事例紹介

大分県は留学生作成の動画で「おんせん県おおいた」を海外へPR

大分県は、別府、由布院といった全国的に有名な温泉観光地をはじめ、湧出量日本一、地球上に存在する温泉の泉質10種類のうち8種類が揃うという、名実ともに「おんせん県」である。韓国人を筆頭に多くの外国人旅行者を集める大分県だが、県内の留学生が作成したPR動画が注目を浴び、認知度向上に貢献している。外国人目線を活かした緻密な戦略を探ってみよう。

タイプロモーション大分県の夕べ

タイプロモーション大分県の夕べ

<今回のポイント>
1:人口10万人あたり日本第二位という豊富な留学生人材
2:APUを中心に官学連携して、外国人目線によるPR動画作成

大分県における平成26年の延べ宿泊者数422万人のうち、外国人旅行者は32万人と7%強を占め、外国人旅行者誘致に成功しているといえる。そのうち18万人、6割弱を占める韓国に対しては、以前から行ってきた観光展出展や現地での旅行代理店(団体、個人旅行者対象のオンラインエージェントとも)との商談、営業を通じた連携が功を奏している。

平成25年の観光庁による訪日外国人消費動向調査では、都道府県別の訪問率は、1位福岡県、2位大阪府に次いで、3位となっている。

大分県では、海外への情報発信、PRに積極的に留学生を活用している。

統計情報によれば、人口10万人あたりの留学生数が京都についで日本第2位であり、
中国を筆頭に80の国と地域から約3200人が集積している。

平成26年は2つの事業に留学生がかかわった。

1つは、県内に在学する留学生19人を対象に8月に実施した「大分県留学生観光体験ツアー」。

体験した観光地の魅力を自分のSNSなどで発信してもらった。「各国の旅行者がよくチェックをする在住外国人の『口コミ』の発信力は、留学生個々人によってバラつきはあるものの母国の親戚・友人に対する継続的な情報発信は必要で、大きな流れにつながる」とツーリズムおおいたの担当者は語る。

もう1つは、留学生によるCM動画作成だ。

大分県がAPU(アジア太平洋立命館大学)※1に委託する形で、韓国、中国、台湾、タイ、グローバルの5エリアを対象に、留学生を中心とした学生が大分県の魅力をアピールするCM(1作品3分間)を制作。

対象の国・地域出身者だけでなく、日本人学生や他国・地域出身者を合わせた約60 名の学生が参画し、CM 制作の企画、撮影、編集全てを行った。

「観光と食と文化」をテーマに、各国・地域の関心、嗜好に合わせたストーリーで県内各地を巡って撮影し、斬新で共感を呼ぶ、いきいきとした内容になっている。

例えば、タイ人向けには、心を癒すために大分を訪れた男女が旅をしながら最後に出会うというミュージカル仕立てのストーリーの中に、タイ人が好きな花いっぱいの風景や着物体験などが散りばめられている。

完成した動画はYoutubeにアップされており、海外の大分県人会海外拠点などでの広報ツールなどで活用されている。

平成26年11月にプロモーションの一環として、タイ・バンコクで開催した「大分の夕べ」でも上映。会場に集まった旅行社やマスコミの注目を集めていた。
平成27年4月に韓国で開催された「世界水フォーラム」でも韓国版が流され、そのクオリティの高さが評価されたという。
再生回数などはまだ数千回だが、留学生がこの動画をSNSなどで広めることで、大分の魅力をリアルに伝えている。
平成27年度も、韓国、中国、台湾、タイに加え、ベトナム、インドネシア版も新たに委託事業として制作が予定されている。

また、大分県の産学官の連携による留学生支援組織「大学コンソーシアムおおいた」では、留学生の生活、就活支援を含め、交流事業を推進しているが、「OITA学生提言フェスタ」などで留学生からの意見提案を積極的に取り入れている。

平成26年11月に開催された同フェスタでは、「学生のアイデアを観光・まちづくりに!」をテーマに、課題解決をするソリューション型インターンシップを行った学生がパネルディスカッションを行った。例えば、大分県湯平(ゆのひら)温泉の旅館山城屋では、トリップアドバイザーなどSNSを使った効果的なPR方法などを留学生がアドバイスした。

今、大分県は、平成27年に観光の大きな節目を迎えている。

3月には大分と宮崎を結ぶ東九州自動車道が全線開通、4月にはJR大分駅が新しくなり、レンタカー、鉄道やバスなど公共交通機関を利用する外国人旅行者を大きく引き寄せることにつながる。
また、4月24日には大分の文化と世界の芸術が融合する「大分県立美術館」がオープン。

国内外の注目を集める中で、留学生と連携した事業をますます拡大させていく予定だ。

※1 APU(アジア太平洋立命館大学)
大分県、別府市、立命館の三者協力により、平成12年4月に設立。学生も教員も半数が外国籍、講義の80%が日英二言語で行われており、約2400人の留学生が在籍している。別府市や近隣の観光施設や宿泊施設では、この留学生が数多くアルバイトとして働いており、外国人旅行者のおもてなしに大きくかかわっている。

留学生CM

留学生CM

大学コンソーシアムおおいた

大学コンソーシアムおおいた

世界水フォーラム1

世界水フォーラム1


取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 九州・沖縄

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