米を主食とし、生産大国でもある東南アジア諸国において、日本産米の輸出高は増えているとはいえ、その競争力は未だに高いとは言えません。しかし、各国では日本食がブームとなっており、その普及に比例して日本産米を評価する人たちが増加しています。現地では高額となるためなかなか購入できませんが、インバウンドで日本旅行したお客様が日本産米を購入していく数も増加していることから、日本産米の潜在的なニーズはかなり高いと言えるでしょう。
インバウンドのお客様が増え、今まで体験したことのない美味しいご飯を日本の地方で食べることで、その違いに気づいた人を中心に、海外でも日本産米を評価する人が増え、需要へとつながっています。
■インバウンド需要に比例して日本産米の需要も伸びていく
20年以上前、東南アジアで日本産米を購入する人といえば、そのほとんどが現地駐在日本人家庭、または現地高級和食店がほとんどでした。寿司ブームがきっかけとなり、いまの和食ブームにつながってきますが、寿司ブームのきっかけがカリフォルニアロールであったように、海外での日本食はその国の人の味覚や好みに合わせてアレンジされ浸透していきました。そのため、「本当に美味しい日本産米」を体験し、その価値を評価できる人はごく僅かでした。
また評価できたとしても、日本産米の価格は外国産のジャポニカ米の何倍もするため、一般家庭に登場する機会はなかなかありません。しかし、東南アジアの経済成長やここ数年の訪日ブームに比例し、日本で本当の美味しい日本のお米を食べる機会が増えたこともあり、外国産のジャポニカ米と日本産米の違いを知る人が増加してきました。
特に、日本に住んでいる外国人や観光客がお土産として日本産米を購入して帰るケースがとても増えてきたようです。
東南アジアに限らず、訪日外国人が増え日本の地方を訪れてもらうことは、地方の観光収入が増えるだけではなく、日本産品輸出拡大の潜在的なPRにつながっていくことになります。
■その地域の魅力と共にPRすることが大切
昨年シンガポールにおけるNATAS(シンガポール旅行博)に弊社が出展した際に、新潟県産米の調査を手伝う機会がありました。日本への旅行を検討している人が集まる日本ブースで行ったこともありますが、新潟産米に関して「日本一のお米でしょ」「コシヒカリでしょ?」といった返答をいただく人が思いのほか多く驚きました。
シンガポール人に限らず、日本の土地勘や距離感がない外国人にとって、東京・京都・北海道などのブランド地区以外の地名を覚えることだけでも10年前にはなかったことです。美味しい日本食を食べるにはやはり美味しい日本産米が不可欠ですが、シンガポールの富裕層を中心に評価している人が増加傾向にあることは間違いありません。
価格はブランド力に比例するものですから、現地では決して安くはない日本産米の価値や魅力を訴求するには、その産地の魅力やどうこだわって作っているかなどのストーリーの訴求により「共感」、「理解」を得て、ブランディングにつなげることが不可欠です。
■日本産米ならではの食べ方の提案を!
日本産米が美味しいことやステイタスを訴求するだけでは、もともと日本食が国民食ではない国の人、ましてやインディカ米が主食の国の人たちにPRしても説得力がありません。
寿司がきっかけでジャポニカ米需要が増え、ここ数年で和定食を出す日本食店が増加し、現地の人にとって和定食などを食べる機会が急激に増えました。シンガポールでは、コンビニエンスストアにおにぎりも並ぶようになりました。和定食やおにぎりといえば、やはりインディカ米よりジャポニカ米となります。現地ではまだ本物の日本産米や日本食材を使った料理は高価ではありますが、日本食を食べるのであれば日本産米の方が美味しいと実感する人たちも増えてきています。
このようにジャポニカ米に合った食べ方や料理を提供し体験してもらうことで、日本産米の品質の高さや美味しさを知ってもらい日本産米の需要と供給は伸びていくのですから、新たな日本産米に合うおかずの提案や食べ方の提案を強力に訴求していくことは日本産米輸出拡大につながります。
しかしそれはその国の人たちの嗜好や好みをしっかり理解したうえでないと、受け入れてもらえないものなのです。
(執筆者)
クレア プロモーションアドバイザー
和テンション株式会社代表取締役
鈴木 康子