事例紹介

金沢の伝統ある酒蔵が海外からのお客様をおもてなし!

 1625年創業の金沢でもっとも長い歴史を持つ酒蔵、福光屋。良質な米と水だけで醸す純米酒をより身近に感じてほしい、との思いで日本文化としての日本酒を国内外に発信する取組みも行っています。北陸新幹線の開通をきっかけに本格的に開始されたという、日・英のバイリンガル対応で毎日開催している酒蔵の見学ツアーもその一つで、桜や紅葉の時期には参加者の半分近くが海外からのお客様で埋まるといいます。

 今回はそんな福光屋で案内人として働く平木さんに取材しました。

 

福光屋の直下150メートルの地中から湧き出す「恵みの百年水」

 


■具体的にはどのようなツアーを行っているのでしょうか。

 酒蔵の中で日本酒を造っている10月から翌年4月は、実際の酒造工程を間近に見学できる「蔵内コース」(90分:1,000円)と、福光屋の人気銘柄を飲み比べできる「スタンダードテイスティングコース」(30分:無料)を開催しています。
 酒蔵の中に入ることができない時期は、「スタンダードテイスティングコース」に加えて、より深く利き酒を楽しんでいただける「プレミアムテイスティングコース」(50分:2,000円)を設けています。これらのコースは毎日、午前11時と午後3時に日英仏3言語でツアーを開催しています(定員10人)。また、定期開催以外に団体コースにも対応します。一番人気なのは蔵内コースですが、海外のお客様は、これを目指して来られているわけではないので、自分の旅程の中で合う時間帯のコースに参加いただいている印象です。
 日本酒の造り方を分かりやすく解説するビデオも音声、字幕において広東語(香港)やフランス語含む計5か国語で用意しており、参加者の方からの疑問には案内人が随時英語で対応します。

 

開催コース一覧(公式ウェブサイトより)

 

■ツアーを始めたきっかけを教えてください。

 海外からのお客様も増え、今後もっと増えるだろう、との見込みで、新幹線の開通をきっかけに本格的に始めました。 それまでも、お取引業者さんや酒販店さん、曜日限定で一般のお客様を、蔵の中をご案内することはありましたし、海外からのお客様の場合は、海外市場室の英語を話せるスタッフが対応していたのですが、2016年の3月にバイリンガルの専任ツアー案内人として私が雇用されて、その時期から、今のような形でツアーを実施するようになりました。

 

■海外からのお客様の割合はどれくらいですか?

 昨年実績では全コースあわせて(団体コースは除く)年間約3,600人の方に見学いただきましたが、そのうち約3割は海外からのお客様です。桜や紅葉の時期は半分近くにもなります。日本酒を深くは知らないが、名前は知っている・飲んだことがある、という方が多く、国別では北米、豪、アジア圏ではシンガポールや香港などの個人旅行の方に参加いただいています。

 

■お客様の反応はいかがですか。

 満足度は高く、「日本酒には純米と純米ではないお酒がありますよ」、「大吟醸って精米歩合が違いますよ」という説明をすると、「あ、なるほどね。」と反応があります。 また、アメリカ・カナダ・オーストラリアの方だと思いますが、常温や冷でお出しすると、けっこう驚かれますね。自国ではお燗で出されるお酒ばっかりとのことで、どんなお酒が燗にして、どんなお酒が燗じゃないのか、とよく質問されます。

 

日本酒以外にもコスメも販売、商品説明することで購買につながることもあるそうだ。

 

 ラベルの数字にも興味を持っていただけます。日本語が読めなくても、40という数字の前後なら精米歩合、15前後ならアルコール度数、また、日本酒度の数字を見ると甘口か辛口か目安になる、などと説明すると、「あー!じゃあ、今度からこの数字も見るわ!」と言っていただけます。

 

 

取材時が9月だったため、今回はプレミアムテイスティングコースを体験。

 

 

■どのようにツアーを知って来られる方が多いですか?

NYからのツアー参加者。日本酒はもともと好きで、Wall Street Jouralの記事を読んで訪れたそう。初来日で他に東京・京都・大阪・直島・馬篭・高山を訪れたとのこと。

 インターネット経由か宿泊施設からの代理予約がほとんどです。また、海外メディアに掲載された記事からも比較的反応があります。基本的に私どもはお金を出しての広告はしない方針ですが、先方から取材の申込みがあれば積極的に受けています。アメリカの新聞Wall Street Journalや、訪日外国人向けウェブサイトMATCHAに記事が掲載されました。ご予約は最終的にはメールでいただくので、最初の段階で何をご覧になっているかを追うのは難しいのですが、アンケートの回答で多いのは、Google検索とTrip Adviserですね。 新幹線の開通の頃(3年前ころ)からインターネット上で英語での広報に力を入れ始めましたが、効果は出ていると感じます。Trip Adviserではオーナー登録をして写真掲載、口コミへの返事ができるようにしましたし、弊社の公式ウェブサイトには、2年前までPDFで掲載していた英語パンフレットの情報をテキストで掲載するようにしました。それによって海外のお客様からの問い合わせ数が大きく増え、英語での検索にもヒットしやすくなったというのは目に見えて分かります。その他、Facebookの英語ページでの発信もしています。

 

 

■宿泊施設等から案内されてくるお客さんも多いですか?

 予約は3日前までとしていますが、宿泊施設からは、「今日明日空いていますか?」という直前の問い合わせが多いです。また、駅のボランティアガイド、通訳ガイド、ホームステイの受入れ家族などからの問い合わせもあります。 1年目は金沢駅前のシティホテルを中心にチラシを置いていただきましたが、県庁の国際課長さんから「シティホテルでの滞在日数は1~2泊が多いので、酒蔵見学まで踏み込めないかもしれない。」とアドバイスをいただいて、3年目の今年の夏は長期滞在型のゲストハウスやユースホステルにも配らせていただき何件か送客はありました。 あとは、旅館の晩御飯で福光屋の日本酒を飲んだというお客様が、酒蔵が近いとお聞きになって、翌日寄っていただいた、ということもあります。 福光屋では毎日何らかのコースを開催し、英語対応もしているので、紹介してもらいやすいと思います。継続は力なり、じゃないですが、やっと3年目になって「とりあえず、福光屋なら何かやってるぞ」という感覚が地域のみなさんの意識に定着した、という感覚はあります。 また、金沢市観光協会さん等のツアーコースの中にも組み入れていただいております。

 

■今後の課題や抱負は何ですか。

 駐車場が狭く大型バスが入らないなど、ハード面での受入態勢整備と、バイリンガルスタッフの雇用が課題ですね。パンフレットも公式ウェブサイトも日英だけですし、ツアーでは英語か仏語を理解していただけるお客様しか基本的には受け入れられていないという現状はありますね。石川県に一番多く来られているのは台湾の方と聞いていますが、福光屋には台湾の方がほとんど来られていません。バスでの団体旅行が多いようですが、金沢では主要なところだけ見て高山や小松に移動してしまうとか。少しずつニーズに合わせて行けたらなと考えています。

 

案内人の平木さん。英語はカナダでのワーキングホリデーで身に着けたという。

 我々の一番の目的は、これらの取組みが草の根的に実を結び、日本酒文化の啓発に貢献することです。また、それに付随して東京の直営店やNYで開催するイベントでの相互送客などもあり、多くの方にファンになっていただき、永く福光屋をご愛顧いただけたらと思っています。

 

【SAKE SHOP 福光屋 金沢店】

住所:〒920-8638 石川県金沢市石引二丁目8番3号  

TEL:076-223-1117 (営業時間 10:00~19:00)

URL:蔵元見学のご案内 https://www.fukumitsuya.co.jp/guidedtour/

 

【金沢市の国際交流員(CIR)による取材記事】

http://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/feature/report/latest/2017_04.html

(経済交流課 高山)

 

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