事例紹介

山里を韓国人旅行者がトレッキング!「九州オルレ」〜九州観光推進機構

九州地方知事会と九州の経済団体からなる九州地域戦略会議から端を発し、「九州はひとつ」を掲げ、官民共同の組織として2005年に設立された九州観光推進機構。
韓国の「済州オルレ」と提携し、2012年から始めた「九州オルレ」は、なんと4万人を超える韓国人旅行者を集めている。成功要因を探ってみよう。

今回のポイント[事例紹介:九州観光推進機構]

韓国人目線にたった地域資源のブランド化、クオリティ管理
広域連携による市場目線にたった施策

今まで日本人、地元住民にも観光地と思われていなかった田舎の路を、韓国人旅行者が風景を楽しみながら歩いていく。
「オルレ」とは済州島の方言で「家に帰る細い道」という意味。カンセと呼ばれる標識やリボン、矢印などをたどりながら、老若男女誰でも歩くことができる道を、自分で自由に歩くことができる。2012年2月のスタートから2014年3月までの訪問者数は約5.7万人! 韓国人が約4.1万人(日本人1.6万人)と集客に成功している(コースのある市町で構成する九州オルレ認定地域協議会と九州観光推進機構が集計した人数)。

九州オルレ http://www.welcomekyushu.jp/kyushuolle/?mode=about

その成功要因は「韓国人目線にたったコース設定、ブランド管理」にある。

2014年にリリースした海外向けに温泉をメインにしたロゴマーク。「九州ブランドイメージ」発信はこれから

2014年にリリースした海外向けに温泉をメインにしたロゴマーク。「九州ブランドイメージ」発信はこれから

九州への訪日外国人の国籍別割合は、韓国からが60~70%を占める(※図1)。それゆえ、九州は韓国向けに有効な施策を打ち、旅行者数、満足度をのばすことが肝要となる。

図1

図1

韓国マーケットには、当初「温泉」や「ゴルフ」をメインの素材とした結果、旅行会社、旅行者にとってはよく知られるところとなった。さらに2010年頃から「トレッキング」や「登山」を中心としたプロモーションを行ってきた。
九州観光推進機構は、韓国で人気を博していた「済州オルレ」に注目。2011年5月に「済州オルレ」の関係者を九州に招聘、可能性を探った。

「済州オルレ」には、九州以外にもアプローチがあったそうだ。しかし、自然のままの風景が多く残り、韓国と以前から交流が多く、韓国人に海外旅行という意識があまりない九州でオルレを展開することになった。同8月に「社団法人済州オルレ」との業務協定を締結。2012年3月に第一次コース4コースを設定し、2014年4月には全部で12コースが完成した。これらコース設定は、自治体が応募すれば認定されるわけではなく、済州オルレスタッフとともに厳密に審査されている。

日本人も行かなかった山間や海岸の小道にたくさんの韓国人旅行者が訪れ、地元の住民がトイレを提供、韓国語であいさつ、手を振るなどのおもてなしが行われている。観光案内所やレストランができるなど新たな賑わいや雇用も創出。何より地元住民が地域の良さを再認識して誇りを持ち、観光促進の機運が高まったことも評価される。

「広域連携」といっても、連携内容が形骸化したり、前例のある事業を繰り返す事業体も少なくない中、九州観光推進機構は本気の覚悟をもってスタートしている。
九州観光推進機構は、九州地方知事会と九州の経済団体からなる『九州地域戦略会議』にて「九州はひとつ」の理念のもとまとめられた「第一次九州観光戦略」を展開する実行組織として2005年4月に設立された。つまり、”九州観光戦略を中核的に展開する、官民共同の常設の実行組織”として発足した。

この間、海外からの訪日外国人数は、2004年の56.4万人から2013年の125.6万人(クルーズ船などによる「寄港地上陸」を含む)と大幅に増加。これには機構のプロモーションが大きく貢献している。海外への旅行博出展や旅行関係者向けセミナーなどを行うことで認知度が向上。2011年の東日本大震災の際にも、風評被害に対し一体となった情報発信を迅速に行うことができた。

「九州オルレ」に関しても、済州オルレとの連携でブロガーやメディア招待、ウォーキングコミュニティ招待などきめ細やかなプロモーションが実施され、韓国・日本で100回以上の報道がなされている。

また、これら観光素材やモデルコースは、自治体単位よりも対象国のニーズにあった広域で造成、訴求することで旅行商品造成につながりやすく、メディアの注目も集める。

2014年2月には九州オルレの認定を受けている12のコースの自治体などの11の地域が連携して「九州オルレ認定地域協議会」を発足。オルレグッズの協同購入やインターネットでの情報発信、イベントなどを開催し、まさに広域で集客に取り組んでいる。

プロモーションだけではなく、「九州アジア観光アイランド総合特区」認定による九州地域での特区ガイドなど受入環境改善の取り組みも効果をあげている。とはいえ、「九州」は海外ではまだまだ認知度が低く、課題も多い。

そこで、2014年には九州ブランドイメージ戦略に基づいて、九州観光ロゴマークとキャッチコピーを制定。日本一の源泉数と湧出量を誇る温泉をモチーフに、海や山の自然を織り交ぜ、「Relax & Rejyce ONSEN ISLAND KYUSHU」で九州一体となったアピールをはかる。東アジアだけでなく、ASEAN、ヨーロッパなど広がるマーケットに対して積極的に仕掛けている。

武雄コースの竹林を歩く

武雄コースの竹林を歩く

リボンを道しるべとして木々などに結びつける

リボンを道しるべとして木々などに結びつける

基本的に個人で歩くので矢印などを頼りに進む

基本的に個人で歩くので矢印などを頼りに進む

カンセが目印として方向を示している

カンセが目印として方向を示している


取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 九州・沖縄

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