事例紹介

知事をトップに“ONE TEAM”でインバウンド誘致に邁進する 青森県の事例紹介

 2018年に、都道府県別外国人延べ宿泊者数が前年比34.1%増の34万9,000人となり、過去最多を記録した青森県。新幹線の開業と国際航空路線の拡充が追い風となる中、同県では様々な取り組みを通じてインバウンド誘致を進めてきました。今回は青森県独自のセールス活動にスポットを当て、同県における具体的な取り組みを紹介します。

                                                                                                                                                          (※本記事は、2019年度に取材されたものです。)

 

                                      青森県でもっとも人気のある観光スポットの一つ、奥入瀬渓流

 

 

 

交通網の拡充が追い風となり、

8年間で6倍のインバウンド客が宿泊

 日本全体でインバウンド客のリピーターが増え続ける中、地方部での外国人延べ宿泊者数の伸び率の高さが注目されていますが、青森県も例外ではありません。青森県の外国人延べ宿泊者数は2010年5万9,000人泊だったものが、2018年には34万9,000人泊となり、6倍近くに増えています。青森県におけるインバウンド客増加の背景には、3度の新幹線開業と各国・地域からの航空路線開通によって段階的に整備されてきた、観光客の受け入れ態勢があります。

 具体的には、2002年盛岡—八戸、2010年八戸—新青森、2016年新青森—新函館北斗の新幹線開業があり、国際線では1995年のソウル直行便を皮切りに、中国、台湾からの定期便や、香港などからのチャーター便が就航するようになりました。こうした交通網の拡充に伴い、県全体で観光振興の機運が高まっていきました。

 

 

            エバー空港が青森-台北間の定期就航を開始した際には、青森空港で祝福

 

 

民間と連携し、ディープな観光コンテンツを開発

 国内外からの観光客を受け入れるために、まず青森県が取り組んだのは観光コンテンツの掘り起こしです。青森県には「りんご」「ねぶた祭り」「雪」「温泉」など魅力的なコンテンツがありますが、ただ単に個々の良さをPRするだけでは海外からわざわざ足を運んでもらうのに十分なきっかけにはなりません。そこで青森県はPR活動を行う15年ほど前から専門チームを作り、戦略的な情報発信を行い続けています。

 

 

          弘前の桜。見た人の心を惹きつける写真を用意することも大切なポイント

 

 

 チームに属する職員は、写真撮影の技術や編集の視点を学んで県内各地の面白いネタや人を発掘・取材し、1000本にものぼるオリジナル記事をブログやSNSで発信してきました。また、こうした情報を東京の出版社やテレビ局、新聞社などのメディアに提供し青森県を取り上げてもらう活動をする中で、ストーリー性のあるネタの方がメディアに響きやすいなどのポイントを把握することに繋がり、自分たちの価値を客観的に分析することができたといいます。

 

 こうした地道な情報発信を続けていく中で、観光を産業として前向きに捉えるという機運が徐々に高まってきたそうです。自発的な取組を進める民間の方々が現れ、県は民間とも連動してコンテンツを磨き上げていきました。最近では、例えば八甲田山の豪雪体験や、大間のマグロ漁の乗船体験など、通り一遍でないここでしか体験できないディープなコンテンツも生み出してきたのです。

 

 

       豪雪体験も、徹底的にここでしかできないことを追求し続ける中で、生まれたコンテンツ

 

 

知事自らが先頭に立って印象に残る海外セールスを実施

 「航空路線の誘致をはじめとする海外へのインバウンドセールスでは、単なるセレモニー的な営業ではなく、相手の気持ちに訴える営業を心がけています」と青森県観光国際戦略局の秋田佳紀局長は言います。例えば台湾へセールスに行った際には、相手にとことん喜んでいただくために、知事自らが先頭に立ってりんご柄のアロハシャツやマグロ柄のTシャツを着ることもあります。また、ねぶたやりんごなどの観光資源を説明するために職員が紙芝居を用意したり、ステージパフォーマンスで盛り上げたりするなど、相手の記憶に残るよう様々な工夫をしています。このようなセールスの甲斐あって台湾での認知度が高まり、知事は台湾で「りんご知事」という愛称で呼ばれ、現地のドラマに出演した経験もあるそうです。

 

 

                         積極的に海外でのプロモーションにも参加する三村青森県知事

 

 

 青森県では知事と職員との距離も近く、営業活動の打合せの時は、上司から部下まで全員がひとつの部屋に集まり、話し合いをします。そのため知事は全ての取り組みの実情はもちろんのこと、担当者の名前と業務まで把握しているほど。セールスの際も知事から担当者まで1台のバスに乗って行くため、車中で密に情報交換を行うなど、知事を座長とした旅一座さながらの団結力でインバウンドセールスに取り組んでいます。

 

 

相互交流に力を入れることで

Happy-Happy(ハッピーハッピー)な関係を築く

 青森県ではインバウンドの誘致のみならずアウトバウンドも含めた相互交流にも力を入れています。例えばソウルの仁川や台湾の桃園といった国際空港を経由して他のアジア諸国へもアクセスできるため、近年は県民の海外との経済・文化・スポーツ交流も盛んになっています。知事がモットーとしているのは「Win-Win(ウィンウィン)」ではなく「Happy-Happy(ハッピーハッピー)」な関係。勝ち負けや損得ではなく、観光交流を通じてお互いに幸せになれるような関係を築くことが何よりも重要だといいます。

 つながりのある国との関係を大切にし、県全体が一致団結してインバウンド誘致に邁進していく青森県の取り組みには、今後さらなる期待が膨らみます。

 

 

                                         (やまとごころ編集部

 

 

 ※印刷用PDFはこちら 

Categories:事例紹介 | インバウンド | 北海道・東北 | トピックス

Copyright © CLAIR All rights reserved.