事例紹介

秋田犬(いぬ)ツーリズムというDMOができ、新しい挑戦がスタート

地域をまたいだ観光戦略を、新しく誕生したDMOが担う。「秋田犬ツーリズム」はその一つだ。地域の大きな課題として、人口減少問題があり、それに対抗すべく交流人口を増やすことを目的に観光に力を入れ始めた。連携と価値の向上をテーマに、どんな新しい道を進むのか、これから始まるその戦略を追った。

秋田犬とのふれあいを目指している

秋田犬とのふれあいを目指している

ポイント;

・地域が連携したDMOが中心となって、交流人口の増加に向けた戦略を展開
・台湾マーケットの集客を初年度の最優先とする
・世界に通用する秋田犬をキーワードとしてフロントに

■地域が連携したDMO、秋田犬ツーリズムが発足!

一般社団法人秋田犬ツーリズムという一風変った名前のDMO(※1)が、秋田県大館市、北秋田市、小坂町により、2016年4月に設立された(同年6月には上小阿仁村も参画)。

※1:DMOとは、Destination Marketing Organizationの略。観光庁は、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役と定義している。

ちなみに、秋田犬ツーリズムの名前の由来だが、「秋田犬」が国際的に通用するキーワードであるからだ。秋田犬は大館市が発祥で、海外でも認知度が高い。実際に、Googleでの検索数も多いのだ。この「秋田犬」をフックに地域の観光資源のPRを目指す、という意味からこの名前がつけられた。

このDMOの設立は、2015年の秋に大館市の観光課での検討が始まったことに由来する。その際に出たのは、いくつもの観光資源が市内にあるが、キラーコンテンツに乏しいという認識だ。そこで、近隣と連携して弱点を補い合えば、PRできるスポットが多くなり、認知度向上の底上げにつながるのではないかと考えた。
そして2015年12月、同市観光課の課長が、近隣自治体を訪ね、DMO参加を訴えたのだ。

同じ悩みを抱いている自治体とはすぐに意気投合し、 また、地元の銀行もすぐに連携に合意した。地元の経済を活性化させることが銀行にとっても重要なミッションだからだ。

地域が人口減少という課題を抱える昨今、観光を盛り上げることで、交流人口を増やし、域外から人を呼び込む。
DMOは、そのための旗振り役として期待されている。行政区域を越えて、多様化する観光客のニーズに応えるのが目的だ。

事業運営は、2016年度から2019年度までは国からの補助金(2016度は約8,000万円の交付金)を主な財源として、「web・動画コンテンツによる積極的なデジタルマーケティング」と「訪日外国人の受入体制の充実(おもてなし)」を戦略の両輪として進める。

一つ目の柱であるデジタルマーケティングとして、具体的にはPR動画、YouTube広告の掲載、webによる旅行予約システム構築を進める。ただし、現在はまだ準備中とのことで、フェイスブックページが先行してオープンしている。

二つめの柱である受入体制整備として、ANAビジネスソリューションの講師を迎え「心でつながるインバウンド対応」をテーマに2日間にわたりセミナーが開催された。
宿泊、飲食、交通など多様な業種の方々が参加し、2日間合わせて約40名が受講した。

おもてなし研修会で講師の説明に熱心に聞き入る

おもてなし研修会で講師の説明に熱心に聞き入る

■秋田犬に会うことのできる機会創出へ!

またDMOの名前の由来となった「秋田犬」は、大館市が発祥の地ではあるが、市内ではその数が減ってしまっているのが現状だ。そこで、地元では秋田犬に会える場所づくりプロジェクトを計画している。秋田犬ツーリズムでは、その情報発信をしていく予定だ。

例えば、大館市では、「ハチ公の駅(仮称)」という名前で秋田犬と触れ合える場所づくりを計画している。秋田県庁では、「秋田犬ふれあいライン」という、実際に秋田犬に会える場所をマッピングしてルート化していく。

しかし、残念ながら、現状ではそれほど秋田犬の数が域内に多くないので、いかにスポットを整備するかも課題だ。そこで2016年9月から大館市に地域おこし協力隊が入り、秋田犬を飼いながら、触れ合いの場所の創出や秋田犬の情報発信の任務を負うことになったという。

■今後の展開として、台湾へのプロモーションと枝豆の6次産業化に力を入れていく!

秋田犬ツーリズムでは、初年度は台湾マーケットを主要ターゲットとする方針だと言う。台湾は訪日リピーター客が多いのが理由で、このリピーター客を狙っていく。
函館・仙台空港に直行便があることもチャンスだ。この2つを結ぶ観光ルートに秋田県北部を加えることを目指す。周遊コースや域内の自然、文化工芸、食、娯楽等の観光コースをパッケージ化して魅力ある商品とする。さらに、地元旅行業者を中心に着地型商品も開発していく。

台湾へのトップセールスで秋田北部をプレゼンする

台湾へのトップセールスで秋田北部をプレゼンする

一方で、稼ぐ力を高めるために、地域産品の磨き上げを行っていく予定だ。
その一つが、6次産業化を推進していくことだ。

まずは2017年3月をメドに、枝豆の高付加価値化を目指している。というのも、このエリアの枝豆は、日本一の生産量を誇り、近年、枝豆が欧米で健康食品として人気となっているからだ。今後のビジネスチャンスのポテンシャルが高いとも言えるだろう。これをキラーコンテンツに育てたいと、担当者は語る。

枝豆をテーマに商品開発が進む

枝豆をテーマに商品開発が進む

秋田犬ツーリズムは、観光地としての整備、プロモーション、さらに地元産品を連動させ、地域の価値向上を目指す。地域連携を推進する取り組み、情報発信はもちろんだが、旅行業、物販など、既存の行政の枠組みでは成しえなかったことへの挑戦が始まった。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 北海道・東北

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