茨城県はコロナ禍において、また、その前から継続的に納豆や醤油といった県産品の海外販路開拓に取り組まれてきています(※一部、クレア「経済活動助成事業」を活用)。本稿では、コロナ禍にあたって取り組みを行われたEC(電子商取引)サイトにおける県産品の販売やプロモーションについて、茨城県営業戦略部グローバルビジネス支援チームに取材した内容をご紹介します。
Q:どのような理由からECサイトでのプロモーションを行うことになったのでしょうか?
A:コロナ禍の影響による海外渡航制限や各国・地域における外出自粛などのため、茨城県内企業においても輸出や商談の停止、その長期化、商談機会の減少という影響を受けていました。このような状況の中で輸出を拡大していくためには、オンラインを活用した非対面形態の支援により、これまで築いてきた既存取引を維持していくとともに、新規販路開拓の機会を創出していく必要があると考えました。そのため、県としては、世界的に市場規模が拡大しているECなどを活用して県内企業の海外販路開拓に取り組むこととし、ECサイトでのプロモーションを行うことになりました。
Q:ECサイトでのプロモーションは、具体的にどのような取り組みをされていますか?
A:シンガポールに向けた取り組みとして、モグショップ、ダイショー・シンガポールといったECサイトにて茨城県産品の食料品の販売やプロモーションを行っています。現在は、醤油、納豆、干しいも、スナック菓子などの加工品や酒類といった県産品について販売を実施しています。
また、販売プロモーションとしては、県産品の特設ページ開設、ECサイト内トップページへのバナー掲載、食品関連メディアへの記事の掲載などを行っています。令和3年2月には商品紹介と即時販売を組み合わせた動画の配信(ライブコマース)も実施しました。
米国に向けては、世界最大手のECサイト構築用プラットフォーム「Shopify(ショピファイ)」を活用し、県独自のECサイトを立ち上げました。同サイトはアマゾンとも連携させて、県内企業が製造する日用品や雑貨を販売しています。ECサイトの商品ページには、英語による動画を作成して掲載するなど、商品の良さを分かりやすく伝えるための工夫を行っています。グーグル検索ページにおける広告の掲載、フェイスブックやインスタグラムにおける投稿形式の広告掲載を行い、少しでも多くの方の目に触れることを意識しました。
Q:手ごたえや反応はどのようなものでしたか?
A:食品を販売したシンガポールでは、販売する商品を現地バイヤーが選定したということもあり、いずれの商品も一定の需要があるということを感じ取ることができました。その中でも、茨城県の特産品である干しいもやしらすなどの売行きが好調で、販促期間中に現地バイヤーからの追加オーダーがあるほどでした。県産品特設ページ、トップページバナーなどのECサイト内におけるプロモーション、SNSやメディア発信などのECサイト外におけるプロモーションを両面で実施したことが功を奏したのではないかと感じています。
日用品や雑貨を販売した米国では、比較的低い価格帯の商品が売れる傾向にありました。特に、食品から作った肌に優しいスポンジが人気であり、低価格で特徴のある商品は、米国での知名度がなくても購買につながると実感しました。しかしながら、販売期間が令和2年12月から令和3年3月までと短かったこともあり、100ドルを超えるような商品については、熱心に魅力を伝えてもなかなか購買につながらず、ECサイト活用の難しさも感じました。
Q:他に、コロナ禍において取り組まれた事業はありますか?
A:茨城県産の農畜産物、加工食品、酒類などの更なる販路開拓を図ることを目的として、令和2年度にはグローバル商談会を実施しました。
独立行政法人日本貿易振興機構の茨城貿易情報センターと連携し、海外バイヤーとのオンライン商談会を開催しました。また、オンライン商談のノウハウや商品の魅力を伝えるためのPR資料制作について学ぶことができるセミナーを実施するとともに、商品の効果的なPRにつなげるデジタルコンテンツの制作支援も実施しました。
Q:これまでは、どのような事業を通じて海外販路開拓に取り組まれてきたのですか?
A:令和元年度にはいばらきグローバルビジネス推進協議会の立ち上げやシンガポール、ベトナム、アメリカ、香港に向けてバイヤーなどの需要開拓などを行ってきました。
■いばらきグローバルビジネス推進協議会とは
海外向け営業活動(県産品の海外販売促進)について、農産物・加工品・工業製品などの各分野を横断的に支援する体制や取り組み強化を図るため、従前の分野別の協議会を統合したものです。(令和3年3月現在で会員企業は約280社・団体)。
協議会では、海外でのビジネスにチャレンジする中小企業・農業者などの支援を通じて、海外進出及び輸出を促進し、経済のグローバル化に対応した本県産業の振興を図ることを目的として各種事業を実施しています。
Q:この協議会を立ち上げたことで、どのようなメリットを感じていますか?
A:人口が減少する中、海外展開はますます重要になってきています。このような状況において、従前の分野別の協議会が一体的に活動することで今まで以上の成果を出すことができていると感じています。令和元年度には、茨城県内企業の海外展開を促すため、県内における先進的な取り組みを紹介する「成功事例集」を作成しました。酒蔵や水産加工会社など県内企業8社の企業について、海外展開を目指したきっかけ、課題、展望、目標などのほか、これから海外展開に取り組む企業に向けたアドバイスも掲載しています。そのほか、いばらきグローバルビジネス推進協議会においては、協議会会員の商品などを掲載するホームページ「IBARAKI EXPORTS」の運営、海外バイヤーとの商談会、オンラインを活用した商談支援など実施しています。
※IBARAKI EXPORTS https://exports.pref.ibaraki.jp/home
■現地バイヤー等需要開拓について
平成29年度からベトナム、平成30年度からは加えてシンガポールにも専門スタッフを配置し、現地バイヤー、小売店、レストランなどに支援対象商品約30 品(酒類、水産加工品、農産加工品など)の売込みを実施しています。
また、支援対象商品のサンプル輸出に当たっては、政府登録手続や輸送、保管などを支援しています。
令和元年度までは現地におけるプロモーションとして、海外展示会(Food Japan(シンガポール)、Food Expo(ベトナム))に出展し、茨城県内企業も現地に渡航した上で事前マッチングによる現地バイヤーなどとの商談会を実施しました。
令和2年度はコロナ禍により、海外展示会の中止や延期が相次ぎ、海外渡航も困難であることから、オンライン商談を取り入れて販路開拓に取り組んでいます。
Q:コロナ禍以前には現地での参加が可能だったのですね。オンラインでの開催とはまた違った成果があったのかと思いますが、どのような成果がありましたか?
A:Food Japan(シンガポール)やFood Expo(ベトナム)において茨城県ブースを設置し、県内企業が日本酒、日本茶、水産加工品、農産加工品などのPRを行ったほか、商品に興味を持っていただいた現地バイヤーと多くの商談を行うことができました。来場者の方には実際に試食・試飲も行っていただき、シンガポールやベトナムのほか、近隣諸国の方に対して県産品の品質の良さを感じていただくことができました。
Q:今後は海外販路開拓について、どのような取り組みをしていきたいと考えていますか?
A: 茨城県では令和2年4月にいばらき中小企業グローバル推進機構を設立し、県内企業の海外展開などを支援しています。今後もいばらき中小企業グローバル推進機構や日本貿易振興機構などの関係機関と連携しながら、オンラインと対面での営業を組み合わせ、県産品の海外販路開拓に注力していきたいと思います。また、ECサイトのプロモーションやオンライン商談会などに参加した県内企業がコロナ収束後には海外での展示商談会に参加するなど、各社のステップアップも期待しています。
~経済活動助成金事業をぜひご活用ください!~
クレアでは、地方自治体が企画をするなど、事業に直接関与しており、将来的に経済効果や他の地方公共団体の取り組みの参考となることが見込まれる、海外販路開拓事業または海外観光客誘致(インバウンド)事業について助成を行う事業を行っております。
本記事で御紹介しました「グローバル商談会」や「現地バイヤー等需要開拓」についても本事業での助成を行いました。
本事業にご興味がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
https://economy.clair.or.jp/activity/grant/
(現シンガポール事務所 所長補佐 大澤(元経済交流課 主事))