制服姿で外国人旅行者を案内する観光ボランティアが新宿や上野の街中に登場した。行き交う外国人旅行者に積極的に声をかけながら東京の観光案内や道案内を行っている。これは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えた新しい取り組みとしてスタートした。
新宿駅西口で外国人に説明する制服姿のボランティアガイド
ポイント:
・街角に観光案内ボランティアを配置して外国人旅行者の困りごと解決
・継続的な活動を通じてステップアップ
2015年の6月19日に都庁で行われたボランティアガイドたちの出発式。舛添要一知事は約40人を送り出した。
「おもてなし東京」という名称で、お揃いの制服を着用している。
デザインしたのはコンペを勝ち抜いた藤江珠希さん。英国のブランドで修業し、現在は自身のブランドを手がけている。
人混みでもパッと目に付くことに重きを置いた。ネクタイとベストはおもてなしと礼儀正しさを表現したものだ。
街中ボランティアという新しい案内を始めることに伴い、愛称と制服が作成された。
ボランティアガイドの設立は、2002年のFIFAワールドカップサッカー日韓大会にさかのぼる。
これまでは、3種類の活動が主体であった。
1つ目は、都庁の案内だ。展望室の案内ガイドは人気のコースになっている。
2つ目は、都内の観光ガイドサービスだ。10のコースがある。事前申し込み制で都庁を出発する。例えば、浅草、庭園見学、新宿のデパ地下見学、お台場など、多彩なコースがある。
3つ目は、派遣ボランティアだ。国際会議や大きなイベントにサポートメンバーとして招集がかかる。東京マラソンなどは、海外からのエントリーもあるので、活躍の場が多い。
そして、2015年から新しく4つ目の「街中ボランティア」が追加された。
外国人旅行者が多いエリアの街中で活動することとされており、現在は、新宿、上野の2地域で実施されている。
訪日外客数の急激な伸びのなかで、街中で困っている外国人が増え、東京都としても何か対策を講じる必要性があった。
東京都は2014年12月に街中ボランティアガイドの方針を打ち出した。現在、活動は金曜、土曜、日曜の週末で、時間は11時から17時。やはり週末に観光客が多いからだ。
2人1組で、制服姿で街頭に立ってもらい、声をかけていく。英語のボランティアガイドが多いが、その他の言語で対応できるボランティアもいる。
新宿では、西口地下街のロータリー付近、京王百貨店の前で活動をする。上野では公園口の文化会館前、不忍口のあたりだ。ボランティアガイドは決められた場所のみで対応をして、同行して案内することはしない。
多くの質問は、目的地までのアクセス方法だった。タブレットを持って案内することで、より具体的だと喜ば
れている。多言語の翻訳アプリも内蔵して、専門外の言葉でもある程度カバーできる。
ボランティアガイドは必ず日報を書き、問いあわせ内容を共有する取り組みをしている。
やりがいを感じていて、意欲も高い。
外国人に対してのホスピタリティが高いのだ。海外駐在経験がある方が、英語などのスキル維持のために活動するケースもある。
現在、1,300人以上の方が登録されているが、東京都としては、その数を2020年までに3,000人までに増やすという構想がある。英語以外の言語も増やし、若い方、特に学生にも参加してもらいたいと東京都の担当者。
毎年、10月の初旬にボランティアガイドの募集をかけている。
街なか観光案内や観光ガイドサービス、派遣ボランティアなど、どういった活動を希望するかは、あらかじめボランティアに選んでもらう。
さらに、レベルアップを図るため、都ではいろいろな研修を実施している。外部講師を招き、外国人と接するうえで役立ちそうなポイントを伝授。ボランティアにとっても無料で受講できるメリットがある。最近では、ムスリム旅行者の対応についての研修を行った。
2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、2015年に東京都は、企業や学校、NPOなどの民間団体でつくる「ボランティア活動推進協議会」を設置した。年1、2回の会合を開き、ボランティアの育成や参加しやすい環境づくりを目指すという。
また、「おもてなし東京」以外に、約1万人の「東京マラソンボランティア」があり、声かけや道案内など日常生活の手助けを行う約400人の「外国人おもてなし語学ボランティア」もある。5年後のオリンピック・パラリンピックまでに、大会組織委員会と都がそれぞれ募集する計約10万人のボランティアを育成したい考えだ。
東京オリンピック・パラリンピック開催が契機となり、ボランティア活動がさらに活発化していきそうだ。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/