事例紹介

「フルーツ」を町づくりの起爆剤に ~和歌山県紀の川市の挑戦~

 インバウンドを含めた観光客数の増加を狙って、サイクルツーリズム、アニメツーリズム、ヘルスツーリズムなど、地域資源を活かした様々なツーリズムが全国で展開されている昨今。全国的にも有数の果物産地である和歌山県の紀の川市は、一年中収穫をしている「フルーツ」に着目。フルーツを起爆剤に「フルーツツーリズム」を展開し、紀の川市ファンを着実に増やしています。紀の川市が発起人となり、平成26年度からスタートしたフルーツツーリズム。時代のニーズにあわせ、フルーツを「モノ消費」から「コト消費」へと変革させてきた紀の川市の取組について、紀ノ川市役所観光振興課を取材しました。

 

1.フルーツツーリズムを展開したきっかけは?

 紀の川市は県内一かつ全国的にも有数の果物産地であり、これまで果物の販売には特化してきましたが、果物を活かした観光誘客は手つかずで、観光客数も年々減少していました。紀の川市には、果物以外にも海外からも注目される和歌山電鐵(でんてつ)の「たま駅長」や、紀の川沿いに整備が進むサイクリングロード、関西有数のスカイスポーツ基地であることなど魅力的な地域資源が沢山あります。例えば「たま駅長」のいる貴志駅は、アジア圏からのインバウンドを中心に年間約10万人の観光客が来ているのにも関わらず、日帰りの観光客が大半(99%)で、滞在時間も短く、大きなチャンスロスを起こしています。

 そこで、町ぐるみでの観光客受け入れ態勢づくりが必要と考え、一番の魅力である「フルーツ」に焦点をあてた地域づくり、生業おこしを市の事業としてスタートしました。

 

2.どのように事業を展開してこられましたか?

 誘客の仕掛けと市民自らが考え継続的に実行していける体制を整え、地域内外から紀の川市ファンを獲得し、観光消費額の増加を図ることを目的に、平成26年度から平成28年度までの3か年計画で事業化しました。

初年度にはフルーツ・ツーリズム研究会を設立。初めての方でも気軽に参加できる場として市民参加型のワークショップを開催しました。初回から約100名の市民に参加いただき、体験、商品、料理、学びなどテーマごとにチームを分けて月1回のディスカッションで市民の意見、アイデアを集約していきました。同時に組織の法人化・ビジネス化についても検討を始めました。

事業2年目には各チームで絞り込んだテーマごとに事業を具現化し、新商品開発や料理コンテストの開催、いちご狩り体験、フルーツカレンダー作成などを行い、一つずつ形に。また、各チームの活動をよりビジネス化を意識したものとし、研究会も法人化(一般社団法人紀の川フルーツ・ツーリズムとして平成28年12月26日に登記)しました。

集大成として事業3年目には、全国初となるフルーツをテーマとした体験型博覧会「紀の川フルーツ体験!ぷるぷる博覧会(通称:ぷる博)」を開催し、フルーツをテーマに60以上の体験や催しを行い、地域内外から3,000人以上のお客様にお越しいただきました。その後も、(一社)紀の川フルーツ・ツーリズムを中心に市民や地域おこし協力隊主体で企画・運営が継続され、今年度で3回目となるぷる博が開催されています。また、市の総合戦略にも「フルーツを活かしていくこと」を明記し、継続的に戦略を練っていきたいと考えています。

 

     市民によるワークショップ開催              「ぷる博」開幕時の様子

 

3.「事業の効果」についてお尋ねします

 一番大きかったのは「フルーツ」を共通テーマとして市民、市内事業者がつながり、交流・連携の意識が深まったことです。観光誘客に関心を持っている人は前々からいらっしゃいましたが、個々のつながりも薄く、まとまっていなかったように思います。「フルーツツーリズム」という受け皿ができたことで、地域としての受け入れ態勢も整ってきていると実感しています。また、事業を通じてファン(ぷるぷるファンクラブ会員)を約2,000人(2019年4月現在)獲得しており、紀の川市のサポーターも徐々に増えています。

「フルーツ・ツーリズム」参画メンバーのみなさま

 

4.最後に「見えてきた課題」と「今後の目標」について教えてください

一番の課題は事業が行政単位で切れてしまうことです。例えば紀の川市には宿泊施設が少なく、ツーリズム事業の中でもファームステイの推進を図ってきましたが、思うように増えてはいません。宿泊施設の問題など1自治体では解決が難しいことも多く、今後は面的な連携(広域連携)が必要だと感じています。今後は、市や観光協会、(一社)紀の川フルーツ・ツーリズムのほか、JAや商工会など地元企業が連携して「フルーツの町」をPRしていき、そして新たに立ち上げた旅行会社(一社)紀の川フルーツ観光局(DMO/2018年10月29日登記)によって、「フルーツの町」紀の川市の魅力を将来にわたって伝え続ける仕組みが構築されていくことを期待しています。  

今後、DMOでは、ファムツアー、モニターツアーなどを通して課題解決に向けて動き、着地型のツアー造成を計っていくとともに、インバウンド対応の強化なども図っていく予定です。また、市としてもフルーツの海外(主に香港、台湾、シンガポール)への販路拡大にも力を入れ、海外への情報発信もしていきたいと考えています。

 

紀の川市 農林商工部 観光振興課

http://www.city.kinokawa.lg.jp/kankoshinko/

一般社団法人 紀の川フルーツ・ツーリズム

http://www.kinokawa-fruits.jp/

 

                                       (経済交流課 田村)

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