9月20日に開幕するラグビーワールドカップ2019の期間中、九州 全体が“祭り”一色となるプロジェクト『祭りアイランド九州』が開催されます。スポーツのビックイベントを地域PRと周遊促進のチャンスとみて仕掛ける、インバウンド客誘致の取り組みをご紹介します。
熊本市内中心部で行われる『九州・山口の祭り 熊本に集結』のイメージ図
ラグビー観戦客に“祭り”で九州をアピール
ラグビーワールドカップ2019日本大会(以下RWC2019)は9月20日に東京スタジアムで行われる開会式と日本VSロシア戦を皮切りに、11月2日までの44日間にわたって日本各地で48試合が行われます。まずは出場する20カ国・地域を5チームごと4組に分けて総当たり戦 を行い、それぞれ上位2チーム・計8チームが決勝トーナメントに進み、優勝を目指して戦うことになります。
九州では9月26日に福岡でイタリアVSカナダ戦が行われ、6日後の10月2日には福岡でフランスVSアメリカ戦、大分でニュージーランドVSカナダ戦の2試合。10月2日にも大分でオーストラリアVSウルグアイ戦が行われるなど、 総当たり戦で8試合、決勝トーナメントでも2試合の合計10試合が行われることになっています。
ラグビーの試合は身体的ダメージが激しく、選手の身体を休める必要があるため、次の試合までの間隔が空いています。試合観戦を目的に海外から日本へ訪れるラクビーファンが、その期間に日本各地を旅行するのではないかと期待されていますが、日本で初めて開催されるラグビーワールドカップのため、実際に観戦者がどのような動きをするかは予測しづらいところがあります。そんな 未知数の海外からのラグビーファンを取り込もうと積極的な動きをしているのが、「祭りアイランド九州実行委員会」です。
「祭りアイランド九州実行委員会」は、2018年10月に発足。委員会は、九州地域戦略会議(九州に加え、山口 県、沖縄県の各知事及び九州経済連合会、九州商工会議所連合会、九州経済同友会、九州経営者協会の経済4団体の長で構成)の構成メンバーで運営されています。事務局は(一社)九州観光推進機構にあり、まさに九州地域戦略会議の枠組みに参画する9県で取り組む、 官民一体となった最大規模の動きとなっています。
事務局では実行委員会の構成メンバーに加え、各地域のお祭り運営団体や関連する市町村とも協力し、事業の成功に向けて取り組んでいます。事務局の山田次長は「九州初の取り組みということもあり様々な課題が日々出てくる状態ですが、この機会を生かし、祭りの魅力を海外の方に伝えると共に、九州観光の目玉の一つに成長させていきたいと日々の準備に取り組んでいます」と熱く語ります。
使命 は「世界へのPR」と「外国人観光客の周遊促進とリピーター化」
祭りアイランド九州実行委員会はRWC2019を絶好の機会ととらえ、2つの使命達成に向け、イベントや施策を展開しています。
使命その1:熊本地震からの復興に向けて九州・山口の魅力を全世界にPR——イベント『九州・山口の祭り 熊本に集結』を開催。
使命その2:外国人観光客、特に欧米豪の周遊促進とリピーター化を図る——各地のお祭りを紹介したウェブサイト『九州・山口地域の祭りめぐり 』を開設。
いずれも共通するキーワード “祭り”で九州を印象づけ、外国人観光客誘致拡大のための新しい起爆剤にすることを狙っています。
ユネスコ無形文化遺産登録の戸畑祇園大山笠(福岡県)
約40の祭りが熊本に集結!~使命その 1~
具体的な動きを見ていきましょう。まず、九州内での1試合目の後すぐの週末となる9月28日、29日に、熊本市内中心部で行われるイベント『九州・山口の祭り 熊本に集結』には、博多祇園山笠や、戸畑祇園大山笠などユネスコ無形文化遺産に登録されている九州の5つの祭りに加え、高千穂の夜神楽、長崎のランタンフェスティバルなどの九州各地の祭りが参加。山口県からは岩国藩鉄砲隊保存会演武、沖縄県からは読谷まつり、南大東村豊年祭など、トータルで約40の祭りが熊本に一挙に集まります。2016年に発生した熊本地震からの復興が進んでいる熊本を国内外に強く印象づける、絢爛豪華な2日間になることが期待されています。会場となる熊本市中心部では 、朝から夕方まで次々と各地の祭りが繰り広げられるので、熊本の街は熱気を帯びる ことでしょう。
山田次長は「2017年5月に、ユネスコ無形文化遺産に登録された九州の5つの祭りを集めたイベント『祭 WITH THE KYUSHU』が、福岡市役所前で開催されました。その際にも“九州の山・鉾・屋台特別巡行”を行い、勇壮かつ幻想的な祭りの素晴らしさを披露してくれましたが、今回の熊本への集結はそれ以上の規模で展開されることになっていますので、さらに豪華に盛り上がることでしょう。私自身も楽しみにしています」と語ってくれました。
熊本で行われる『九州・山口の祭り 熊本に集結』の開催とあわせて九州・山口の観光物産展『九州・火の国元気まつり 』も九州商工会議所連合会・熊本県商工会議所連合会の主催で、開催されます。こちらは“肉・麺料理”をテーマに九州と山口、沖縄から地域を代表するグルメとお酒が、熊本市内に大集合します。
祭りが周遊を促進する旅行コンテンツに~使命その 2~
外国人観光客の周遊促進とリピーター化を図るために、もう一つの柱として、9月20日からRWC2019決勝戦翌日の11月3日の期間に、九州・山口・沖縄地域で開催される秋祭りを紹介するサイト「九州・山口地域の祭りめぐり」も開設されます。こちらのサイトには、各県からエントリーされた50以上の祭りが掲載されていて、インバウンド客誘致に向けた強力なプロモーションツールとなることが期待されています。
日本語:https://matsuri.welcomekyushu.jp/
英 語:https://matsuri.welcomekyushu.com/
コンテンツとして仕上げるには“思い”が大切
事務局の山田次長は「祭りには様々なタイプがあり、どこまでを祭りというか定義は難しいものの、一説には祭りは全国で40万あるともいわれています。しかし、外国人旅行者が参加できる旅行コンテンツに仕上げていくには、地元での英語による受入態勢や、“外国人に来てもらいたい”という思い、“環境を整えたい”という意思が必要です。それがあって初めてその活動は持続的・自律的なものになると思います。そうした地域に、外国人が観覧するだけでなく、参加や体験ができるメニューの整備をお願いしています。そのメニューを生かし、着地型体験商品として販売ができる体制構築を目指しています」と語ってくれました。
実行委員会 では今後、祭りを商品化していくため、旅行会社をはじめ、個人旅行者向けの体験モノを扱う旅行予約サイトPeatix (ピーティックス)やVoyagin(ボヤジン)などでも販売していく予定にしているそうです。
「九州・山口・沖縄の祭りを目指して、世界中から旅行者が集まる、リピートする」という動きが創出できるか。地元からは、“祭り”をブランド化していく流れを来年度以降も継続していきたいという声もすでに出ており、この秋が試金石となります。