事例紹介

「バルーンのまち」佐賀市、海外向けに動画配信プロモーション!

佐賀市では40年近く前からバルーンの国際大会が開催されている。近年増加している外国人観光客へPRするため、2017年9月にインバウンド向けの映像をつくり、YouTubeでのアクセス数を伸ばしている。バルーンが舞い上がる雄大なイメージから映像がスタートし、素朴な日本的な風景とのコントラストが美しい。佐賀市のインバウンドについて、関係者に現状を聞いた。

佐賀の大空を色とりどりのバルーンが美しく飛ぶ

佐賀の大空を色とりどりのバルーンが美しく飛ぶ

■ポイント

・アジア最大級の大会を開催するバルーン(熱気球)のメッカ
・インバウンド向けの動画が再生回数1,000万回を突破


■気球のイベントが佐賀の代名詞に!

佐賀市では毎年10月末から11月初旬の5日間、「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」というアジア最大級のバルーン大会を開催している。今では、佐賀市は「熱気球の街」としても知られるようになった。会場には大空を彩る100機を越えるバルーンと、その雄大な空を見上げる80万人もの観客が集う。バルーンフェスタ期間中にはJR九州が会場近くに臨時駅を設け、来場者の利便性を図っている。会場内には屋台も多数出店して、佐賀のグルメを堪能できる。
佐賀市の観光振興課によると、これまで海外から気球関係者の参加は多数いたが、近年は外国人観光客も増えてきていると言う。

このバルーンフェスタは2017年で38回目となる歴史ある大会だ。バルーンフェスタに併せて世界大会が開催されたことも過去に3度あり、前回の2016年の開催では、前半の3日間が例年の「ホンダグランプリ競技飛行」があり、後半の7日間で「世界大会」が開催された。場所は同じで、両方エントリーする参加者もいた。世界大会は、2年に1度各国の持ち回りで開催され、佐賀市では1989年、1997年、2016年に行われた。世界大会と合わせて開催される年は、通常のバルーンフェスタよりも規模や開催期間も長い。約180機が集まり、10日間で技術の優劣を競うのだ。これまでは主に欧米で開催されており、アジアでの開催は日本だけとなっている。

■バルーン競技に適した佐賀は世界も注目!

バルーンの上空からも見える干潟が広がる

バルーンの上空からも見える干潟が広がる

なぜ、佐賀は気球関係者からの評価が高いのか。それは、広い平野をはじめとした恵まれた自然環境に理由がある。
一般的に、気球の内側の空気を熱し、外部との温度差によって浮力を発生させて飛行するバルーンにとって、11月の佐賀は適度な気温であり、かつ稲刈りが終わった時期なので、バルーンが着陸できる場所が多いのも大きな利点となっている。大会の歴史を重ねる中で、農家の方々など住民の理解を得られていることも大きい。
さらに南には有明海、北は福岡との境に小高い山々があり、上空では時間や高度によって異なる複雑な風が吹くという。そのためバルーンを目的地に向けて正確に飛ばすために、操縦技術が問われ、優劣がはっきりと分かるということで、まさに競技会向きの環境となっている。

海外の出場者たちも佐賀平野の風景を気に入っているそうだ。それは、田園風景と遠くの山々、そして穏やかな有明海の風景を一望できて、佐賀でしか体験できない景色が広がっているからだ。

■佐賀の素朴な日本的景観が台湾人の心をつかむ?

とはいえ、バルーンフェスタは佐賀市の魅力的なコンテンツではあるものの、開催期間は年間で数日間しかない。そこで、佐賀市は年間を通して外から観光客を誘致するために、2016年の10月に「佐賀バルーンミュージアム」をオープンさせた。
‘天気に左右されず’‘いつでも’バルーンを体感できる日本初のミュージアムだ。「バルーンはどうやって飛ぶの?」「バルーン競技は何を競っているの?」そんな、今まで知らなかった「発見」が待っている。パイロットの体験ができるシミュレーターもあり、バルーンを身近に感じられる。
台湾など海外からもツアー客が訪れているが、外国人観光客にバルーンの魅力を分かりやすく伝えるためには、多言語対応の面などで改善していくべき課題もあると市の担当者は言う。

バルーンミュージアムには実物大のバルーンが出迎える

バルーンミュージアムには実物大のバルーンが出迎える

そのような課題にも向き合いつつ、佐賀市は現在、台湾へのプロモーションに力を入れている。
それは、九州のインバウンドは全体的には韓国からの観光客が多い傾向にあるのだが、佐賀市においては、九州佐賀国際空港にLCCが就航している韓国と中国に並んで台湾からの観光客が多いのが特徴で、これをより強化しようと考えているからだ。
佐賀市内の宿泊施設の統計によると、外国人観光客の宿泊数はここ5年で飛躍的に増えていて、年間2千人泊から7万人泊へと大きく伸ばしている。国・地域別では台湾・韓国・中国が占める割合が多い。なお、これまでは台湾観光客のほとんどは福岡から流れてきているが、2016年6月から九州佐賀国際空港に台湾からのプログラムチャーター便が就航するなど、今後も台湾からの観光客は増加すると佐賀市ではみている。
佐賀には素朴でのどかな日本らしい景色が多く、日本茶体験、農家民泊など都会ではできない体験が可能だ。それが台湾人好みなのではないか、と市の観光振興課は人気の理由を推測している。

台湾人のスタッフも佐賀市の宣伝に一役買っている。かつて台湾で開催されたバルーンのイベントに、佐賀市からの出場者の通訳としてアテンドした台湾人青年がいた。それが縁となりワーキングホリデービザを取得して、佐賀市観光協会で2015年から1年間働き、市内を取材して交流サイトのフェイスブックで台湾向けに佐賀の情報を紹介したのだ。現在、彼はワーキングホリデー終了により帰国したが、台湾向けの情報発信は新たに採用された2代目の台湾人スタッフに引き継がれている。」

外国人旅行者にも人気の茶室を復元した陽林亭

外国人旅行者にも人気の茶室を復元した陽林亭

■オンラインでのプロモーションを今後のマーケティングに活用!

佐賀市は、2017年の9月に観光地をPRする動画を初めて制作し、YouTube(ユーチューブ)で公開を始めた。これは公開から約3か月で再生回数1,000万回を突破している。バルーンの映像が最初に流れ、市内の自然や歴史、食などの魅力を盛り込んでおり、「バルーンの街佐賀市」というアピールポイントを軸にPRを展開している。

これまで市では、海外での旅行博や商談会でPRを行ってきたが、これだけではPRの効果がつかみづらいという課題があり、市は観光プロモーションにオンライン媒体をもっと活用する方針にしたためだ。
今後はアクセス解析等を行い、マーケティングに活用していきたいと考えている。

さらなるインバウンド観光の飛躍に向けた挑戦が始まっている。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 九州・沖縄

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