事例紹介

地域のイメージ作りと効果的なプロモーション

 

株式会社地球の歩き方 観光マーケティング事業部長

自治体国際化協会 プロモーションアドバイザー

勝政 直樹

 

 

 

1.はじめに

 およそ2年半に及ぶ空白期間を経て、インバウンド市場がいよいよ再起動をはじめています。コロナ渦を経て、あらためてどのような旅行者が、どのような期待感を抱き、日本を訪れてくれるでしょうか。

 

2.地域のイメージ作り

⑴人はなぜ旅行するのか

 リフレッシュ、絆を深める、見聞を広める、…。目的は人それぞれながら、それらを異国や異文化の非日常の中で成すことで、より鮮烈で特別な体験にできることが基本にあるかと思います。

 社会変化に合わせて、昨今は旅行にもウェルネスやサステナブルを求める向きが現象として見られますが、基本そのものが変わることはおそらくありません。実際、当社「地球の歩き方ホームページ」で行った旅行者意識調査でも、次の海外旅行の旅先候補については、コロナ前後でコレという質的変化は確認できていません。

 旅行者誘致に近道や秘策はありません。異国や異文化の非日常をイメージ豊かに訴求し、現に体験できるストーリーやコンテンツを実装することからとなります。あらためて、皆様の自地域が外国人からどのようにみられ、また期待されているかについて、旅行者側と認識や目線を合わせることが第一歩かと思います。

 

⑵ターゲットとコンテンツの設定

 旅行者誘致をテーマに地域の皆様とお話しさせてもらうと、はじめからプロモーション施策のご相談となることが多い印象があります。プロモーションは目的と目標が既にあって、それを形にするための手段となりますので、プロモーションについて話す前に考えておきたいポイントがあります。地域のイメージ作りです。

 まずはターゲット。ひと口に外国人といっても、実績として過去、どの国からどのような旅行者が自地域を訪れていたか。踏まえて今後、どの国のどのような旅行者をターゲットとすべきか。合わせてコンテンツです。現に自地域に訪れた旅行者は、実績として過去、どのコンテンツに触れて、どのように評価したか。踏まえて今後、ターゲット旅行者にどのようなコンテンツを提供し、満足してもらうべきか。

 国ごとにマーケットの概況や特長をつかみ、自地域の歴史文化やコンテンツを棚卸しし、それぞれにマッチしたターゲットとコンテンツをはっきり定めること。プロモーションの成否は、事前のターゲットとコンテンツ設定を通じて、適切に地域のイメージ作りができるかで大勢は既に決着している場合が多いかと思います。

 

 

⑶旅行博出展の目的と効果

 日本の地域で、特に人気の訪日外国人向け施策に旅行博出展があるかと思います。旅行博出展の目的と効果について、皆様ではどのように位置づけ、また評価していますでしょうか。

 当社でも旅行博出展は出展代行を含めて数多く手掛けていますが、誤解を恐れず申し上げれば、当社にとって旅行博出展の主な目的と効果はプロモーションではありません。現地入りして「旅前」の環境に身を置き、(潜在)旅行者とダイレクトコミュニケーションを重ね、自地域の現状を体験的に理解し更新することとなります。ニュアンスを含む正確でリアルな市場理解は、ターゲットとコンテンツ設定、プロモーションや受け入れ施策など各種マーケティング企画の血肉となり、方向の誤りを正し、効果を底上げする羅針盤にできるかと思います。

 

 

3.効果的なプロモーション

⑴コンテンツを届ける

 地域のイメージ作りについて、認識と目線合わせができましたら、次にプロモーション、つまり、作ったコンテンツをどのようにターゲットに届けるか検討する段階に移ります。作っただけで届かなければ、コンテンツそれ自体が機能することはありませんが、届けることまで意識が向いていない事業が少なくない印象があります。

 例えば、誘客目的の外国語パンフレットを作成し、観光案内所や公共交通、ホテルなど自地域の中だけで設置・配布する。または、外国語サイトを制作し、ほとんど見られていない、または見られているのかを確認していないなど。コンテンツは届けることではじめて機能することを再確認し、予算、人員などのリソースは「届ける」部分にも適切な配分を行う必要があるかと思います。

 

⑵ネット検索に対応

 訪日外国人の第一の旅行情報収集手段は、現状、スマホによるネット検索といわれています。そして、ネット検索は中国など一部市場、また若年層など一部セグメントを除き、相対的にグローバルではGoogle検索が主流とされています。

 踏まえて、コンテンツを届けるにあたり、まず確認すべきはGoogle検索のヒット状況かと思います。ターゲット市場において、自地域に関係するキーワード検索でどのようなコンテンツがヒットしているか。仮に自地域のコンテンツがヒットしていない、またはヒットしていたとしても不正確なコンテンツである場合は、何らか対応が求められるところかと思います。

 (オンラインに限らず)さまざまなプロモーションを通じて、仮に自地域の認知や関心を獲得したとして、次に理解や比較検討時に見込まれる検索ステップにおいて、自地域のコンテンツが適切に表示できていない場合、せっかくのプロモーションが遮断され、誘致にまで至らないかとの懸念があります。

 

4.おわりに

 外国人旅行者については、そもそものところ、旅行情報に市町村の詳細な区別を求めていない場合があります。他市町村であっても、旅行者が求めるスポットが現在地の一歩先にあれば、市町村をまたぎ、自由に周遊することが自然かと思います。また特に個人旅行者については、最終的に個店の正確で詳細な情報が必要です。絶景が見られる、温泉がある、そばがうまい、…、大枠な情報それ自体は誘致の決定打とはならず、その先で、どのスポットでどのメニューを、いくらで楽しめるのか。このような旅行者ニーズの基本に寄り添った情報発信については、地域の外国語公式サイトを含めて、機能として、地域行政が単独で対応できる範囲を超えているとの見方もできるかもわかりません。

 日本を訪れてくれようとしている世界中の旅行者に向けて、自治体と事業者が一体となり、旅行者目線で編集されたスポット情報や記事がいつどこにいても多言語で取得できるような環境を整えていくことが、今後回復が見込まれるインバウンド需要の獲得をより確実なものにしていくのではと考えています。

 

〇当社が提供する「GOOD LUCK TRIP」サービスについて

 当社は、ガイドブック出版事業で培った観光情報の企画編集ノウハウやグローバルネットワークを活かし、2008年に訪日外国人向けメディア・マーケティング事業を開始しました。2009年、訪日外国人向けメディア「GOOD LUCK TRIP」をローンチ後、10年以上にわたり訪日外国人観光に寄り添い、観光計画や施策の立案と実施について、全国の行政、企業と伴走しています。

 「GOOD LUCK TRIP」は、外国人旅行者のニーズをワンストップで解決できる、取材に基づく正確なスポット情報と詳細な編集記事、旅行者の生の声(クチコミ)も同時に備えたデータベース型の旅行情報サイトです。ネット検索にも対応した中国語繁体字、中国語簡体字、英語、日本語の4言語で展開しており、独自の自治体向けプロモ―ション支援施策もご用意しています。詳しくは、以下フォームよりお問い合わせください。

https://www.gltjp.com/ja/service/#contact

 

クレアからのお知らせ ~プロモーションアドバイザー事業のご紹介~

 クレアでは、海外プロモーションに精通した専門家(プロモーションアドバイザー)を自治体に派遣し、海外プロモーションの企画段階において、相談対応や専門的な助言・情報提供等を行うことで自治体の支援を行う事業を実施しています。本寄稿をいただきました株式会社地球の歩き方 勝政 直樹様にもアドバイザーにご登録いただいております。

オンライン派遣もご提供しております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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