事例紹介

新潟県小千谷市に、錦鯉を目的に外国人がやってくる!?

新潟県小千谷市は錦鯉のゆかりの地として、外国人に注目されている。というのも、錦鯉人気が海外で盛り上がっていて、今では全体の売り上げの約8割が海外への輸出となっているからだ。それに伴い、買い付けにやって来る外国人富裕層が増えたが、観光に結びつくまでには至ってない。そこで、もっと一般の外国人も増やそうと取り組みを進めている。

錦鯉の美しさに魅せられ、海外から買い付けにやって来る

錦鯉の美しさに魅せられ、海外から買い付けにやって来る

ポイント:

・錦鯉の生産地としてブランディングを進め、海外でも知られるようになった
・一般の外国人にも錦鯉の魅力を理解してもらう取り組みを進めている

■新潟県小千谷市の錦鯉、その売り上げの8割は海外客によるもの!

新潟県小千谷市は、長岡市と並んで、錦鯉発祥の地だ。
江戸時代に、食用のコイの突然変異種として生まれ、品種改良が始まったとされる。現在は御三家と言われる「紅白」、「大正三色」、「昭和三色」を中心に約80の品種がある。
また、小千谷市には、錦鯉養殖業者が多く存在し、地元の有力な産業の一つとなっている。

そして、この錦鯉を目的に小千谷市に多くの外国人が訪れるという。

財務省の貿易統計を基に農林水産省が試算したものによると、錦鯉の輸出額は、2005年頃は20億円に満たなかった。

しかし、近年は10年前と比べると売り上げが約1.5倍の30億円超となっていると、地元の養鯉業者は言う。

これほど大きく伸びたのには、理由がある。
現在の錦鯉の売り上げは、8割が海外客で占められている。つまり、海外からの需要がここ10年で大きく伸びたのだ。

特に増加に貢献したのが、香港からの買い付けだ。2014年の輸出額は約11億2000万円となり、全輸出額の3分の1以上で、10年前に比べると3倍以上の伸び率となった。
輸出された錦鯉は、香港だけで流通されているわけでなく、中国に渡っているのが相当量あると言われている。というのも、中国は錦鯉の生体の禁輸措置(※)をとっており、直接輸出できないからだ。

※:中国との錦鯉の直接取引は、2016年4月に検査を受けた6施設のみが農林水産省によって解禁された。

中国の富裕層にとって、錦鯉が人気となっているのには理由がある。それは、鯉の滝登り等、縁起の良いものとして扱われているからだ。古来から立身出世や商売繁盛として大事にされてきたのである。

10数年前から欧米で徐々に人気が出てきていた錦鯉だったが、近年は、香港、台湾、中国の本土で人気となり、多くの外国人バイヤーが買い付けにやって来るようになったのだ。

■さらに海外にも泳ぎ出す小千谷の錦鯉!

小千谷市では、錦鯉の海外へ向けたプロモーション活動のサポートも行っている。2014年10月23日に「錦鯉」を市の魚として制定し、制定後初の予算組みで「海外輸出への販路開拓と国内需要の喚起」を目的とし「小千谷市錦鯉漁業協同組合」に市から補助金を交付し、支援したのだ。
具体的には、2015年11月にベトナム・ホーチミン市で開催され、日本から50ブースを超える行政・団体や企業が参加したジャパンフェスティバルへの出展支援を行ったのだ。

では、なぜ、ベトナムだったのか?
それは、JETROへ海外マーケットの調査を依頼したところ、ベトナムは、①経済発展により富裕層マーケットが伸びている、②一方で、錦鯉があまり知られていないということから、今後開拓していくことのできる市場であると考えたからだ。イベントでは、地元の業者とも懇談会を持つなど、販路拡大の商談を持つことができ、認知度向上にもつながったと担当者は語った。

■錦鯉は一般の観光客を呼び込むことができるのか!?

さて、このように海外へ向けて錦鯉の生産地としてブランディングをしているが、観光に結びついてこないのが課題だと、小千谷市の商工観光課の担当者は話す。

多くの外国人が訪れるといっても、観光ではなく、圧倒的に錦鯉の買い付けが目的なのだ。毎年9月から11月の土日に錦鯉の品評会が開催され、一般の方も見学できるようになっているが、参加者のほとんどがバイヤーだ。

そこで、小千谷市商工観光課としては、錦鯉をテーマに一般の観光誘客につなげたいと考えている。
しかし、一般の方を錦鯉のみで小千谷に引っ張るのは難しいため、広域連携をして、モデルコース作りを検討している。他のエリアを絡めた観光コースに「錦鯉」というコンテンツを加えてもらうことで、参加しやすくなるからだ。
また、立ち寄り観光スポットとして「錦鯉の里」という施設を小千谷市が設けた。多言語のパンフレットも作成し、館内表示は英語・中国語にも対応している。今後は、外国語の音声ガイドの導入など、利便性の向上を目指している。

錦鯉の里の展示コーナーでは、解説が日本語、英語、中国語(簡体字)だ

錦鯉の里の展示コーナーでは、解説が日本語、英語、中国語(簡体字)だ

さらに、この施設では、資料の他、一角に錦鯉が泳ぐ日本庭園を設けてある。これは、日本庭園という世界観の中での錦鯉を鑑賞してもらうことで、日本の伝統文化の1つとして訴求する狙いがある。

錦鯉の里では日本庭園を再現し、その世界観を体現できる

錦鯉の里では日本庭園を再現し、その世界観を体現できる

くわえて、2016年6月には小千谷市庁舎前に錦鯉の鑑賞池を造成した。「錦鯉の里」のみならず、市役所でも錦鯉をPRし、そのイメージを強化、向上させたいと考えている。

さしあたっての目標は、秋の品評会のタイミングに一般の観光客を誘客することだと市の担当者は話す。その取り組みに向けアイディアを練っているところだ。

小千谷市役所の前に新しく完成した錦鯉が泳ぐ池

小千谷市役所の前に新しく完成した錦鯉が泳ぐ池

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 関東・信越

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