福岡市から高速船で1時間の長崎県・壱岐市は美しい海や自然、グルメ、温泉などで知られるリゾートアイランド。観光行政の企画・振興の実務研修として福岡市に職員を派遣しているが、その連携から訪日外国人旅行者が倍増しているという。1つの島がインバウンドで覚醒していく軌跡をたどってみたい。
今回のポイント
1:福岡市観光部局へ壱岐市職員を派遣し、連携してシティ&リゾートのプロモーション
2:台湾の大手旅行代理店3社や香港でのウェディングフォトツアーなど旅行商品造成に成功
海をメインにした自然と古代からの史跡を有する壱岐は、毎年55万人の観光客を集めている。
長崎空港から飛行機で約30分だが、福岡・博多港から高速船で約1時間10分、カーフェリーで約2時間10分と福岡からのアクセスが便利だ。平成25年の壱岐への乗降客数全体704,020人中、空路は約4%の28,075人。壱岐へは福岡を経由していくのが一般的だ。ファミリーや若者、修学旅行などが主な客層で、2012年の外国人旅行者は90人。同年時点の観光振興計画では「インバウンドは今後研究する」と判断していたほど、当時は海外からの市場を視野にはいれていなかった。
壱岐市は2005年から毎年1人、福岡市の観光部局に職員を派遣していたが、2013年に、福岡市の海外プロモーション事業の中でそのポテンシャルと重要性に気づく。
中国や台湾などの旅行会社やメディアに、壱岐の話題や写真をみせると非常に反応がよく、「行ってみたい」との声ばかり。ショッピングやグルメの「福岡」とビーチリゾートの「壱岐」のセットで招聘事業を行った。
2013年は中国の有名週刊誌「外灘画報」とタイアップ。壱岐、福岡のさまざまなシーンを背景にモデルたちが楽しむ姿を撮影。HPやウェイボーなどで拡散したほか、参加俳優やモデルたちのSNSの影響も大きかった。付随してテレビでの特集も6本、雑誌や新聞で10社も取り上げられた。
台湾でもテレビタイアップ、雑誌掲載、パワーブロガーによる発信で、旅行先としての魅力発信を行った。そのかいあってか外国人旅行者は330人に急伸、前年の3倍以上である。さらに2014年11月までの途中集計では、外国人旅行者は466人に達している。
その結果を受け、2014年を「インバウンド元年」と称して、本格的に取り組みをスタートし、まずはパッケージ商品の造成に着手した。
2014年11月には、台北旅行博(ITF)で台湾の大手旅行会社3社(ライオントラベル、五福旅行社など)に福岡とセットの旅行商品を造成して販売。香港では香港の撮影会社と組んで、結婚式の前撮りをするウェディングフォトツアーを販売。ウェディングエキスポや結婚情報誌で撮影風景を紹介してPRに努めた。
しかし、「壱岐」という島を旅行商品として組み入れることに成功したが、課題もみえてきた。福岡との組み合わせ商品とはいえ、まだまだ知名度がないため、最少催行人数に満たず、催行できない日程もあるという。
「PRや旅行商品を作ったことでやっと(インバウンドの)入り口にたてたというところだと思います。知名度は一足飛びにはあがらない。プロモーションを地道に行いながら、受入環境を整えていく。離島でのインバウンド観光振興のモデルケースになりたいと考えています」と壱岐市職員・篠原氏。
外国人向けには1人3000円の補助も行っており、旅行代理店とのパートナーシップも深まっているところだ。観光連盟には外国語ができる職員を配置し、宿や施設への予約をワンストップでおこなっている。島民の意識も前向きで、おもてなしセミナーや英会話講座に参加する人も多いという。
個人旅行者が利用しやすい島内周遊の交通機関不足など、まだまだ課題はたくさんあるが、人口3万人の離島でもインバウンドの可能性が大きいことを教えてくれる。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/