事例紹介

外国人も踊る! 阿波踊りの国際化!

阿波踊りは、世界に誇るコンテンツだ。徳島には、夏本番はもちろん、オフシーズンでも阿波踊りが体験できる施設「阿波おどり会館」があり、ここ数年は外国人の入場者数が増えているという。受入れ側の外国語対応や、海外への阿波踊りの派遣など、阿波踊りを取り巻く国際化の取組を追った。

阿波踊りのグランドフィナーレ、総踊りは、会場のボルテージがあがる

阿波踊りのグランドフィナーレ、総踊りは、会場のボルテージがあがる

ポイント:

・阿波おどり会館では言語による外国人対応を進める
・徳島県は海外への阿波踊りの派遣事業を通して知名度アップ


■真夏の徳島では、阿波踊り一色になり、外国人も踊る!

毎年8月12日から15日の4日間、徳島の街は阿波踊り一色に染まる。徳島市の人口約26万人に対して、期間中の人出は約130万人、踊り手だけでも約10万人が集う。

踊りは、「連」というグループに分かれ、踊りの質を競っている。徳島には1,000もの連があると言われ、その中でも阿波おどり振興協会や徳島県阿波踊り協会などに加盟する33の「有名連」は、卓越した技量を持っており、イベント等での公演も行っている。また、一般の連は、職場や学校の仲間が集まって結成したものが多い。中には、徳島市国際交流協会が結成した外国人たちが中心になっている連もあり、色々な国籍の人々がお揃いのハッピを着て、踊り歩いている。

有料シートがある阿波踊りの会場の一つ、藍場浜演舞場に多くの連が入る

有料シートがある阿波踊りの会場の一つ、藍場浜演舞場に多くの連が入る

阿波踊りは、もともと地域の盆踊りが発祥で、宗教的な行事が娯楽化し、盛大なお祭りへと発展を遂げたものである。
地元の自治体も阿波踊りを観光資源として捉え、日本全国、さらには台湾などの海外に向けた情報発信で認知度を向上させ、積極的な観光客誘致に取り組んでいる。

■一年中阿波踊りが楽しめる「阿波おどり会館」で進める外国語対応

阿波踊りの本番は夏場の短い期間だけだが、それ以外の季節でも阿波踊りを体験できる場所がある。それは阿波おどり会館だ。JR徳島駅から中心市街地を抜けて徒歩10分の位置にある。

阿波おどり会館では、日替わりで地元の有名連の方々がやって来て、ステージで本番さながらに演奏と踊りを披露する。踊り方の解説もあり、その後、会場の参加者はステージにあがり有名連のメンバーと一緒に踊ることができる。

毎日、日替わりで有名連の踊りが見学できる阿波踊り会館

毎日、日替わりで有名連の踊りが見学できる阿波踊り会館

同会館の担当者によると、日本人の入場者数は横ばいながら、外国人の入場者数は2014年が4,878人、2015年が5,789人、2016年が7,176人と着実に伸びている。国別内訳で見ると、台湾からの観光客が圧倒的に多く、約8割を占める。次に香港からの観光客だ。特にここ最近、台湾からの観光客が伸びているのは、台湾から高松空港への直行便を利用した周遊ツアーが増えたことによると、同会館の担当者は言う。
外国人は個人旅行者よりも団体の参加が多いため、大型バスが数台停められる駐車場がある同会館は、立ち寄りやすいと評判だ。

このような外国人観光客の増加を受けて、阿波おどり会館では、言語による受入整備を進めている。
ステージの司会進行は日本語で行うが、英語、中国語、韓国語で字幕が表示されるようにした。また、施設の一角にも阿波踊りに関する展示コーナーを設置し、英語、中国語、韓国語に翻訳した掲示を加えた。
さらに、台湾からの団体が多い際には、展示などの細かい質問にも対応できるよう、地元の中国語を話せる人に応援に来てもらっている。メンバーは登録制になっていて、近隣在住者がほとんどだ。

阿波おどり会館の運営は徳島市観光協会が担い、阿波踊りの保存、伝承、PRを主な業務としている。また、外国人観光客の受入整備にも重点を置いている。

阿波踊り会館は、眉山ロープウェイの発着場所でもある

阿波踊り会館は、眉山ロープウェイの発着場所でもある

 

2017年の阿波踊りの期間中、徳島市から委託を受けるかたちで、パソナは「イベント民泊」を実施した。
徳島市内には宿を合計しても1万7,000人しか泊まれず、夏の阿波踊り期間中の来場者130万人に対して、約76人に一人しか宿がない計算で、狭き門だ。せっかく130万人を超える人が来ても、宿泊客がいないと地域に落ちるお金が減ってしまう。
そこで、宿問題の解決に向けて民泊を推し進めるために、パソナが足を運び民泊可能な家主を開拓した。パソナが窓口となってエアービーアンドビー(民泊予約サイト)への掲載を代行し、予約受付の代行も行った。これは徳島市に新規のホテルが1軒建つのと同じ経済的なインパクトとなったようだ。

■阿波踊りを海外へ派遣し、認知度向上につなげる

一方、阿波踊りの海外へのプロモーションは県が担っていて、受入整備は市が受け持つ。役割分担が明確に分かれていて、県は外国語のパンフレット等により現地の商談会で阿波踊りをPRしている。

さらに県が進めるプロモーションでユニークな点は、阿波踊りの海外派遣事業だ。海外でのイベントに呼ばれるケースが多く、担当窓口の商工労働観光部国際課は積極的に推進したいと考えている。
最近では、2016年11月に香港の日本領事館で、日本を紹介するイベントが開催され、阿波踊りの派遣を実施した。実際に香港の方々に生の阿波踊りを見てもらうと、その迫力に感激されるそうだ。海外では阿波踊りを知らない人もまだまだ多く、海外派遣は、知るきっかけになるのだ。徳島県では阿波踊りを通して徳島に来るきっかけにつなげたいと意欲をみせる。

えびす連の迫力ある男踊りは、会場を賑わす!

えびす連の迫力ある男踊りは、会場を賑わす!

一方、民間の連が自主的に海外に渡り、阿波踊りの知名度を上げるという動きもある。「寶船」という連では、2014年にインド・フランス・ニューヨーク・香港と4カ国の世界ツアーを実現した。パリで開催された世界最大の日本の祭典「Japan Expo 2014」では、ピックアップアーティストに選抜され、異例のスタンディングオベーションが鳴り響いたという。

海外での知名度が着々と向上している。これをいかにインバウンドにつなげるか。次なる道筋が楽しみだ。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 中国・四国

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