事例紹介

地元の魅力を再発見!~持続可能な観光地づくりを目指して~

 地域の魅力を再発見し、ユニークなツアー造成や新規事業で注目されるDMO、株式会社インアウトバウンド仙台・松島。地域の魅力をツアーに昇華させるコツと持続可能な観光地づくりへの展望を代表取締役の西谷 雷佐(にしや らいすけ)氏に伺いました。

 

株式会社インアウトバウンド仙台・松島代表取締役 西谷氏

 

1 株式会社インアウトバウンド仙台・松島とは

■御社の設立経緯を教えてください。

 僕自身は2012年から青森県弘前市でたびすけ合同会社西谷という着地型旅行会社をやっています。

 しかし、旅行者は青森以外の観光地も多く回っていることがわかってきて、他の地域とも連携する必要性を感じるようになりました。それで広く東北地方の他のDMO等と連携していく中で、ご縁があって同じ志をもった仲間が集まり、2018年1月に弊社を設立しました。

 

 

 

2 他にはないツアーの作り方、そして新たなチャレンジ「竈コイン」

■ユニークなツアー造成をされていますが、どのように思いつくのですか。

 たとえば、たびすけでは弘前公園で3万円の花見ツアーをやっています。弘前公園の一番いい場所にござをひいて椅子を用意し、忍者が地元の料理でおもてなしをするツアーです。

以前、他県から弘前市に花見に来るお客さんがどれくらいお金を使っているか調べたことがあるんです。そうしたら、なんと平均600円だった。観光客入込数は年々増えているのに、地元に全然利益が出ていない。地元にお金を落とすポイントが必要だと強く思いました。

 弘前の人にとって、長い冬を乗り越えてやっと春を迎えたことを喜ぶのは日常の一部なんです。でも、旅行者にとって旅行している間はハレの日。旅行中であれば、せっかくだからと多少高くてもいいものやそこでしか味わえないものを食べたいと思うもの。

 だからそういう方向けに、地元の人の日常を切り取ってツアーにしています。

地元の人にとっては当たり前すぎて魅力だとは思わないようなことも、外から来た人の目には新鮮に映ることがたくさんあります。何気ない日常に目を向けてみてください。

 

弘前公園の桜

 

■2019年3月から、宮城県塩竈市内で使える地域通貨、竈コイン(ガマコイン)の実証実験が始まったと聞きました。

 竈コインは専用のスマートフォンアプリを使って支払い・チャージができる地域通貨です。通常外貨の両替は紙幣で行いますが、この竈コインならコインでも両替できます。

 現在は仙台国際空港、JR本塩釜駅、JR仙台駅に両替用の端末が設置されています。

たんすに眠っている旅行で余ったコインをまとめて竈コインに変換すると、塩竈市で使えるようになり、さらに塩竈市という地域の経済に循環するようになる。

 最近日本でもやっと持続可能な(サステナブルな)観光地づくりというのが意識されるようになってきました。世界では割とスタンダードで、サステナブルであることを重視して宿やサービスを選ぶ人も一定数います。そういう人に響くサービスにしたいと思っています。

 

竈コインがチャージできるポケットチェンジ(緑色の機械)

 

3 地元自治体との関係性

■自治体との連携状況はいかがですか?

 最初はとても大変でした。観光協会の方には仕事を取られるんじゃないかと警戒心を持たれたこともありました。でも実際は相互に補完し合う関係性ですよね。

 設立して最初の一年は、地域の観光協会や自治体に何度も足を運んでそのことを説明しました。地道に対話を重ねることで、今は自治体の方からも信頼していただいています。

 「市町村がわかってくれなくて事業がうまくいかない」というDMOは、実は説明が足らないのだと思います。わかってくれるまで膝を突き合わせて話し合うことが大事。

 

■自治体の方に向けてメッセージをいただけますか。

 公務員の方は3年程度で異動されてしまう方が非常に多いですよね。でもせっかく観光事業に取り組むのであれば、ぜひ5年10年と、異動せずに取り組んでほしいですね。観光は地域との関係性が大事ですから。

 

4 今後の展望

■株式会社インアウトバウンド仙台・松島の今後の展望を聞かせてください。

 まずは、地域の事業者の方と一緒にその地域の日常や資源を活用したツアーを作っていくこと。

 僕がツアー造成で大事にしているのは、地域の人に適切な対価を払うことです。地元の人に無理をさせて観光客を呼んでは地域が疲弊して継続できなくなる。それだけは避けないといけません。

 二つ目は、ツアーで提供する食材をできるだけ地元産のものにすること。

 全部は無理でも、地域の方に協力してもらってできるだけその地域の野菜、肉、魚を使えるように調整していきたいです。その結果コストが高くなっても、なぜ高くなるかを説明できれば、それに共感した人は納得してお金を払ってくれます。

 三つ目は、これらのツアーを案内するプロのガイドを育成すること。

 今はいいガイドがいるかどうかでそこへ行くか決める時代ですから。

 ただ多言語対応できるだけではだめです。安全管理、行程管理(時間)、多様性への理解、なんとかお客さんの要望に応えようとするホスピタリティ。ガイドには様々な力が要求されます。

 将来的には、ガイドを専業にする人が現れて欲しいし、子供たちにとってガイドが憧れの職業になってほしいです。それが観光産業の熟成につながると思っています。

 

世界に向けて東北を発信!

 

株式会社インアウトバウンド仙台・松島

https://www.inoutbound.co.jp/

 

 

 

経済交流課 大宮)

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