事例紹介

ちびまる子ちゃんランドが、海外のアニメ人気で入場者増!

アニメの舞台を訪ねる外国人観光客が増えている。静岡市は、その走りともいうべき「ちびまる子ちゃんランド」を、地域をあげて盛り上げている。中国人客を中心に集客に成功している要因に迫った。

ちびまる子ちゃんランドはアニメの世界を再現した空間だ

ちびまる子ちゃんランドはアニメの世界を再現した空間だ

ポイント:

・アニメの舞台に作った立ち寄りスポットが、国内外から旅行客が訪れる観光名所になっている。
・飲食店等との複合施設にしたことで、アニメ関連施設以外で食事や買い物を楽しむことができる。

■アニメの舞台を訪ねる外国人が増えている

海外での日本のアニメ人気が続いている。そのアニメに登場する舞台を「聖地」と呼び、訪ねて来る外国人旅行者も年々増えている。
2016年9月には、一般社団法人アニメツーリズム協会が設立され、観光立国と日本の地域活性化を促進するため「アニメ聖地」を88カ所選定・組織化するという。今後、「アニメ」が多くの地域でもインバウンドの重要なコンテンツになっていくだろう。

そのような数多くあるアニメの舞台で、成功している地域の1つが静岡市だ。ここが舞台のアニメといえば、「ちびまる子ちゃん」が挙げられる。
日本でのアニメ放映は1990年にスタートして26年間続いており、中国や台湾など、海外でも放映され、人気を集めている。
そして昨今、静岡市内の清水区にある、「ちびまる子ちゃんランド」というちびまる子ちゃんに関するミュージアムが、外国人観光客からも人気となっている。ここは、1999年10月にエスパルスドリームプラザという商業施設内に開設されたもので、特に、最近は外国人の比率が伸びている。

アニメキャラクターたちも館内に登場して盛り上げる

アニメキャラクターたちも館内に登場して盛り上げる

ちなみに、ちびまる子ちゃんランドで、特に外国人の人気を集めているのは、写真撮影だ。背景もアニメにそっくりなシーンで、主人公の自宅や小学校の教室、近所の街並みなどが再現されている。そこで登場キャラクターの衣装を着て、写真を撮ることができるのだ。まるで、アニメの世界に紛れ込んだような写真に仕上がる。

昭和40年代のちびまる子ちゃんの部屋を再現した

昭和40年代のちびまる子ちゃんの部屋を再現した

 

■中国人観光客が激増するちびまる子ちゃんランド

同施設の担当者によると、外国人観光客の来館者数は、2014年は1万6500人だったが、2015年には3万5000人と飛躍的に伸びている。2015年の入場者数は、全体が約12万人だったことから、外国人シェアはその29%にものぼる。内訳は、80%が中国本土から、15%が台湾、残りの5%が東南アジアの国々だ。中国人は7、8月に訪れる人が特に多く、世代としてもファミリーから年配まで幅広いのが特徴だ。

もちろん、ただアニメが放映されただけで増えたわけではない。
その要因をちびまる子ちゃんランドの担当者に伺うと、理由は2つあると言う。それは、「ゴールデンルート(※1)の立地」と「静岡空港の影響」だ。そのアドバンテージを磨いてきたのだ。

※1:成田空港または羽田空港インの関空アウト、もしくはその逆のコースをバスで東名高速道路を使って、その途中の観光をするコース。訪日が初めての観光客に高い人気。

さて、1つ目の「ゴールデンルートの立地」について、中国の団体旅行を手配するランドオペレーターのジェイテックの担当者は以下の2点を指摘する。

1点目は、東京からの程よい距離だ。バス移動において、名古屋方面から東京を目的地にした場合、または東京を出発した場合のいずれも、昼食スポットにちょうど良い。
ちびまる子ちゃんランドが入るエスパルスドリームプラザは、寿司レストラン街があり、昼食にうってつけだ。まぐろの解体ショーを行うこともあり、エンターテインメント性も高い。また、ここでしか買えない加工食品も人気がある。

館内のすし横丁はレトロな雰囲気で外国人旅行者に人気だ

館内のすし横丁はレトロな雰囲気で外国人旅行者に人気だ

2点目は、清水港にすぐ近い立地だ。
西伊豆や堂ヶ島への船も出ているので、バスからの乗継時にこの界隈を経由する。その際に自由時間を作りやすいのだという。

つまり、休憩地点に、小さな観光施設があるのが、ツアーに組み込みたくなる理由なのだろう。また団体バスツアーは中国人観光客のシェアが高く、中国人入場者数を押し上げている。

そして中国人観光客増加の2つ目の要因が、「静岡空港の影響」だ。

以前は、中国、台湾の入場者数はほぼ五分五分だったが、2015年に中国と静岡空港を結ぶ定期便が増えたこともあり、中国人観光客が激増した。それまで上海、台北、ソウルまでの週13便しか定期便のなかった国際線に、中国13都市から一気に新規就航が相次いだ。一時最大16路線週53便になり、わずか1年で静岡空港の国際線の便数は4倍になったのだ。(※1)

ゴールデンルート上にあり、成田空港、羽田空港のフライト枠がひっ迫しているなか、第3の国際空港として白羽の矢が当たったのだろう。

※1:2016年11月現在は、その後、撤退が相次ぎ、中国からは5路線週22便で落ち着いている。

ちびまる子ちゃんランドは、中国本土へのプロモーションやランドオペレーターへの営業を積極的にやっているわけではない。しかし、主に上で述べた2つの理由から、今では外国人観光客の8割を中国人観光客が占めるようになったのだ。

エスパルスドリームプラザの複合施設にちびまる子ちゃんランドがある

エスパルスドリームプラザの複合施設にちびまる子ちゃんランドがある

■地域のキャラクターとして育っている

静岡市は、ちびまる子ちゃんの故郷としてのシティープロモーションに積極的だ。静岡市は、ちびまる子ちゃんの作者さくらももこさんとライセンス契約をしている。
静岡駅にはちびまる子ちゃんのフラッグが連なる。新静岡駅~新清水駅間を結ぶ11kmの静岡鉄道では、2015年7月からちびまる子ちゃんのラッピング電車が走っている。
新幹線で静岡駅に降りた場合、JR東海道線に乗り継いで清水に行く方が便利だが、わざわざラッピング列車に乗るために、新静岡駅まで足を延ばす中国、台湾の観光客も少なくないという。

地域をあげて地元のキャラクターを押し出し、静岡は、ちびまる子ちゃんの聖地という認知度が高まっている。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 中部・近畿

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