海外でも人気のアニメ「名探偵コナン」がミステリーツアーとなった(2017年2月末で終了)。舞台は、原作者の故郷、鳥取県だ。もともと鳥取県は漫画・アニメを観光のキラーコンテンツにしようと取り組んできた。これまでと違うのは、特定の地域だけではなく、JR西日本との連携で、点から面に変化し、県内を回遊する仕組みになったことだ。その背景と現状を紹介する。
ポイント:
・ストーリーのあるミステリーツアーに仕立て、回遊する仕組みとなった
・地域とJR西日本が連携することでプロジェクトが加速
■鳥取県に名探偵コナンファンの外国人旅行者がやってきた!
通称・コナン駅で親しまれている由良駅は、鳥取県の北栄町という県内の中央部海沿いの小さな町にある。そこに外国人旅行者が訪れ、しかも、首に「名探偵コナン」のツアーブックをぶら下げているのだ。
これは、漫画・アニメで有名な名探偵コナンに因んだミステリーツアーの参加者の姿だ。ストーリー仕立てになった謎解きのため、ヒントを求めて鳥取県内を闊歩しているのだ。
このミステリーツアーは、台湾・韓国・香港・タイの4地域で販売された(注:現在は終了している)。JR西日本と鳥取県や県内関係団体が組織する実行委員会が主催して実施したものだ。
■鳥取県は漫画をキラーコンテンツに据えた戦略を進める
鳥取県では、漫画を観光の目玉の一つとした戦略を取っている。
ではなぜ、鳥取県が漫画に力を入れるようになったのか?
それは、鳥取県が生んだ漫画の三巨匠の功績が大きい。故郷を盛り上げようと、地元サイドも町づくりに漫画を生かしている。
三巨匠の一人、「ゲゲゲの鬼太郎」の作家水木しげる氏は、境港市出身だ。境港市には、1993年に漫画キャラクターの妖怪像が並ぶ「水木しげるロード」ができ、観光スポットになっている。
二人目、「孤独のグルメ」の作家、谷口ジロー氏が鳥取市の出身だ。鳥取が舞台の作品である「父の暦」や「遥かな町へ」も素晴らしい作品である。
そして最後の一人、「名探偵コナン」の作家、青山剛昌氏が北栄町の出身だ。2007年には北栄町に「青山剛昌ふるさと館」ができ、人気観光スポットになっている。
このような背景があり、県としても漫画を観光のためのキラーコンテンツとして押し出していく素地があったのだ。そして、このテーマを横断的にまとめる部署として、2012年に「まんが王国官房」が発足した。
それ以前は、著作権の協議や調整を庁内の各課が個々に対応をしていたが、現在はワンストップでこちらの部署が対応している。発足した年には国際マンガサミットが鳥取県で開催され、司令塔として活躍したそうだ。
■JR西日本との連携で「名探偵コナン」のミステリーツアーがスタート
「名探偵コナン」の作家の出身地ということもあって、このたび、コナンミステリーツアーが鳥取県で実現した。
実行委員会が立ち上がり、JR西日本、鳥取県まんが王国官房、関連の地元行政が加わった。情報の共有化につとめて、より良い企画を目指した。
「名探偵コナン」の世界観で本格推理に挑みながら、鳥取県内の観光を楽しむことができ、ツアー終了後、全ての謎が解けた正解者にはプレゼントがもらえる。ストーリー仕立てになっていて、「名探偵コナン」になりきって、旅をしながら指定の場所でヒントを集め、謎を解いていくという。
まず、2015年には日本人向けの企画として販売し、翌年にそれをアジア向けに水平展開した(販売期間は2016年4月から2017年2月末まで)。有効期間内にエリア内の路線を3〜5日間周遊できる。
■名探偵コナンのミステリーツアー実行委員会が立ち上がり情報を一元化
旅行商品の造成と販売は、JR西日本が担当し、さらにコナンのラッピング電車を県内で走らせ、地域および観光客を盛り上げた。
一方、目的地までの二次交通の案内など、鉄道を降りた後の受入整備は、県や関連施設が対応した。謎解きのヒントは、JRの駅から遠く離れた施設にもあるからだ。
販売地域は韓国、台湾、香港、タイの4地域である。韓国と香港から直行便が県内の米子鬼太郎空港に就航している。一方、台湾やタイからは関空を利用して鉄道で移動する人が増加傾向にある。特にタイは日本の漫画が好きな人が多く、最も伸びている市場だ。
海外プロモーションは、外国語のパンフレットの制作・配布をした。具体的にはJR西日本による海外旅行博への出展および現地旅行会社へのツアー販売、また、県の国際観光担当者等による商談会でのツアー紹介等により実施した。
■「名探偵コナン」の知名度をいかして鳥取県の認知度向上につなげた
ツアー集客の成果は、夏場以降にあがってきた。スタートの4月の段階では、まだプロモーションが不十分だったが、現地旅行展示会や現地旅行会社での認知度向上によって、夏以降から伸びたのだ。
外国人の参加者は、漫画好きな若い層だけではなく、子供連れのファミリー層も多い。また、謎解きのための訪問場所も県内に分散させて、回遊する仕組みを作ることで、幅広い層に多くの見どころを見てもらうことができた。
意見として多かったのが、鳥取県を知らなかったが、見どころが多くて楽しかったというコメントだ。新しい発見があったという意見もある。海外では、「名探偵コナン」は知っているが、鳥取を知っている人は少ない。
すでに海外で有名な「名探偵コナン」とのコラボにより、鳥取県の魅力が伝わっていったのだ。鳥取県の成功で、この新しい手法が全国に広まるかもしれない。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/