事例紹介

広島の宮島とフランスのモン・サン=ミッシェルが相互プロモーション!

厳島神社のある宮島は、フランス人に人気の観光スポットだ。
広島県を訪れる外国人観光客にとって、圧倒的に原爆ドームや原爆資料館の人気が高いが、フランス人は、厳島神社を強く支持している。実は日仏交流事業がきっかけで、フランスのモン・サン=ミッシェルと相互プロモーションをしている。

エリック・ヴァニエ市長と眞野勝弘市長が宮島で握手写真

エリック・ヴァニエ市長と眞野勝弘市長が宮島で握手

ポイント

・日仏交流150周年事業をきっかけに、厳島神社を訪れるフランス人が増加
・共通点を足掛かりにした息の長い相互プロモーションに育てる


広島県の「安芸の宮島」を訪れるフランス人の数が増えている。
宮島がある廿日市市の国別入り込み客数では、フランス人がここ数年トップだ。(※広島県の観光統計による)
2014年の国・地域別では、1位がフランスで22,902人、2位はアメリカ合衆国で21,040人だった。半数が欧米人という人気ぶりで、日本全体の訪日外客数の比率とは大きく異なるのだ。

好調の要因の一つは、2007年版ミシュラングリーンガイドで3つ星評価が一番大きいと廿日市市の観光担当者。躍進のきっかけになった。
そしてさらに一つ。それは、宮島とフランスのモン・サン=ミッシェルが相互プロモーションの協定を2009年に結んだことだ。

それを裏付けるデータがある。

広島県を代表する国際観光スポットとしては、やはり原爆ドーム、原爆資料館で、いずれも広島市にある。外国人の入り込み客数は、県内では圧倒的に広島市が多い。2014年の統計では、アメリカが134,900人で最も多く、2位はオーストラリアが89,200人と続き、フランスは5位で32,700人だ。
一方、さらに宮島がある廿日市市を訪れた人数は、国・地域別で比較すると、広島市を訪れた人の半数、なかには10%程度しか宮島に立ち寄らない。
ところが、フランスは事情が違う。2014年こそ入り込み客数はほぼ同数だったが、2012年、2013年にいたっては、廿日市の方が多いという結果であった。

2009年に提携を結んで以降、このようなデータになったことは、相互プロモーションが成功していると言えるだろう。

ところで、宮島とモン・サン=ミッシェルとの相互プロモーションは、なぜ、実現できたのだろうか。

この二つのエリアは、共通点が多いのが理由だった。

モン・サン=ミッシェルと宮島は、海に浮かぶ世界遺産であること、信仰の聖地として1,000年以上の歴史があること、そして、それぞれの国を代表する観光地であることがあげられる。

モン・サン=ミッシェルとは海岸線から1キロほど沖に突き出た岩山で、フランスでもっとも有名な巡礼地だ。干満の差の激しい湾にあり、時によって海に浮かび、時によって干潟にたたずむ。
堤防からラヴァンセ門をくぐり、修道院までの参道が魅力だ。みやげ物店、名物のオムレツを提供するレストラン、ホテルなどが軒をつらねる。

フランスを代表する世界遺産のモン・サン=ミッシェル

フランスを代表する世界遺産のモン・サン=ミッシェル

一方、宮島は、日本三景の一つ。厳島神社の朱塗りの社殿は、潮が満ちてくるとあたかも海に浮かんでいるようだ。海を敷地とした大胆で独創的な配置構成になっている。平安時代の寝殿造りの粋を極めた建築美だ。

この二つの聖地が結ばれる縁があった。

2008年のこと、当時は、日本とフランスの国交が開始されてから150周年を迎え、「日仏観光交流年」と位置づけられた。その記念すべき年に、さまざまな観光キャンペーンが展開された。
そのPRのためにフランス政府観光局(現「フランス観光開発機構」)と日本政府観光局(JNTO)がポスターを共同で作成し、そこには、フランスの世界遺産モン・サン=ミッシェルとともに厳島神社の大鳥居が起用された。

国交150周年のフランスと日本の共同ポスター

国交150周年のフランスと日本の共同ポスター

2008年10月、パリで国土交通省主催の観光交流セミナーがあり、廿日市市と宮島の観光事業者が参加し、観光宣伝を行った。その際、モン・サン=ミッシェルのエリック・ヴァニエ市長からの招待状が届いたことから、現地を表敬訪問。その席で、観光友好都市提携の申し出があったのだ。

そして翌年、2009年5月16日にエリック・ヴァニエ市長を迎え、厳島神社において「廿日市市・モン・サン=ミッシェル 観光友好都市提携調印式典」を行った。

観光友好都市提携の調印をする両市長

観光友好都市提携の調印をする両市長

現在、廿日市市では、宮島桟橋の旅客ターミナル内に、宮島とともにモン・サン=ミッシェルを紹介するコーナーを設置している。
さらに、「相互交流が継続しているのが大きい。」と市の担当者。

2010年10月にはモン・サン=ミッシェル観光友好都市1周年記念事業として、宮島の桟橋前広場を中心にモン・サン=ミッシェルを紹介する映像投影やオープンカフェ、パフォーマンスなどを行った。

2012年10月には、廿日市市からモン・サン=ミッシェルを表敬訪問し、絵画を贈呈した。宮島の厳島神社とモン・サン=ミッシェルを1枚に描いたものだ。市内の画家が制作した。この絵はポストカードになり、モン・サン=ミッシェルで販売されている。また宮島大工によるロクロ細工、宮島彫りによるお盆なども、現地の展示コーナーに置かれた。

2013年には、5周年事業として、廿日市市内でフランスのシターという楽器を使った演奏会をした。

このように、継続的に交流を続けることで、国際観光都市としての市民の意識付けになったのではないかと市の担当者はみている。
今後も相互プロモーションを続け、フランスからの観光客を取り込みたいと意気込む。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 中国・四国

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