事例紹介

山梨県が、Wi-Fiスポットを活用した外国人観光客向けの集客と購買促進

2013年1月に「やまなしFree Wi-Fiプロジェクト」を発足させ、県内1,000箇所を目標にWi-Fi環境整備を進め、目標の2年間の達成が、半年も前倒しで実現。今では、他の自治体も参考にしているようだ。そして、Wi-Fi環境が充実したからこその新しいサービスも始まっている。

今回のポイント[事例紹介:山梨県Wi-Fi事情]

Wi-Fiの導入を明確なビジョンを伝えて賛同してもらう
外国人に県内を周遊してもらい口コミ数を増やす仕掛け作りをする


ステッカー

多言語対応のステッカーを店頭に貼る

山梨県は、富士山界隈の豊かな自然、ワイン・果物など、多彩な特産物に囲まれている。その地域特性を活かし、訪日外国人観光客の誘客と受入環境の整備に力を入れている。

特に県内を周遊してもらう施策が求められていた。富士山のみを目的にピンポイントで東京から単純往復する外国人も多くいた。彼らにも山梨の良さをもっと知ってもらいたいと。

そこで考えられたアイディアがWi-Fiの整備だった。

Wi-Fi用のアンテナ

Wi-Fi用のアンテナ

県内全域で整備しようとなったきっかけは、当時、山梨県観光振興課広域振興担当主査だった矢野久氏が、仕事で訪れた県内のホテルスタッフの話から外国人観光客のある行動を知ったことだ。
外国人観光客にとってWi-Fiは重要で、彼らはWi-Fiスポットを求めて移動することもいとわない。例えば、外国人がタクシーに乗ってでもフリーWi-Fiを求めてスターバックスに行くという話も聞いた。

県内の観光地に多くのWi-Fiスポットを設ければ、そこで観光情報を見てもらえる。更に、Wi-Fiスポットを中継地点にして、県内を周遊観光してくれるのではないかと思った。

そして「やまなしFree Wi-Fiプロジェクト」がスタートするのだが、発足に際して、「外国人観光客の利便性向上と周遊促進を通じた地域活性化の一助にする」という明確なビジョンを打ち出した。

次に着実な進行プランを組み立て、3段階のフェーズに分けた。

まず第一段階はインフラ整備。
キャリアフリーの無料Wi-Fiスポットを初年度に500カ所、
翌年度には1,000カ所設置するという目標を定めた。

それと並行して第二段階として、外国人観光客に実際にWi-Fi環境を利用してもらうことを目指した。
NTT東日本の協力を得て、「光ステーション」を2週間無料で利用できる「Wi-Fiカード」を作成。
設置箇所には、告知用のステッカーやのぼり、接続方法を説明するパンフレットを置き、認知度を高める施策を実践した。

第三段階は情報コンテンツの充実だ。

NTT東日本との共通ステッカー

NTT東日本との共通ステッカー

2013年7月からはNTT東日本や、やまなし観光推進機構、プロジェクト発足に関わった地元ベンチャー企業(シナプテック)と共同で、外国人観光客向けに地域情報を配信するエリアポータルサービス「Tourist Information」の提供を新たに開始。
「光ステーション」の設置場所に合わせた情報提供を地域ポータルとして情報配信する。
さらに9カ国語での世界遺産構成資産ガイドブックや指差し会話帳、公共交通案内などコンテンツを充実させた。

以上のステップを進めて、1000箇所の導入が、目標の2年を待たずに達成したのだ。

なぜ、これほど早く達成したのか?

Wi-Fiの導入は、設置および運用を誰が負担するかが問題になる。
自治体が予算を出して導入する、または既存のインフラをレンタルする場合など、考え方がエリアによってまちまちだ。

ここ山梨県のケースは、商業施設や観光施設が自己負担で賄う。一方の県側はWi-Fiを通じて提供する情報コンテンツの充実等を担当するというスキームだ。
施設側が自己負担を伴うため、そう簡単には導入が進まないと懸念されたが、蓋を開けると驚くほどのスピードで導入された。

成功に至ったポイントは2つあった。

一つは、地道に、施設への説明を行ったこと。

具体的には、やまなし観光推進機構とNTT東日本などが、本プロジェクトの理念の説明、導入に当たってのコンサルティングを行った。

➀外国人観光客の利便性向上・周遊促進という明確なビジョンを打ち出し、賛同を得ることに努めた。

②どういったコンテンツが求められているのか、集客アップに向けてどういう施策を実践してほしいのかなど、現地の抱える課題やニーズを把握して、コンテンツ作成に盛り込む。

さらに、各エリアの商工会議所のバックアップも推進力を増した。

二つ目は、富士山の世界遺産登録が追い風になった。

2013年6月に登録され、これが地域の意識を大きく変えたターニングポイントだった。
Wi-Fiの設置というものは、投資的な意味合いが強い。来店するかどうかわからない外国人向けの対応にお金をかけられないのだ。それが、世界遺産登録で、外国人対応の現実味が出てきた。

導入が進んだ結果、外国人による口コミ数が増えた。「地元の飲食店に明らかに外国人が増えたという声を聞く」と県観光振興課の丸山孝氏。
スタンプラリーなど、まだ実現できていない当初のプランもあるが、準備を進めているそうだ。

山梨県の次なるテーマは、富士山を中心にWi-Fiの広域連携の強化だ。
2013年12月26日、山梨県と静岡県は、両県にまたがる富士山周辺のWi-Fiを推進する産官民協働のプロジェクト「Fujisan Free Wi-Fiプロジェクト」を発足させた。
富士山周辺を訪れる外国人観光客は増加の一途をたどっていて、要望が高い無料のWi-Fi環境の整備を山梨、静岡両県が主体となって進めている。

店頭にはのぼり旗でアピール

店頭にはのぼり旗でアピール

観光案内所に多言語でのフリーWi-Fiの説明

観光案内所に多言語でのフリーWi-Fiの説明


取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 関東・信越

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