日本のみならず世界屈指の観光都市と評される「京都」。2013年は宿泊外客数113万人で過去最高、修学旅行生数を初めて上回った。その背景には知名度やブランドに甘んじることのない着実で効果的な施策「海外情報拠点の活用」がある。
今回のポイント
海外情報拠点による市場目線のマーケティングとメディアへの露出強化
事業から得られるコストパフォーマンスが高い
世界に名だたる観光都市・京都。
海外の権威ある旅行雑誌で、京都は、2014年の人気観光都市の世界第一位に選ばれた。
来洛外客数ものびているが、2008年に就任した門川京都市長は、強い課題意識とリーダーシップによって「量の確保とあわせた質の向上」の方向転換を行った。
その戦略の一つに、京都市海外情報拠点(以下REP)やウェブサイト、SNS等を通じた徹底的な「マーケティング」と露出強化による「ブランディング」があげられる。
京都への外客はもともとアジアのみならず、欧米オセアニアからが半数を占める。
REPは、2006年から設置が始まり、2014年4月にはNY、ロンドン、パリ、フランクフルト、シドニー、上海、台北、ソウル、香港、ドバイの10拠点となっている。
これら拠点は、現地メディアとの関係構築、情報収集、露出強化等を委託内容として公募のうえ決定。
現地のPR会社などが多いが、2012年からは「日本語ができる」という条件を撤廃、「いかに市場動向を把握しているか」「メディア戦略の実行能力があるか」を重視している。
こうしたメディア戦略等と京都の質の高いおもてなしが功を奏し、2014年7月には世界で最も影響力がある旅行雑誌の一つ、米『トラベル+レジャー』誌の読者投票による人気観光都市で世界第一位に京都が選ばれた。
「これら海外情報拠点の一番大切な役割は、現地の良質メディアを通じて露出を上げること。
『トラベル&レジャー』は読者投票のため直接の影響をもたらしたわけではありませんが、拠点を通じた露出強化によっても認知度とあこがれが高まったといってよいでしょう。
また、京都には多くの取材依頼がありますが、日本サイドで『そのメディアが自国でどんなポジションにあり、露出の効果があるのか』はわかりません。いわば現地を知る”目利き”としても重要です」と京都文化交流コンベンションビューロー(以下KCB)の国際観光コンベンション部インバウンド課長・土居里枝氏。
他の活用例として次の2つが挙げられる。
①政治的な緊張状態や日本サイドでの事件事故(食品偽装や震災)発生時の情報収集と現地メディアや旅行社にアドバイスを発信。
現地または日本でのマスコミ情報に過度に影響されないように実情を伝えていく
②観光以外での現地PRや見本市出展コーディネート(例えばパリでのJapan Expoなど)
当然のことながら、各エリアにより、課題や戦略も大きく異なっている。
今年4月に拠点を設置したデュバイを中心とする中東市場では、Japanは知られていて、ポジティブなイメージだが、KyotoがJapanにあることが知られていない。
旅行会社のスタッフですら、直行便が関西空港に飛んでいることを知らないケースもあったと、京都の認知が低い状況が明確に。
「現地メディアや旅行造成担当による京都視察の評価は上々。あとはいかに露出を上げて旅行先として認識させるかの勝負」とさらに強化する意向だ。
どのエリアも徹底的な現地目線によるマーケティングとメディアへの露出強化がじわじわと浸透し、新規集客増と新たな魅力発信につながっている。
実はこの制度は「京都だからできる」ことではなく、多くの自治体で活用でき、コストパフォーマンスも高い。
実は現地でのイベントや大がかりなセールスプロモーションを行えば数百万円単位で費用がかかってしまう。これを年間通しての情報発信に使うと有効に使える。
特に東アジアの旅行代理店やメディアが、忙しいさなかに連日行われる日本の自治体ごとのセールスや説明会で疲弊していることを考えると、「現地の窓口」は大きなニーズがあるのではないか。
今後京都市ではREP事業を「メディア戦略からもっと広げて考える」ことを検討しているという。
「現地のマーケット動向」「現地目線」を重視すると、自ずと明確になることなのかもしれない。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/