事例紹介

奈良県のアフターコロナに向けたMICE誘致活動について

 

2020年4月にオープンした「奈良県コンベンションセンター」。最大2,000名収容可能な会議場を有し、国際・国内会議を開催することができる県内最大規模のコンベンション施設です。同敷地内に県産品、県食材等県の魅力を国内外に発信する観光振興施設、日本初進出のJWマリオット・ホテル奈良、NHK新奈良放送会館が併設されています。コロナ禍でMICE[i]、特に国際・国内会議の分野においては渡航制限などにより、コロナ前のような現地開催が難しくなり、今後の会議開催の形が大きく変わろうとしています。アフターコロナに向けてどのような取り組みを行っているのか。今回は奈良県観光局MICE推進室に取材した内容をご紹介します。

 

        正倉院の校倉(あぜくら)造りをイメージした外観の奈良県コンベンションセンター

 

2020年4月 奈良県コンベンションセンターが開業!

世界遺産に囲まれる古都・奈良の中心地に、県最大の会議場・観光交流拠点「奈良県コンベンションセンター」が開業しました。

地上2階、地下2階建て、延べ床面積は約3万5000平方メートルもの広大な敷地内には、2000人程度が収容できるコンベンションホールをメインとしたコンベンション施設や、観光インフォメーション、県産品の販売、飲食施設を備えた観光振興施設が設けられています。

この施設は平城宮跡と奈良公園をつなぐ大宮通りに位置し、正倉院の校倉(あぜくら)造りをイメージした外観、内装に吉野スギや手すき和紙が使われるなど、地元奈良の素材を生かした空間が広がります。2020年12月に「ウッドデザイン賞 2020優秀賞(林野庁長官賞)」を受賞しました。

 

 

            コンベンションホール  内装に奈良県産の木材をふんだんに使用

 

●MICE誘致に力を入れ始めたきっかけ

奈良県がMICE誘致活動に力を入れ始めたきっかけとして、奈良県が抱えてきた「観光客の県内滞在期間が短く、宿泊客数が少ない」という課題を解決することが一つに挙げられます。国際会議の参加者は会議期間中、開催地に滞在するため一般の観光客に比べ滞在日数が長い傾向にあります。そして会議参加者はビジネスマンや研究者が多く、1人あたりの消費額も一般の観光客と比べ多いというデータがあります。以上のことより、奈良県へ長く滞在してもらい、県内の周遊や観光につなげるためにもMICE誘致は奈良が抱える課題解決の一つの可能性であるため、力を入れ始めました。

 

●これからの可能性

一方で、奈良県は全国有数の歴史・文化資源を有しており、現在も日本の政治・経済・文化の中心として発展した都の面影を留める遺跡や社寺等の建造物が数多く存在しています。これらの魅力と「奈良県コンベンションセンター」が整備されたことにより、奈良で国際会議を開催したいと考える主催者の需要はあると考えられます。

 

●新型コロナウイルス感染症で国際・国内会議の現地開催が困難に・・・

奈良県コンベンションセンターの開業後すぐに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、第1回緊急事態宣言が発令され、開催予定だったすべての国際会議、ほとんどの国内会議は延期・中止となりました。

また、新型コロナウイルス感染症の影響により開催される会議の多くはハイブリッド形式もしくはオンライン形式となり、この一年で会議開催の形態は大きく変わりました。オンライン形式が増えたことにより、開催地の奈良に訪問する方はやはり減ってしまいましたが、一方でコロナ収束後には現地開催をしたい、現地の会場へ参加したいという声は数多く聞かれます。コロナ収束後も、オンライン形式はある程度残ると思いますが、開催地の魅力を高めることで現地開催、現地参加率を上げることができると考えています。

 

その点、奈良には歴史的な遺跡や社寺があることや奈良が脈々と受け継いできた文化が育んだ、「奈良でしかできないこと」「奈良だからできること」をMICEの参加者に発信することが今後の奈良県のMICEをさらに盛り上げることになると考えています。

そのため、「ユニークベニューの開発」、「ガストロノミーツーリズム」など地域の魅力向上につながる取り組みも実施しています。 

 

 

●アフターコロナに向けた「奈良らしさ」を伝えるコンテンツ

①ユニークベニュー[ii]の開発

これまで、奈良では社寺や歴史的な場所がイベントや国際会議等で活用された実績はありましたが、奈良ではじめて会議を検討する主催者の方々に見ていただけるようなユニークベニューの一覧資料がありませんでした。

そこで奈良県では県内でユニークベニューとして利用できそうな施設をリストアップし、施設関係者のもとへ訪問し、会場の活用方法について相談を始めています。さらに、利用者の利便性を高めるために主催者が必要とする情報が一目でわかる資料の作成に取り組んでいます。

奈良でMICEの開催を検討する主催者のニーズに合うような、魅力的なユニークベニューを提供できるようにし、コロナ収束後には、奈良で開催される会議に参加したいと思ってもらえるように今から少しずつ準備を進めたいと考えています。

 

     奈良公園内にある「奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~」でのガーデンパーティーの様子

                              ※写真は新型コロナウイルス感染症の蔓延前

 

②ガストロノミーツーリズム[iii]の促進

奈良県では新しい観光誘客の一環として、全国に先駆け、奈良県内の各地域の食材の魅力を味わいながら観光を楽しむ「ガストロノミーツーリズム」の推進に取り組んでいて、2022年開催が予定されている国連世界観光機関(UNWTO)主催の「ガストロノミーツーリズム世界フォーラム」の奈良県への誘致を目指しています。

奈良の伝統野菜や大和肉鶏など生育方法にこだわった県産食材を使った料理により、「食」の魅力を向上させるとともに、奈良に訪れた人に楽しんでもらうことで地域の魅力を高めたいと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     奈良の食材を使用したフレンチ                  大和野菜の大和丸なす

 

●おわりに

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、MICEの開催形態が大きく変わり、コンベンションセンターの利用の多くが地元の大学・企業や関西圏の主催者が多くなっています。開業前に見込んでいた規模の国際・国内会議の開催は難しいですが、アフターコロナに向けて、施設をより使いやすくなるように関係者と調整を進め、併せて上記に述べたような「ユニークベニュー」や「ガストロノミーツーリズム」などの地域の魅力を向上させる取り組みを進めていきたいと思います。

 

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自治体国際化協会では自治体の海外プロモーション等に関するお悩みを解決するため、専門的知見、ノウハウ、経験をもつ専門家を自治体へ派遣するプロモーションアドバイザー事業を実施しています。登録されているアドバイザーは32社(名)(2021年8月現在)です。

今回取り上げたMICE分野を専門としたアドバイザーも登録されています。詳細については下記URLから御覧ください。

プロモーションアドバイザー派遣

 

(経済交流課 笹川)

[i] 「MICE」(マイス)

MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語である。

 

[ii] 「ユニークベニュー(Unique Venue:特別な場所)」

「博物館・美術館」「歴史的建造物」「神社仏閣」「城郭」「屋外空間(庭園・公園、商店街、公道等)」などで、会議・レセプションを開催することで特別感や地域特性を演出できる会場のことで、参加者の満足度の向上や開催都市の差別化を図るツールである。

 

[iii] ガストロノミーツーリズム

その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の文化に触れることを目的としたツーリズム

(出展:観光庁HP https://www.mlit.go.jp/kankocho/topics03_000085.html?print=true&css=)

 

 

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