高知県では、愛媛県、香川県、徳島県の四国4県と共同で、四国内事業者の販路開拓などの海外展開支援を行うとともに、海外における四国の知名度を向上させることを目的として、平成22年6月より四国4県・東アジア輸出振興協議会(以下、四国4県協議会)を設置し、食品輸出の促進に取り組んでいます。この取り組みとの一つとして、現在、米国市場への販路開拓にチャレンジしています。
(平成30年度 マルカイ四国フェア)
■米国を対象国とした背景
米国は、日本の農林水産物・食品の輸出額が香港に続く、第2位の国・地域であり、日系人が多いことや、近年の健康食ブームなどの影響もあり、日本食が浸透しつつあります。また、米国経済は、順調な雇用情勢などを背景に、消費が堅調に拡大しており、それに合わせて日本食市場の規模も年々拡大しています。
当初の四国4県協議会の取り組みとしては、協議会の名称のとおり中国などの東アジアやASEAN諸国を対象に、四国アンテナショップの設置や量販店での四国フェアの開催などの輸出販路拡大に取り組んでいました。しかしながら、日本食品の輸出において大きな可能性をもつ米国市場に対しての取り組みも四国の食品輸出促進のためには必要と考え、平成29年度より、当国に対する輸出促進の取り組みを開始しました。
■米国での輸出促進の取り組み
四国4県協議会として、初めに行った米国市場への取り組みは、現地商社への委託による日本食レストラン向け業務用食品の輸出事業です。この事業により現地のバイヤーを招聘して、商談会を実施しました。その結果、高知県が日本で50%以上の生産量を持つユズが米国においてもブームということもあり、ユズの関連商品を中心に採用が決まり、米国市場への一定の販路開拓が実現しました。この事業は現在も継続しており、業務用食品のさらなる販路拡大に取り組んでいます。
また、次のステップとして検討したのが小売店向けの販路開拓です。日本食レストラン数が増加している業務用市場への参入とは違い、小売り向けは、日本の大手企業はもとより中国、韓国などの食品企業が多数参加している競争が激しい市場です。よって、そのような市場への参入は、事前に情報収集のためのテストマーケティングが必要であると考えていました。そんな中、自治体国際化協会の事業に「平成29年度 日本ふるさと名産食品展 in ロサンゼルス」(以下、名産食品展)があることを知り、これを米国の小売市場への販路開拓の足掛かりと捉え、四国4県・東アジア輸出振興協議会として応募することにしました。
この事業は、現地日系スーパーマーケットを経営しているマルカイコーポレーション社の協力のもと行われるものでした。当社は、ロサンゼルス南部のガーデナ市に本社を置き、南カリフォルニア地域に「MARUKAI」、「TOKYO CENTRAL」、「TOKYOCENTRAL&MAIN」の3つのブランドで11の店舗を展開しています。名産食品展は、その一部の店舗で開催されるものでした。
また、ジェトロによると、カリフォルニア州は日系コミュニティーやアジア系コミュニティーが発達している地域で、アジア系の人口が一割強を占めており、日本食の需要や健康志向も高く、新しいものが受け入れられやすい地域ということでした。そのため、米国小売市場のテストマーケティング場としても最良の地域であると考えました。
(平成29年度 日本ふるさと名産食品展 in ロサンゼルス)
名産食品展は平成30年2月に開催され、四国4県においては12社、高知県においては3社の事業者が参加しました。初めての出展でしたが、高知県事業者のうなぎ商品が完売するなど、予想以上に好評なものとなりました。参加事業者も米国市場への手応えを感じるとともに、新たな商品開発のヒントを得るなど、テストマーケーティングとしての名産食品展への参加は、大成功なものとなりました。また、マルカイコーポレーションとも良好な関係を築くことができ、次年度の平成30年度は、四国4県協議会の事業として、当社の店舗において四国フェアを開催することとなりました。
■協議会の事業としての四国フェア
四国4県協議会の事業としてのマルカイ・四国フェアは、平成30年9月に開催しました。参加事業者は、四国4県で33社、高知県で7社と、昨年度の名産食品展に比べ大幅に多くなり、また前年度同様に売り上げも順調で、一部は定番化商品に採用されることになりました。この事業は来年度も実施することが決まっており、名産食品展に参加することがきっかけで米国市場への販路開拓ができたと考えています。
(平成30年度 マルカイ四国フェア)
■米国食品規制(HACCP等)への対応
米国市場の開拓に取り組む中で、もっとも大きな課題となったのがFSMAへの対応です。FSMA(Food Safety Modernization Act:米国食品安全強化法)とは、米国における食品の安全性を高めるための法律で、米国内に流通するすべての農林水産物及び加工食品が対象となります。輸出食品も例外ではなく、この法律への対応が必須となります。
これにより、米国へ食品を輸出する場合は、日本国内以上の衛生管理の徹底が必要で、県内事業者においては、FSMAに対応するための資料作成などの取り組みが必要になりました。そこで、県では米国への輸出を行う事業者の販路開拓のチャンスを広げるためにFSMA対応の支援事業に乗り出しました。
以前から、高知県では食品加工の衛生管理の高度化に取り組んでおり、平成28年度より高知県版HACCP認証制度(高知県食品総合衛生管理認証制度)を設置していました。この取り組みの効果もあり、苦戦すると思われていた県内事業者のFSMA対策は、予想に反してスムーズに行うことができました。
また、FSMAという米国市場への参入障壁を乗り越えることで、米国市場に対する事業者の意識が意欲的に変わってきたと感じています。
■今後の取り組みについて
このように、米国市場への取り組みが順調に推移している中で、今後、県としては、県内事業者の商品の定番化の維持と、新たな販路の開拓を目指して、営業活動の支援に重点を置きたいと考えております。その理由は、本県の輸出に取り組んでいる事業者は、まだ企業規模が小さい中小零細企業がほとんどで、頻繁に米国に渡航するための人手と時間が不足しているからです。本県の商品が、米国市場で長く愛されるものとなるよう輸出促進に取り組んでいきます。
(高知県 産業振興推進部 地産地消・外商課 輸出振興室チーフ 奈良 友也)
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