事例紹介

JETプログラム卒業生がホテル業界で大活躍!

 大阪を拠点にホテルを展開する(株)ロイヤルホテルでは、外国人観光客への対応力向上のため、2016年からJETプログラム卒業生の採用を始め、3年間で外国語指導助手(ALT)出身の方をグループ全体で計8名採用している。教師の経験を活かし、接客、災害時対応、社内の英語教育と活躍の場も幅広く、お客様からはもちろんスタッフからの評価も非常に高いという。

 今回は、人事チーム支配人の針辻さん、ゲストリレーションズとして働くJETプログラム卒業生のレイチェル・ビュールさん(5年間、福島県天栄村でALTとして従事)に、採用背景やホテルでの仕事内容について伺いました。

 

JETプログラム卒業生のレイチェル・ビュールさん(左、国籍:カナダ)、アリス・ナカムラさん(右、国籍:カナダ)。共に流暢な日本語を話す。

■JETプログラム卒業生を採用された背景について教えて頂けますか?

 (針辻さん)ホテル業界はもともとインターナショナルなイメージがあるかと思いますが、急速にグローバル化が進みインバウンドのお客様が増えている中で、語学面および異文化の理解という点に対し、ホテルとして更に対応力を強化したいという想いがありました。

まずは従業員に英語を教える外国人講師を採用し講座を開いたほか、韓国での就活フェアにも参加しました。しかし、単純に語学のできるスタッフを増やせばよいという訳ではなく、他のスタッフと同様にお客様目線で柔軟なサービスを提供できるスタッフが必要でした。そういった外国人に巡り合えるチャネルもなく模索しているときに出会ったのがJETプログラムのキャリアフェアでした。

ホテル業界に興味を持ってもらえるのか少々不安を抱えながら参加したものの、蓋を開けてみると、非常に優秀で、意欲もあり、日本に思い入れのある多くの外国人の方に巡り合うことができました。

 

■採用される際に日本語能力はどのように確認されるのですか?要求水準などはありますか?

 (針辻さん)ゲストリレーションズのポジション(※業務内容については後述)で働くには、外国の方への対応だけでなく日本の方への対応も必須です。また、ホテルということで接遇や言葉遣いは非常に高いレベルが求められます。そのため、日本語能力検定などの試験を課してはいませんが、日本語レベルが達していないと入社された後に本人が苦労するので、面接時にお客様対応が可能か、他のスタッフとうまくやっていけるか、という視点で確認しています。

 

リーガロイヤルホテル(大阪)の外観。求められる接客レベルは非常に高い。JETプログラム卒業生は大阪に3人、京都・広島に各2人、東京に1人従事している。(写真はリーガロイヤルホテル公式HPより)

■どのようなお仕事をされているのですか?

 (針辻さん)ゲストリレーションズとしてお客様対応全般を任せています。ゲストリレーションズは何かに限定することなく、何でもこなさなければならないポジションであるため、館内の案内から観光情報、交通機関の情報まで、お客様からの多岐にわたる質問に対応してもらっています。

 また、ALTとして教えてきたスキルを活かして、英語教育専任のスタッフと連携をとり、社内の英語教育にも携わってもらっています。そのほか、他部署からの依頼にも積極的に協力するようにしており、中にはブライダル担当部署からの要請で米国人同士の結婚式のお手伝いをしたこともあります。

 来年にはG20サミットが大阪で開催される予定であり、APECなど過去の数々の大型国際会議受入で蓄積したノウハウに、彼らの力が加わることを楽しみにしております。

 

コンシェルジュとして、お客様のニーズに合わせた、地域情報の紹介からトラブル時の対応まで、幅広い要望に対応している。

■お客様からの反応はどうですか?

 (針辻さん)評判は非常によいです。ALTとして幅広い年齢層の日本人と接することにより築かれた日本語での対応力や柔軟性を活かし、ホスピタリティあふれた対応をしてくれています。観光情報やお買い物情報についても、彼らが自ら現地に赴き実際に見た情報を中心に、外国人目線で紹介してくれています。

 活躍の場は普段のお客様対応だけではありません。先ほど申し上げた米国人同士のブライダルのサポートも一つです。結婚式はお客様の人生にとっての一大イベントであり、詳細な部分までお客様の意向を聞いたうえで調整する必要があります。英語ができる日本人スタッフもおりますが、微妙なニュアンスも大切になるため、ビュールも加わり、英語での打合せを何か月もかけて行ったと聞いています。その結果、非常によい挙式になり、お客様に大変喜ばれました。

 また、今年は特に関西地方で災害が発生していますが、災害時にも活躍してくれています。日本人は慣れている台風や地震でも、外国人のお客様には不慣れな方も多く、リアルタイムに正確な情報を必要としていらっしゃいます。そこで館内アナウンスを担当したのがJETプログラム卒業生です。エレベータ等の館内情報や公共交通機関の運休情報など、必要な情報を迅速に、随時アナウンスしてくれました。そのおかげで外国人のお客様の不安を軽減することができ、本当に助かりました。

 このように、彼らの活躍ぶりはお客様からだけでなく、周りのスタッフからも高く評価されています。

 

■ほかにもJETプログラム卒業生を採用してよかったことなどありますか?

 (針辻さん)外国人スタッフと働くことが日本人スタッフに非常によい刺激になっています。「異文化理解」と口では言っていても、実際にはなかなか伝わりにくいところですが、身近に接することで意識の変化を感じております。最近は社内向けのニュースレターを毎月作成し、外国人ならではの視点で、日本人では気づきにくいトピックを紹介してくれています。

 

■ビュールさんがロイヤルホテルで働こうと思ったきっかけは何ですか?

 (ビュールさん)JETプログラムに参加する前に、母国のデパートで接客のアルバイトをしていた経験もあり、接客はもともと好きでした。「JETプログラムの後も日本に残りたい」、「接客業をもう一度やりたい」という思いで参加したキャリアフェアでロイヤルホテルに出会ったのがきっかけです。

 

■どのようなことにやりがいを感じますか。また、苦労することはありますか?

 (ビュールさん)デパートでアルバイトをしていた時にも感じておりましたが、やはりお客様に喜んで頂けた時にやりがいを感じます。ホテルでは「パスポートをなくした」、「病院に行きたい」など本当にお困りの方を接遇する機会もあり、そのような方々のお役に立てたときは非常に大きな達成感があります。

言葉が通じない方の病状を把握するために、JET卒業生の発案で作成されたポインティングディクショナリー

 お客様から全く見当のつかないことをご質問頂くこともありますが、「分かりません」で済まさず、あらゆる手段を使い、調べて責任をもってお答えするようにしています。例えば、具合の悪いお客様に自分たちで作成したポインティングディクショナリーや辞書等を使いながら病状を把握し、薬局をご案内したり病院へ付き添ったりします。

 また、外国人の方はとりあえず私のところに聞きに来られることが多いのですが、一口に外国人といってもさまざまな国や宗教がありますので、分からないことが多々あります。英語が喋れない相手に対し、どうしてもジェスチャーに頼りがちになるのですが、相手の国ではタブーのジェスチャーをしてしまったこともあります。でも、その失敗をきっかけにいろいろと調べ、ジェスチャーの違いに関する理解を深めることができました。

 

■今後取り組みたいことはありますか?

 (ビュールさん)日本のホテルは非常に高いレベルの接客を求められるので、言葉遣いなどの接客スキルを磨くと同時に、お客様からの多様なご要望にお応えできるよう、知識の幅と深みの両方を身に着けるべく、日ごろから情報収集し努力していきたいです。

 

JETプログラム:http://jetprogramme.org/ja/

JETプログラムキャリアフェア:http://jetprogramme.org/ja/careerfair/

(経済交流課 今村)

 

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