事例紹介

まさに官民一体! 民間主導をサポートする大阪

政令指定都市と県では、別々の観光振興の組織を持ち、類似の誘客イベントやプロモーションをするにしても別々の動きをすることがほとんど。
しかし、大阪は平成25年4月に大阪観光局を設立し、大阪市と大阪府および経済界が一体となった好例をみせた。インバウンドでも大きな盛り上がりを見せる大阪の現状をさぐってみた。

<今回のポイント>
1:大阪市と大阪府が一体に。経済界とも一緒に大阪観光局を創設。
2:「観光のプロ」と言われる人材を登用
3:大阪各エリアのインバウンドの動きとも連携

大阪市と大阪府及び経済界が一体となり観光振興を担うプロ組織として平成25年4月に大阪観光局を設立。

これは府市の共通の戦略である「大阪都市魅力創造戦略」における重点取組みのひとつであり、府市共通の「大阪の観光戦略」に掲げる「2020年外国人旅行者650万人達成」に向け、戦略的に観光集客を促進することを目的としている。

平成27年4月には、大阪観光局の母体である大阪観光コンベンション協会(大阪の観光・コンベンションを推進する財団法人。平成15年に大阪府、大阪市の観光連盟、コンベンションビューローが合体して運営されていた)を事業実施団体として、「公益財団法人大阪観光局」として新たにスタートした。同時に観光局長には、溝畑宏氏が就任している。

前局長の加納國雄氏は、前香港政府観光局日本・韓国地区局長だった。現局長の溝畑氏は総務省出身でJリーグ「大分トリニータ」の運営会社社長などを経て、平成22~24年には観光庁長官を務めた。

溝畑宏大阪観光局長

溝畑宏大阪観光局長

このトップ人事にも示されるように、大阪観光局は一貫して、力量と経験のあるプロを登用し、民間の視点による事業執行と成果を追求している。

公益財団法人という立場上、どこまで柔軟に事業開発や効率性を追求できるかは今後にかかっていると思うが、府市一体となった取組や強力なイニシアチブを持つトップマネージメントにより、今まで生じがちだった「無駄」や「前例に則した事業」は排除されると期待されている。

もともと関西では「KANSAI THRU PASS」(※1)など関西に訪日外国人旅行者を呼び込む連携が10年以上前からいろいろとなされている。最近のインバウンド増加を受けて、大阪の中でも企業や各エリアで連携の動きが活発になってきている。
(※1)KANSAI THRU PASS大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀の地下鉄や私鉄、バスを定額で利用できる交通パス。2日間4000円、3日間5200円。観光案内所やホテルで購入できる。関西圏や岡山、静岡の鉄道事業者で構成される「スルッと関西協議会」が事業委託した株式会社スルッと関西が運営する。外国人向けだけでなく、関西圏以外の日本人にも同様の料金で販売されている。

そのひとつが「大阪ミナミインバウンドプラットフォーム推進協議会」。大阪・ミナミ全域で利用できるサービスや情報を提供しようと、心斎橋筋商店街振興組合などミナミの主要商店街や企業、行政組織など計19機関・団体が参加し、発足させた。

多くの外国人旅行者が楽しむ大阪ミナミ(戎橋筋商店街)のショッピングと散策

多くの外国人旅行者が楽しむ大阪ミナミ(戎橋筋商店街)のショッピングと散策

各店が競うように免税の表示を掲げる

各店が競うように免税の表示を掲げる

これまでもミナミの商店街や各店が独自で訪日客向けのガイドブックやMAPを作成したり、特典サービスを提供したりしていた。しかし、広域で動く外国人観光客には「わかりにくい」「使いにくい」などの声があった。

そこで、ミナミの推進協議会では、参加するIT関連会社がミナミエリア全体の情報をまとめて発信するHPを作成し、共通の特典設定や、ポイントシステム導入も検討している。
その取り組みの第1弾として、大阪観光局が運営する外国人向けの情報サイト「Osaka Enjoy Rally」への参加を決定。観光局が整備を進めている公衆無線LAN「Osaka Free Wi-Fi(OFW)」に接続すると、表示されるサイトで、加盟している店の特典やサービスを受けられる。

Osaka Enjoy Rally  加盟している店舗はこのように表示される https://www.osaka-info.jp/jp/wifi/rally.html

Osaka Enjoy Rally  加盟している店舗はこのように表示される
https://www.osaka-info.jp/jp/wifi/rally.html

大阪では、そのほかにも企業や旅行会社によるインバウンドの動きが東京に負けずめざましい。
平成27年4月にはあべのハルカスが外国人専用サロンを開設。観光案内や免税手続、外貨両替の他、日本茶の試飲や美容器具などの体験できるコーナーも併設するなどあべのハルカスへの誘客に力を入れる。

また、エイチ・アイ・エスが「心斎橋OPA(オーパ)本館」の8階フロアに同日開設した日本最大級の訪日旅客専門フロア「OSAKA TOURIST INFORMATION CENTER」も注目を集めている。

これら民間の動きをサポートし、まとめてエリアとしての魅力を大きくしていくのが、自治体がかかわる観光振興の役割のひとつといえる。

日本のインバウンドをけん引する大阪の今後に目が離せない。


取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 中部・近畿

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