事例紹介

徳島秘境の地でインバウンドに取り組む! ~元CIR張さんの挑戦~

 2019年4月から、徳島県のCIR(国際交流員)を卒業し、同県三好市で初めて、外国人の地域おこし協力隊として勤務する張楠さん。現在、中国をはじめ海外から訪日客が押し寄せる三好市で、インバウンド観光や地域活性化に取り組んでおり、その内容について取材しました。

 

訪日客を増やすことが「ゴール」ではない

■「日本三大秘境」と知られ、標高2千メートルの山々と深い谷に囲まれる祖谷。交通アクセスも良いとは言えない場所に、台湾・中国・欧米豪から多くの訪日客がいらっしゃいます。何が彼らを魅了しているのでしょうか。

 交通アクセスに関しては、そもそも訪日旅行者の滞在日数が長いので、目的地が遠くても気にしない傾向はあります。また、高松空港からの所要時間は約1時間という強みもあります。

 中国に関して言えば、中国内の観光地はとにかく人が多い。そういう人達にとっては、東京や大阪のような大都会ではなく、人のいない場所が新鮮で魅力的に映るのではないでしょうか。

 

 【落合集落】

 

 また、欧米豪については、奧祖谷に古民家をプロデュースしているアレックス・カーさん(東洋文化研究家、著述家)の影響が大きいと感じています。そして、これはみなさん共通なのですが、日本の昔ながらの文化や食、暮らしを知りたいと思って来ている方が多いです。

 三好市の観光客は、主に、「大歩危(おおぼけ)・祖谷」と「奧祖谷」の2つに集中しています。「大歩危(おおぼけ)・祖谷」は大型バスで団体ツアー客が多く、時間が限られているので、景色を楽しんですぐに次の目的地へ。一方、「奧祖谷」は大型バスが通れないエリアなので、レンタカーで来るFIT(個人客)が多く、温泉旅館や古民家等に宿泊しながら、地域の方と交流を楽しんでいます。

 あくまでも、インバウンドで人を呼び込むのは、「目的」ではなく「手段」だと思います。一概に人が多く来ればいいというわけではありません。そういった意味で、「通過型」より「滞在型」の方が、地域への経済効果は大きいと思っております。

 

【奧祖谷の二重かずら橋】

 

■   張さん、オススメの観光スポットを教えてください。

 私は、奧祖谷の雰囲気が好きです。特にその中でも「名頃かかしの里」はオススメで、外国人にも大変人気があります。正直、最初は写真を見ただけでは、なぜこの里が人気なのか分かりませんでした。ただ、実際に行くと、1人1人のかかしの中に、人間と同様ストーリーがあり、いつしか、かかしに魅了されている自分がいました。かかしの製作者である綾野さんや住民との交流はもちろんですが、無言のかかしたちと心の対話ができるのも、また味わい深いものです。また、観光だけでなく魅力ある郷土料理もおすすめです。お米の代わりにそばを使った「そば米雑炊」、「ひらら焼き」のほか、外国人の方に人気の「ジビエ料理」も。私自身は、熱した石をホットプレートのようにして、味噌で土手を作り、そこでアメゴや野菜を入れて香ばしく焼く「ひらら焼き」が好きです。石を準備するところから料理が始まるので、とても時間がかかりますが、三好でしか食べることのできない貴重なものです。PRしていきたいと思っています。

 

【ひらら焼きを作る張氏(写真左)】

 

【名頃かかしの里】

 

■   現在の主な仕事内容と、今後の課題について教えてください。

 仕事としては、パンフレットを中国語へ翻訳、主に中国からのファムツアーや医療ツーリズムのアテンドなど。旅行博や商談会にも参加しています。与えられた仕事をこなすことが多かったCIR時代に比べ、地域おこし協力隊の仕事は、ある程度自分に裁量があり、自分で地域の課題を見つけて解決するために行動します。例えば、妖怪伝説を紹介している「妖怪屋敷」に行った際に、館内の説明文が日本語と英語しか表示がありませんでした。そこは、中国人の観光客も多い場所なので、責任者の方に「中国語に翻訳しましょうか」と提案したら、すぐに受け入れてくださり、早速中国語版を作りました。行動に移すまでのスピード感が強みだと思います。

 課題について、観光業は政治や災害など様々な影響を受けやすい。インバウンドを誘致するにあたっては、季節が反対のオーストラリアなどの南半球の国や、FITが多い欧米など、ある程度性質の異なる複数の国々をターゲットに入れるなどして、リスクを分散することが大事だと思っております。                 

 

<今回取材した張さんについて~地域おこし協力隊になったきっかけは?~>

もともと、インバウンドに興味があったこと、また、CIRから地域おこし協力隊に転身した先輩のお話を聞いたことがあり、そこで選択肢の1つとして考えておりました。

 そのような中、徳島県三好市が、インバウンド関係の業務で地域おこし協力隊を募集しているのを見て、これまでの徳島県での勤務経験が生かせると思い、応募しました。 

2019年4月から地域おこし協力隊として三好市役所での勤務がはじまり、ようやく地域の方とも顔見知りになってきました。勤務外でも、地域のイベントに積極的に参加して皆さんと交流を深めています。

 また、徳島県でCIRとして働いていた頃から、阿波踊りを続けており、三好市に来ても阿波踊りを通じたつながりが生まれており、嬉しい限りです。

【徳島阿波おどり総踊りで、無双連の踊り子として参加する張氏(写真下中央)】

 

 

                                        

(聞き手:経済交流課 主査 新野)

                                   

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