事例紹介

JETプログラム卒業生を活用し、日本酒輸出に一層力を入れる取組 ~兵庫県丹波市、(株)西山酒造場から~

 兵庫県丹波市は、県中央東部の中山間地域に位置する人口約6万5千人のまちです。市南部は阪神都市圏と係わりが比較的深い一方、市北部は隣接する京都府等との係わりが比較的強くなっています。

 京都府福知山市からJRで1駅の丹波竹田地区にある(株)西山酒造場では、2017年からJETプログラム卒業生を採用し、既に行っている日本酒の輸出に一層力を入れようとしています。同社取締役女将の西山桃子さんとJETプログラム卒業生のカミンスキー・ケリーさんに取組内容を伺いました。

 

女将の西山桃子さん(左)とJETプログラム卒業生のカミンスキー・ケリーさん(同社前にて)

 

■まずは西山酒造場さんについてご紹介いただけますか?

(西山さん)「丹波地域は水が美味しいため日本三大杜氏の一つと呼ばれており、当社は1849年に創業した老舗の酒蔵です。看板商品である純米大吟醸の“小鼓”は、俳人の高浜虚子に命名していただきました。この業界では珍しく従業員49人のうち女性が33人で、女性役員もいることから女性が活躍できる会社としても注目されています。

 海外への輸出については、現在の六代目社長が民間企業から家業に戻った2001年に取組を始め、2019年1月時点で32ヵ国に輸出しています。主な輸出先は中国、香港、アメリカとなっています」

同社看板商品“小鼓”(左)とリキュール類(右)。同じデザイナーを使うことでイメージを統一

 

■JETプログラム卒業生を採用された背景について教えてください。

(西山さん)「小規模な酒蔵である当社が海外へ日本酒を輸出する際は、価格では大手に対抗できませんので品質と味で勝負することになります。現地で杜撰な管理をされてしまっては戦うことができませんので、当社に実際に来ていただき、製品の味や作り手の思いを分かっていただき、気に入っていただけた方々と取引をしています。輸出を始めてから、英語が堪能な従業員を多数採用しましたが、品質や思いを現地の方により一層分かっていただき、当社の製品をより一層愛してもらうため、当社の酒づくりを分かった外国人に営業してもらおうと、海外の現地採用ではなく日本での外国人従業員採用を行うことにしました。どのように外国人の方を募集しようか考えていたときに出会ったのがJETプログラムのキャリアフェアです。採用は日本の伝統や文化に興味があり、地域振興への思いを持っている人という基準で行い、熱意が伝わってきたケリーさんに来ていただくことになりました」

 

■外国人従業員に対して特別な対応はしていますか?

(西山さん)「勤務条件は、日本人の従業員と全く同じです。新入社員研修も日本人と一緒の内容ですし、実家に帰国する際も通常の有給休暇内で対応してもらっています。思いやりを持って見守ってはいますが、本人にも努力をしてもらっています。当社では、外国人従業員以外に外国人研修生をたまに受け入れることがありますが、日本酒を広めたいと思ってくださる方であれば、日本人か外国人かを問わず受け入れています。海外輸出を行っているため、外国人を受け入れる土壌が当社にはあるのかもしれません。JRが1時間に1本程度しか通っておらず、近くに有名な観光地も無い場所ですが、数年前からは外国人個人旅行者の方に立ち寄っていただけるようになりました」

 

■では、ケリーさんに伺います。西山酒造場さんで働こうと思ったきっかけを教えてください。

(ケリーさん)「高校時代に外国語が必修だったのですが、周りがフランス語やスペイン語を選択するなか、あえて難しそうだけれどかっこいい日本語を選んだことが最初の日本との関わりです。大学でも日本語学科を専攻し、何度か語学勉強のため日本を訪れましたが、卒業後は大学時代から働いていたアメリカの地ビール専門店のバーテンダーに就きました。お酒も仕事も好きで、マネージャーにも昇進したのですが、勤めだして3年が経ち、だんだん日本語を忘れていくにつれ、やはり日本で働きたいという思いが強くなり、JETプログラムに参加して3年間京都市でALTとして働きました。プログラム終了後、JETプログラムのキャリアフェアのチラシを見ていた時、教師や翻訳、ホテルといった職種が多い中、唯一の日本酒事業者の募集に目が留まりました。ALTの時に日本酒のテイスティングパーティーに出席して様々な種類があることを知り、京都市内の酒蔵に何度か通ったこともあったので、日本酒には以前から興味がありましたし、とても面白そうな仕事だと感じました。キャリアフェアがなければ、今何をやっていたか分かりません」

 

流暢な日本語でインタビューに答えていただいたケリーさん

 

■日本人従業員と同じ条件ということで大変なことはありますか。

(ケリーさん)「仕事面よりも、まず生活面が大変でした。ある手続きでテレフォンオペレーターと会話する機会があったのですが敬語が丁寧すぎて分からず、日常の言葉で話してもらうようお願いしました。また、入居しようと決めた物件が外国籍のため断られた時はどうしようかと思いましたが、会社のサポートのお陰で無事住むことができました。仕事は皆さんがサポートしてくれるので、努力は必要ですが大変ではありません。当社は地域貢献として、耕作放棄地で酒米の生産にも取り組んでいます。朝5時に起きて農作業をし、雑菌を落とすために自宅に戻ってシャワーを浴び8時半に通常通り出勤したときは大変でしたが、良い経験になりました。また、会社では毎朝社員全員でラジオ体操をするのですが、社長は『全員、周りの動きに合わせるように』と言います。ラジオ体操を通じて、少しずつ全員で同じ方を向くことで力を発揮する日本人の感覚が分かってきました。従業員全員で日本酒を作って、従業員全員で営業をする、という会社の方針のもと、今はOJTとして日本酒の製造にも携わっていますが、とても興味深いですね」

 

敷地内には国登録文化財に指定された建造物が3つあり、歴史を感じさせる

 

■西山さんに伺いますが、外国人従業員を雇用して気付いたことはありますか。
(西山さん)「外国人だからといって特別なことはありません。ケリーに関しては、持ち前の明るさで周りを楽しくしてくれる一方で、すごく真面目です。色々なことに対して、いつも『何で』と質問してくる研究熱心な面もあります。通訳する時も、相手に分かりやすい簡単な言葉を選ぼうとして、終わった後に疲れて果ててしまうほど気を遣ってくれます。掃除の際に日本人が気付かない汚れに気付いたり、新しい道具の整理方法を提案してくれたりと、逆に日本人よりも細やかかもしれませんね」

 

■最後にケリーさんに伺います。今後取り組みたいことはありますか。
(ケリーさん)「私が来日する5年前のアメリカでは、クラフト酒として少しずつ日本酒が広まっていましたが、ホットかコールドを選べるだけで銘柄が無いお店も多く、美味しいお酒は買えませんでした。これから日本酒の基本を学んで、海外で日本酒を知らない人に広めていきたいです。そして、日本酒の製造の勉強も続けていきたいですね」

 

~取材後の所感~
 ケリーさんのほかにも台湾人の女性を雇用している西山醸造場。ノンアルコール製品や甘酒ヨーグルト、化粧品といった分野の新商品開発にも積極的に取り組む同社が今後どのような展開を見せていくのか、とても楽しみです。

 

(株)西山酒造場ホームページ

 http://www.kotsuzumi.co.jp/officialweb/

JETプログラム

 http://jetprogramme.org/ja/

JETプログラムキャリアフェア

 http://jetprogramme.org/ja/careerfair/

 

JETプログラムキャリアフェアの様子

 

 

(経済交流課 今井)

 

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