東京から新幹線に乗ってわずか1時間の距離に、豪雪地帯がある。日本の雪は外国人観光客にとっては、魅力的なコンテンツだ。雪によってもたらされる豊かな自然環境、雪と共存してきた生活文化、そして雪によって彩られる幻想的な世界がある。小説「雪国」の舞台になった越後湯沢など、このエリアが連携して「雪国観光圏」という新たなブランディングに挑んでいる。
<今回のポイント>
1:雪がキーワードのブランディング
2:雪の暮らしをテーマに雪の魅力を再定義
3:先を見越した官民の役割分担の設定
観光圏の中で活発なのが、ここ雪国観光圏だ。
雪国観光圏は、新潟県魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、群馬県みなかみ町、長野県栄村が設立した観光圏。3つの県の市町村が豪雪地帯のブランディングを目指している。
観光圏とは、国が認定する自然・歴史・文化等において密接に関係する観光地を一体とした区域として、圏域内の関係者が連携し、点在する観光資源を連携して、観光客が滞在・周遊できる魅力ある観光地域づくりを促進するものだ。
観光圏整備実施計画が国に認定されると、事業に対して以下のような支援がある。
観光旅客の来訪・滞在の促進に効果や成果の見込まれる事業に係る補助金の交付(補助率上限40%)。
着地型旅行商品の販売に係る旅行業法の特例。
周遊割引券の導入に係る運送関係法令の手続緩和。
宿泊施設に係る設備投資に対する財政投融資など。
平成20年に国よって制定され、ピーク時は全国で40を超えたが、予算の縮小等により解散または休止中の観光圏も少なくない。
しかしなぜ、雪国観光圏は現在も活発に動いているのか。分科会だけでも5つが稼働中。
そこには、理由がある。
一つは、北陸新幹線の開通による、観光客の減少という危機感を共有しているからだ。
これまでは、スキー客など東京から日帰りで気軽に行けることで首都圏から誘致を図ってきた。しかしスキー人口の減少で、すでに湯沢町などは低下傾向にある。
湯沢町の観光客数は平成19年が4,701,370人で、平成24年は4,100,000人
魚沼市の観光客数は、平成19年が2,135,860人で、平成24年は1,720,000人
と落ち込んでいる。
二つ目は、雪を共通のキラーコンテンツとするにあたり、東北や北海道など、他のエリアとはどう違うのかを掘り下げ、圏域内での話し合いが、地域の絆を育み、魅力の再定義を進めた。
雪は、「スキー」をはじめとした冬季のレジャーとして人気があるが、「雪」そのものの活用は観光も含めて考えていなかった。
雪が織りなす豪雪地帯の衣食住すべての生活文化を観光の資源として見直し、新たな観光ブランド形成を目指した。
世界的な豪雪地として知られる三国・魚沼地域。このような雪深い地区で人が住むところとしては世界でも珍しい。
また雪は人々の生活文化にも大きな影響を与え特有の文化を形成してきた。雪解け水や寒冷な気候がコシヒカリのようなおいしい農作物やおいしい日本酒の醸造を可能とした。まさに雪がもたらした恵みである。
このように雪の魅力を再定義していったのだ。
雪国観光圏には、「雪国観光圏推進協議会」とその実行部隊ともいえる「一般社団法人雪国観光圏」がある。
設立の経緯は、どうだったのだろうか。
平成20年2月28日、
湯沢温泉旅館組合主催にて広域観光連携シンポジウム「ぐるっと雪國!!」が開催。湯沢町、南魚沼市、魚沼市、十日町市、みなかみ町、津南町、栄村の行政ならびに民間関係団体が出席して、広域観光連携の必要性の共通認識を持った。
平成20年3月~4月、
雪国観光圏設立に向けて、関係団体等への説明や調整を実施。
平成20年5月13日、
第1回設立準備委員会を開催。広域観光圏内の行政や民間団体が参加し、観光圏整備事業の概略と協議会設立に向けての説明を行った。
平成20年8月7日、
雪国観光圏推進協議会設立総会が開催された。
雪国観光圏推進協議会の会長は上村清隆湯沢町長(当時)が努め、「官」の代表者と各地の観光協会や旅館組合が理事として参画した。
雪国観光圏推進協議会の設立当時から、平成25年度から観光地域づくりプラットフォームとして「一般社団法人雪国観光圏」を位置づけていた。
スムーズな事業の継続を想定してのことだ。
一般社団法人雪国観光圏は、雪国観光圏推進協議会からの事業委託の他、パートナー企業、事業サポーター会員の支援により民間主導で事業を推進している。
雪国観光圏整備計画には、インバウンド強化も加えている。
平成25年度の観光客数17,000,000人のうち外国人が80,000人だ。それを平成29年度には観光客数17,850,000人のうち外国人を160,000人とする。全体が5%増のなか、外国人客を5年後には2倍にする目標だ。
平成26年2月に、在住外国人を10人招聘してモニターツアーを実施。欧米やアジアなど国籍は様々だった。
モニターコースでは、かまくら、日本そば、大地の芸術祭の通年展示を案内したところ、雪に埋もれた集落に行ってみたいという要望がでた。後山(うしろやま)集落に案内したところ、屋根の高さまで雪が積もっていた。
参加者は、1時間半も集落の写真を撮っていた。雪国の生活ぶりに感動していたようだ。
普段の雪国の生活に興味があることがわり、「雪国体験」という商品開発のヒントになったという。
日本国内の豪雪地域との差別化のために、雪国観光圏としてのオリジナルストーリーが今後の課題であると担当者。
そこで、文化資源の掘り起しのため観光業界の人間だけではなく、異業種を巻き込んだ研究グループを結成した。
雪国の魅力づくりに、さまざまなアプローチが続いている。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/