事例紹介

国際協力の先に見据える経済面での繋がり ~北海道滝川市 クレア事業を活用したモンゴルとの交流の事例~

 

 北海道のほぼ中央、札幌市と旭川市の中間に位置する、人口約4万人の滝川市。同市では、自治体国際化協会(以下、クレア)の自治体職員協力交流事業(以下、LGOTP)注1を活用し、毎年モンゴルから研修員を受け入れています。研修先は市役所内のみならず、地元の民間企業でも研修を実施し、農業分野や建設分野の知識や技術を提供しています。予算や人員が限られる中で、自治体が国際協力に取り組むことは容易なことではありません。そういった中で、同市が国際協力に取り組んでいる理由は何なのでしょうか。今回、滝川市を訪れ、市役所、研修員、そして研修員を受け入れている企業の方にお話を伺いました。

 

 

滝川市は菜種栽培が盛んで、日本有数の作付面積を誇る

 

 

きっかけは白鵬関

 滝川市がモンゴルから研修員を受け入れるようになったのは、平成22年から3年間、同市の観光大使として活躍された第69代横綱白鵬関への恩返しとして、モンゴルへの支援を始めたことがきっかけでした。それ以降、モンゴル側のニーズや要望に応じて継続的に事業を実施してきており、今年度はモンゴルのウブルハンガイ県とトゥブ県から、農業分野4名と建設分野3名の計7名の研修員を受け入れました。なお、これまでの研修員受入人数は累計35名となっています。

 

 

LGOTPを通じて7名の研修員がモンゴルから来日した

 

 

研修では民間企業の力も

<農業分野での研修>

 世界的に見てもトマトに次いで消費量の多い野菜である玉ねぎ。実は、モンゴルに自生していた植物に起源があるそうです。モンゴルでも毎日のように食されていますが、現状ではロシアや中国からの輸入に頼っています。そこで、将来的にモンゴルの風土に合った品種を自分たちの手で栽培できるようになることで、ウブルハンガイ県の農業がより発展することを目指し、滝川市では農業普及員等の公務員や職業訓練校の教員を4名受け入れ、研修を行いました。

 

 今回の研修では、玉ねぎの品種改良を行っている株式会社植物育種研究所の協力のもと、玉ねぎの種子の採種方法、受粉から栽培の一連の流れ、食の安全や衛生面等について学びました。滝川市での約半年間に及ぶ研修を終え、帰国間近となったモンゴル研修員に話を伺うと、「モンゴルにはない技術を学ぶことができ、大変勉強になりました。自国に持ち帰りぜひ実践したいです。」「農業に関するノウハウ以外にも、時間を守る規律や、細かなことまで一生懸命頑張る日本人の姿勢も見習いたいと思いました。」と、充実した研修となったことが伺えました。

 

 

玉ねぎ栽培について学ぶ研修員

 

 

 

<建設分野での研修>

 建設分野では、建設技師の公務員や、職業訓練校の教員を3名研修員として受入れました。地元の建設協会の協力のもと、個人住宅・ホテル・道路・ダム・新幹線といった、様々な建設現場を視察したり、労働安全衛生や都市計画、入札制度等について研修を行いました。

 

 研修員は、「モンゴルで最も多い災害が洪水なので、ダムの工事現場の視察は特に勉強になりました。モンゴルは道路や橋も少ないので、もっと力を入れていかねばならないと気付かされました。」「工事を進めるには民間の力が必要です。モンゴルの建設協会で、今回学んだ内容をフィードバックしていきたいです。」と話してくれました。 

 

 

建設現場を視察する研修員

 

 

滝川市がLGOTP活用の先に見据える、外国人材の受入れ

 滝川市役所観光国際課、課長補佐の運上琢諭(うんじょうたくゆ)さんに、LGOTPを活用する利点について伺いました。

 滝川市の描くビジョンは、「研修を通じてモンゴルに日本の技術を持ち帰ってもらうことで、地方のインフラ整備の促進や高い水準の技術者が育成され、将来的に滝川で活躍する外国人材として受け入れていく」というものです。市内企業の多くは現在、ベトナムからの技能実習生を受け入れているそうですが、北海道内でも失踪者が発生する等の問題が発生しています。また、技能実習生は、賃金の高い都心部に流れてしまうことも多く、外国人材の確保は地方の課題でもあります。そこで、モンゴルとの交流を通じ、滝川の人や食べ物、環境の良さを伝え、両国の自治体間レベルで信頼関係を築くことで、技能実習生を誘致するとともに、失踪等の問題も防ぎたいと考えています。

 滝川市の建設業界は人手不足に悩んでいる一方で、ウブルハンガイ県では失業者が多いことが問題となっています。そこで、ウブルハンガイ県側は、人材を派遣することで、日本で仕事をしながら技術を持ち帰り、滝川市側は人材の確保に繋げるという、win-winな関係の構築を目指しています。研修員の派遣元であるモンゴルのウブルハンガイ県の知事も、相互にプラスとなるこの取り組みに大変前向きだそうです。

 

 

民間企業が研修員を受け入れるビジネス面でのプラス

 今回初めて研修員を受け入れた、植物育種研究所代表取締役の岡本大作さん。国際協力とはいえ、会社で開発した大事なノウハウを教えたり、人員を割いてまで研修員を受け入れているのはなぜなのでしょうか。率直に伺ってみました。

 「弊社は小さいので、自分たちの力だけで海外に出ていくことは難しいです。こういった国際協力の活動を通じて、現地の人々と共同で品種改良に取り組む等、モンゴルへの進出のきっかけとなることも期待しています。」と岡本さんは話してくれました。

 また、同じく研修員を受け入れた建設事業者からも「いい経験だった」という声が多く、技能実習生や海外からのインターンシップ生を受け入れた経験のない企業にとって、外国の文化や外国人に対する指導方法、コミュニケーション方法といった、受け入れのノウハウを学ぶよい機会となったようです。

 

 

座学の研修を行う植物育種研究所代表取締役の岡本さん(中央)

 

 

自治体が国際協力を進めるコツとは

 長年、モンゴルとの交流事業に携われてきた運上さんに、事業を継続していくためのポイントについて伺いました。

 「研修員の受け入れ事業では、LGOTPの活用のほかに、CIR注2に企画や言語面でサポートをしてもらい、モデル事業注3の助成金を活用して、事業のフォローアップも実施しました。様々な制度を複合的に活用していくと、効果的だと思います。また、LGOTPの活用により、交付税の措置がされるというのは自治体としては大変ありがたいです。自治体の負担もありますが、事業を通じてのメリットを考えれば、実施する意義があると思います。」

 「また、自治体単独での事業の場合、例えば予算が無くなった時にストップしてしまいますが、自治体、国際交流協会、民間事業者が協働で行う事業であれば継続もしやすいと思います。互いの立場を理解しつつ、互いの特徴を活かしながら活動することが、長く継続するポイントの一つかと思います。」

 

 滝川市は、クレアの事業も上手くご活用いただいているほか、JICAの草の根技術協力事業とも連携しています。また、自治体、国際交流協会、民間事業者等、様々なセクターが協働し、地域一体となって、国際交流や国際協力に取り組んでいる点においても、他自治体の参考となる取り組みであると言えます。

 

 

滝川市の建設事業者の皆さんと研修員

 

 

まとめ

 滝川市では、国際協力を通じて、モンゴルとの地域同士・人同士の繋がりが生まれ、その先に見据える外国人人材の受入れや、企業の海外進出等、経済面での交流も着実に実を結ぼうとしています。

 滝川市が目指すように、一方的な協力で終わるのではく、互いにwin-winの関係を築けるような国際協力の在り方が、今自治体が目指すべき理想的な形の一つなのかもしれません。

 

 (経済交流課 佐藤)

 

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注1 自治体職員協力交流事業(LGOTP)

海外の地方自治体等の職員を研修員として日本の地方自治体に受け入れ、地方自治のノウハウ、技術の習得を図るとともに、受け入れ自治体の国際化施策等への協力を通じて地域の国際化を推進する事業です。

http://www.clair.or.jp/j/cooperation/lgotp/lgotp.html

 

注2 CIR(国際交流員)

海外の青年を招致し、地方自治体、教育委員会及び全国の小・中学校や高等学校で、国際交流の業務と外国語教育に携わる、JETプログラムの職種の1つです。CIRは、主に地方公共団体の国際交流担当部局等に配属され、国際交流活動に従事します。

http://jetprogramme.org/ja/

 

注3 自治体国際協力促進事業(モデル事業)

自治体等が行う国際協力事業の中から先駆的な役割を果たす事業を積極的に認定し、財政的に支援する助成事業です。

http://www.clair.or.jp/j/cooperation/model/index.html

 

 

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