海外経済セミナー

会場の様子

MICE動向

 

2019年2月22日に東京で開催したクレア海外経済セミナーでは、自治体からも関心の高い「MICE」誘致をテーマとしてインバウンドに関する情報を提供しました。国内外でのMICEの最新情報のほか、今回は、特に中堅都市に焦点を当てたMICE誘致の具体的な手法、利活用について4名の講演者それぞれの立場・視点からお話していただき、自治体職員をはじめ、観光協会、コンベンションビューロー等の関係者を中心に多くの方に参加いただきました。

 

 

 

※MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。(観光庁HPより)

 

セミナープログラム

テーマ:「MICE」

 

基調講演「MICEのメカニズムと地域のMICE振興」
講師:川島アソシエイツ代表  川島 久男 様 (観光庁VISIT JAPAN 大使)

 

講演1「 MICEの現場から~PCO(Professional Congress Organizer)が考える地方都市の可能性~」
講師:株式会社コングレ 専務取締役 コンベンション事業本部長 紫冨田 薫 様

 

講演2「台湾でのMICEの誘致と利活用について事例紹介」
講師: K&A International Co. Ltd. 代表 Kitty Wong 様

 

講演3「 地域目線でのMICE~松江に学ぶ国際会議誘致の可能性~ 
講師: 松江コンベンションビューロー(一財)くにびきメッセ事務局長 原 利一 様

MICEは世界的な成長産業

 まず、基調講演として、川島アソシエイツ代表でもあり、観光庁VISIT JAPAN大使にも

川島アソシエイツ代表
川島 久男氏

任命されています川島 久男氏から、以下のように講演をいただきました。

 

 MICEは世界的な成長産業であり、国際会議だけでも過去10年で2倍強の増加を示している。また、MICEは一般観光と比べ、ハイエンドな参加者が長期滞在することに加え、主催者やスポンサーの支出も加わることから、経済効果が高い。一方で、MICEといえば、大都市が大規模な国際会議を誘致するものと思われがちだが、国際会議の大半は中小規模なものが多い。中小規模の国際会議では、大規模なものと比べると国際競争もほぼなく、海外プロモーションも限定されていることから、費用対効果が高いものだと考えている。

 MICEを誘致していくうえで、気を付けたい点として主催者が誰であり、その中でキーパーソンが誰なのかを押えること。誘致に取り組まれている自治体の中には、MICE参加者へのプロモーションを中心にされているところも散見されるが、一般的に参加者には開催地に関する決定権がないことを踏まえると、主催者に対する効果的なPRやセールスがより必要になる。

 またMICEは開催期間だけでなく、その前後にもワークショップや視察ツアー、社交行事、関連商談会が催されることもあるため、ユニークベニュー等と併せることで、地域の新たな魅力を開発することにもつながる。そのためには、地域のMICEステークホルダーと連携し、地域全体でMICEが開催されることを歓迎する取組が必要である。

 最後に、MICEを誘致する戦略を立てるにあたり、「大都市」と「地方都市」では異なる戦略を立てること。「地方都市」では、中小規模のMICE誘致に焦点をあてる戦略を用いることで、MICEの誘致開催ができる機会が十分にある。

 

 

ポイントは、3つの「C」

 1人目の講演は、(株)コングレ専務取締役コンベンション事業本部長の紫冨田 薫氏より

(株)コングレ 専務取締役
コンベンション事業本部長
紫冨田 薫氏

講演をいただきました。また(株)コングレは、クレアのプロモーションアドバイザーとして、自治体向けのMICEの誘致・新規企画・運営に関するサポート、コンサルティングも担当していただいています。

 

 当社は主にPCO(Professional Congress Organizer)という立場から、MICEに関わっている。PCOとは主催者とともにMICEの誘致・企画・運営を担当する事業者である。

 MICE誘致について、3つの重要な要素(Contents、Capacity、Cooperation)がある。まず、Contentsであるが地域にどのような大学や研究機関があるのかを把握しておくことが大切。医学部は全国に82あり、医学会は魅力的なコンテンツといえる。近年、医学会の中では、国際化を推進するところがある。次にCapacityであるが、地域にどれほどの規模の会場があるのか、また十分宿泊客を収容できるだけのホテルの部屋数が確保できるかなどを知っておく必要がある。ただし国際会議は大型ばかりではなく、中小型の会議が多いので大学の講堂なども会場として使える。Capacityの中には、ユニークベニューの会場も含まれる。地域の博物館や商店街なども懇親会場や地元市民との交流の場に活用できる。3つ目のCooperationであるが、MICEステークホルダー間の連携もあるが、地元の協力がMICEの成功にとって重要だと感じる。特に地元との連携による「もてなし」は、地域への経済効果を生むだけでなく、MICE参加者にとっても歓迎の意をうれしく感じる。またボランティアがMICEに参加することも、地元の協力が会議開催のレガシーに繋がる一つの形である。

 最後にMICE誘致を担当している者として、2点提案したい。1点目が「国内医学会の国際化」を後押しすることである。先述したように、医学会の国際化が進んでいる。地元で医学会を開催予定で国際化を考えておられる場合は、海外向けプロモーション支援や多言語化支援等を通じて国際化の支援をするものも一つの方法である。国際的なMICE誘致と言えば、一から呼び込むと考えがちだが、国内会議を国際化することによって海外からの参加者を増やすことができるという点を留意されたい。2点目が「サテライトのすすめ」である。サテライト会議とは大規模な国際会議で日本に来られた参加者を対象として、その会議の前後に関連して開催される中小規模の国際会議である。地方都市で大規模会議の開催が難しい場合でも、サテライト会議なら誘致することが可能であることから、特に地方で推奨したい戦略であると思う。

 

 

日本のMICE市場は、成長の余地あり

 続いて、台湾からお越しいただいたK&A International Co. Ltd. 代表のKitty Wong 氏より

K&A International Co. Ltd
代表 Kitty Wong氏

講演をいただきました。

 

 アジア太平洋地域でのMICE開催国別ランキングでは、日本が1位であり、ここ数年、上位6位までに大きな変動はない。近年、インドが順位を上げてきているが、今後も日本がトップであり続けると考えている。

 一方で都市別では、東京都と京都以外はランキング外にあり、日本のMICE市場にはまだまだ潜在性があり、成長の余地があると思われる。

 台湾では大規模な国際会議の誘致の有無に係らず、ICCA(国際会議協会)の会員になることを勧めている。会員になることで、MICEに関する最新の動向やノウハウを得ることができる。

 MICE誘致に関しては、全ての関係者を巻き込むようにすることである。そのためには、行政がステークホルダー間の調整を務めることが大切である。例えば、台湾の高雄市が厳しい競争に勝ちICCA2020の開催地に選定されたのは、港湾都市の魅力であるコンテナをユニークベニューとして利用したプロモーション等もあるが、それらができたのも、行政が連携してステークホルダー間を上手く調整できていたからだと考えている。

 MICE誘致に関しては次に述べるステップで進めることを提案したい。まず主要目標を定めることである。なぜそのMICEを誘致したいのかを明確にして、多くの人に知ってもらえるようにすること。次に計画を立てること。計画段階でステークホルダーを巻き込むようにすること。また行政サイドとしては、できるだけ近隣の自治体等を巻き込めるようにすることが大切。計画が概ね立てられれば、行動に移していくことが必要。行動に移さなければ、できること、できないことが見えてこないこともある。行動していくと予想外のこともたびたびあるため、MICE誘致に向けた取り組みは早い時期から取り組まれることを勧めている。

 

都市に合せた誘致戦略

 最後の講演では、松江コンベンションビューロー(一財)くにびきメッセ事務局長原 利一氏

松江コンベンションビューロー
(一財)くにびきメッセ
事務局長 原 利一氏

より、地方でのMICE誘致に関する講演をいただきました。

 

 地方都市である松江は、MICEの中でも「C」に狙いを定めて誘致活動を行っている。「M」や「I」は企業が主催者となるため、実態を把握するのが難しく、また「E」はバイヤーが不在となる地方都市では開催が難しいのが現状である。一方で「C」は、その件数、名称、主催者などが把握しやすい。また、国際会議の件数自体は、地方に適した規模が多い。日本で開催される国際会議の9割程は日本の世話人であり、英語での商談や打ち合わせもほぼ必要なく、学会なども英語で運営されるため、同時通訳設備も必ずしも必要とならない。

 コンベンション誘致に際しては、まず、どのようなコンベンションが開催されるのかを調査する必要がある。各学会事務局やJNTOの情報などから、会議の情報を得ることができ、会議名称が分かれば、インターネットで主催者の情報を収集することも容易である。それによって主催者に接触する機会も得ることができる。

 誘致に向けて、県市によるコンベンション補助金も材料であるが、主催者が共通して持たれている「参加者に満足していただける会議」を念頭に、PRしているところである。そのため、宿泊施設の収容力を考慮してターゲットとなるコンベンションを決めている。また、島根、松江を感じてもらえる場所の紹介もしているところ。

 また当財団としては、国際会議を開催してもらった主催者との縁を大切にしている。開催が終わった主催者とも関係を継続しておくことで、その主催者を通じた紹介を受けることができ、新たな国際会議の誘致につながっている。

 

 最後に地方都市においては、都市の「身の丈」に合った明確な誘致戦略が必要になる。特に施設や人的リソースの制限については、大都市よりも受けやすい点に留意しておくこと。また、国際学会を誘致する場合には、国内で誘致に影響力がある人物についても調べ、コネクションを構築しておくことで、誘致の可能性のある案件を紹介していただくこともできる。

 

最後に

 今回、「MICE」というテーマで、MICE誘致に関する国内外の最近の情報や誘致に関する手法など、様々な立場・視点からご紹介いただきました。クレアの方でも、MICE誘致はじめ自治体の経済交流に係る国内外で行なっている事業を当日ご紹介致しました。参加者からは、「基本的な部分から具体的な話まであり、大変勉強になった。」や「ターゲット設定、マーケティング等、具体的な誘致方法を知ることができた。」などのご意見を頂きました。

 今後とも、クレアでは自治体のインバウンドや販路開拓といった経済活動の参考となる情報提供の場としてセミナーを実施して参ります。

 

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