が多言語案内シートを作成しましたが、現在は使いやすいように旅館ごとにアレンジして活用しています。

 また、熊本県の補助を活用し、くまもとフリーWi-Fiの設置を行ったり、熊本市が旅館のホームページの多言語化に補助を行いました。熊本地震からの復興と外国人観光客による観光消費の拡大を目的に観光関連の事業者を補助するもので、植木地区の事業者様にも活用していただきました。

 

「旅館 平山」の英語説明シート

くまもとフリーWi-Fi

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q.実際に外国からのお客さんは来られましたか

 (旅館 平山 若女将 平山愛さん)

 アドバイザーの助言を受けて、インターネットでの宿泊予約を続けていますが、一月に何組かは外国人の方にご宿泊いただけるようになりました。Booking.comはもちろんですが、楽天、じゃらんなどの日本の予約サイトから外国の方がアクセスされることもあります。またラグビーワールドカップの際、観戦者の中に植木まで訪問してくれる方がいらっしゃいました。交通の便があまりよくないところにもかかわらず、離れたバス停から大きなスーツケースを引っ張って歩いて来られたのには驚きましたね。その際に、部屋のシャワーが温まるのに時間がかかるというのをアナウンスし忘れたため、故障と思った方がおり、このような説明も英語でできるように準備する必要があったように思いました。

 

■日本人も外国人も満足できるおもてなしを

 植木温泉の方々にお話を聞くと、外国人観光客に対する抵抗がなくなっているのを感じました。それぞれの旅館ごとに宿泊できる人数も対応できる従業員数も異なり、一様に大規模な受け入れはできませんが、日本人観光客が少ない平日でも宿泊してくれるなど、外国人観光客の受け入れのメリットを感じつつあるようです。

 これからの課題として挙げていたのが、二次交通が不便な点。熊本市中心部から車で約40分、バスで来るにも不便な場所にあり、また空港から直接植木に行けるバスもないため、この点は行政の協力が不可欠です。

 「人手不足や働き方改革など、旅館も受け入れ体制に余裕があるわけではないですが、日本人も外国人も関係なく、植木に魅力を感じ、わざわざ訪れてくださっているお客様。ひとりひとりを大切にしていきたい」とおもてなしの心に溢れる植木のみなさん。ゆっくりできる温泉街という雰囲気はそのままに、地元の人から外国人まで満足できるおもてなしを目指しています。

(経済交流課 渡辺)

 

注1 プロモーションアドバイザー事業

クレアでは、自治体の海外プロモーションを支援するため、専門的知見、ノウハウ、経験をもつ専門家(プロモーションアドバイザー)を派遣する制度を実施しています。

https://economy.clair.or.jp/activity/dispatch/

 

注2 平成29年12月、30年2月 熊本市へのプロモーションアドバイザー派遣実績

https://economy.clair.or.jp/wp-content/uploads/2018/07/dispatch07.pdf

 

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