事例紹介

鳥取県は韓国人観光客に魅力的?(その2) ~PR活動とSNSでの発信でわかる韓国人観光客の好み~

 鳥取県は韓国との持続的な交流を通し、正確なニーズを把握しPRを行うことで、認知度を上げています。最近の鳥取県のPR手法と取材を通して当地で確認できた韓国インバウンド情報をご紹介します。

 

韓国での鳥取県PR活動の様子

 

 ■交流も大事に!鳥取県の様々なPR手法

 鳥取県は他県と比べ、幅広いコンテンツを使って韓国にPR活動を行っています。

2018年に話題となった取組は、K-POPスターが鳥取県で撮影したテレビ番組です。以前から鳥取県庁と交流している韓国の事業者を通じて、韓国のエンターテイメント会社を紹介してもらい、撮影が実現したそうです。この番組を通して、鳥取県は韓国のK-POPファンの知名度を上げ、実際に鳥取県を訪れたファンも多いそうです。

 

                                             

                                   韓国・日本で販売されているK-POPスターの鳥取旅ミニ・フォトブック

 

 このテレビ番組の撮影を紹介してもらうことができた背景には、県の持続的で活発な交流を通じた情報収集の努力があります。韓国インバウンドの県担当者は、月に1~2回は韓国に行き、韓国側の担当者とお酒も交えての交流を深めています。韓国人とお酒の場を設けることは、関係を作っていく上で非常に大事です。韓国でのお酒はコミュニケーションや人付き合いの手段であり、一緒に酒を酌み交わすことで、その組織の構成員として認められます。前篇でも触れたAIRSEOULからの減便提案についても、これまでの交流が功を奏し、週6便への増便という十分な結果を得ることができたそうです。

 また、県ではクレアのJETプログラムを利用した韓国人国際交流員(CIR)等韓国人職員を4人採用し、また、韓国国内の事務を現地在住の元CIR2人に委託しています。彼らを通して、韓国国内の情報をより早く、より詳しく入手することができているそうです。

 これまでの取組としては、2007年から、日本の自治体で初となる韓国のテレビショッピングでの旅行商品販売を実施しています。現在は月に1回放送して、2,000~3,000件の問い合わせがあり、約1,000人が来県しています。以前、テレビショッピングで販売した旅行商品の行程に入っていた夢みなとタワーは口コミで広がり、今でも韓国人旅行者が訪れています。

 2010年には、韓国のトップスターが出演したドラマのロケを鳥取県で行いました。県や地域の会社、住民がロケ支援委員会結成し、例年8月に行われる祭りをドラマの撮影のために時期をずらして開催するなど多大な協力をしました。地域の方にも参加してもらうことによって、地域経済に寄与しただけでなく、地域の活性化にも繋がりました。

 県の情報発信はSNSとネイバー(Naver)を活用しています。ネイバーは韓国で最も利用されている検索エンジンで韓国内の70~80%のシェアを持っており、アカウント数は約1,693万(2018年10月時点)となっています。韓国人は気になる商品や情報を検索する時はブログを検索して、意思決定の参考にします。ブロガーの中にはアクセス数が多く、影響力の高いパワーブロガー(インフルエンサー)がおり、パワーブロガーの活用は韓国での認知度を上げる有効な手段となっています。

 (鳥取県のネイバーブログ) https://blog.naver.com/tottori_pref 

 実際に現地で交流したり、テレビなどメディアを活用したり、SNSで情報を発信したりするなど、複数の手法で韓国に向けた誘客を行っています。

 

■小確幸を求めて、日本の地方でゆっくり過ごしたい韓国人観光客

 LCCが就航を開始して以来、増加した韓国人観光客の多くはリピーターとなり、定番の有名な観光地よりも閑散とした地方ならではの文化を味わいたいと思い始めています。また、2018年には、村上春樹氏の造語である“小確幸(小さいことでも人が確実に幸せを感じられることが大事)”が流行り、日常生活の一部として気軽に行ける近距離旅行が人気です。このような背景から、近くて手頃な値段で行ける日本の地方が人気の旅先になりました。例えば、佐賀県三瀬村では、農家民宿に韓国からの若者が訪れ、好きなビールの工場を見学するなど、自分の趣味に合わせて日本の地方を楽しんでいます。

 インターネットや口コミで情報を収集し、自分の興味に合わせた旅行プランを楽しみたいと思う韓国人リピーターの旅行スタイルは“小確幸”という今年の流行語に集約されています。“今の自分”が癒され、満たされたいと思う傾向が韓国人の中に強まっており、文房具や可愛い雑貨、ローカルの人との交流、自然を学びながら楽しむ登山やサイクリングといったエコツーリズム、温泉を経験するなど、日本の旅先で出会う小さくて素朴なモノに韓国人観光客は感動しています。

 取材日にツアーの引率で鳥取県を訪問していた韓国の個人旅行代理店の代表からは「今後、韓国ではエコツーリズムが人気になると思います。また、韓国にはペットが約1千万匹おり、ペットと海外旅行したいと思う人が増えていることから、フェリーに家族とペットが一緒に乗って、鳥取県の自然を満喫するツアーを組みたいと思っています。また、自然と癒しをテーマとした企業のインセンティブツアーもますます人気を得ると思います」という意見もいただきました。

 そのように、日本を頻繁に旅行し、ありきたりの観光スポットではなく、生活感溢れる地方で癒されたいと思う韓国人観光客が増えています。

 今回の取材を通して、韓国人観光客は日本の地方で、ローカル感を味わいながら、自分の趣味や関心分野を体験していることが分かりました。そのような韓国の流行をいち早く感じ取った鳥取県は韓国人が好みそうな登山ツアーやサイクリングコース、ゲゲゲの鬼太郎のストーリーを生かしたグルメ等を用意して、様々な手法で韓国に向けてPRし、韓国からのインバウンド観光客を呼び寄せています。

 韓国からのインバウンドに力を入れる自治体にとっては、地方のユニークな体験プログラムやグルメ等、その地域ならではのコンテンツが”今の自分“を満足させてくれる素材であると発信していくことが非常に大事になっていくと思います。

 

(経済交流課 キム)

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