事例紹介

ラグビーワールドカップの開催会場の静岡県袋井市が、外国人受入れに向けホームステイなど新しい取組を進める

静岡県袋井市に所在するエコパスタジアムは、2016年にラグビーワールドカップ2019の開催会場の一つに決定した。ワールドカップ開催時には外国人が押しかけてくることが予想される。袋井市はこの機会を活かし、「まちの国際化」を達成するための一つの手段として、ホームステイを推進し、市民の経験や財産につながる取組を検討するため、外国人モニターを招いた体験宿泊などの取組を進めている。

エコパスタジアムは5万人収容が可能だ

エコパスタジアムは5万人収容が可能だ

ポイント:

・ラグビーワールドカップ開催を契機として、まちの国際化を意識
・外国人モニターの体験ホームステイを実施して、実現の可能性を探る


■ラグビーワールドカップの開催を契機にまちの国際化を推進

静岡県袋井市がまちの国際化に積極的に関わるようになったのは、地元にあるエコパスタジアムがラグビーワールドカップ2019の会場になることが決定した2016年からである。

ラグビーワールドカップの誘致活動は静岡県が中心に行ってきたが、袋井市に所在するエコパスタジアムが開催会場の一つに決まると、袋井市でも、海外からの観戦者の対応について具体的に取り組むようになった。
2016年3月には、スポーツの世界的祭典を機に市の国際化・地域活性化を図ることを目的とした、ラグビーワールドカップ2019静岡県開催推進委員会・袋井市開催推進委員会が設立された。委員は地元政財界や学校関係者ら37人で、委員会予算は袋井市が負担している。大会に向けた具体的な取組には、ホームステイの推進、市民の英語力向上、Wi-Fi環境整備、シティープロモーション強化等の実施が挙げられた。
委員長を務める原田英之市長は、「ラグビーワールドカップは市への素晴らしい贈り物。大会までの3年半は、まちを大きく変えるチャンス」と語った。

2017年3月に開催された市の開催推進委員会

2017年3月に開催された市の開催推進委員会

■外国人のホームステイを推進するため、まずは体験宿泊

ラグビーワールドカップの観戦者は、自国の応援のために長期にわたり開催国に滞在することも珍しくない。エコパスタジアムは、5万人が収容可能だが、来場が予想される外国人の数と近隣のホテルの部屋数を比べると、部屋数が圧倒的に少ない。

袋井市は、実は、静岡国体の際に関係者など約2,000人をホームステイで受け入れたという経験がある。当時は、各地域の自治会が主体となって動き、1,000世帯がホームステイを受入れた。

しかし、今回は状況が大きく違う。外国人観戦者の受入れになるからだ。

袋井市では、昨年(2016年)の8月と12月にモニターホームステイを実施することにした。本格的な取組に向けたテストという位置づけで、外国人モニターを受入れ、課題等を検証した。この企画に協力してもらえる家庭を公募するため、市の広報や民間の英語教室などでも案内を配り、告知に努めた。

初回のホームステイ受入れでは、14世帯に、主に首都圏在住の外国人12カ国15名が泊まった。

応募のあった各世帯とモニターとなる外国人には、あらかじめ要望等をヒアリングしておいた。例えば、受入世帯には受入れ可能な性別、部屋のスタイル(ベッド・布団)、食事アレルギーの有無、ハラル対応の必要性等である。この事前ヒアリングは、部屋を振分ける際に参考になったと市の担当者は語っていた。

ホームステイの初日は、受入世帯とモニターが大きな会場に集まり、それぞれを引き合わせて共通のアクティビティを実施した。お寺での坐禅、特産品のクラウンメロン試食等、ゲストとホストが一同に介したプログラムが中心だった。そして夕方は、ホストが各家庭に外国人モニターを案内していった。

2回目のホームステイでは、共通のアクティビティを減らし、各家庭で自由に過ごす時間を増やした。というのも、1回目終了後のアンケートで、もっとホストのことを知りたいというモニターの声、逆に自分らしいもてなしをしたいというホスト側の声があったからである。例えば、習字教室を開いているホストならば、習字の個人レッスンをしたり、お茶の手習いがあるホストなら、お茶をふるまったりと、各家庭の個性に任せた。

禅寺の可睡齋本堂をモニターホームステイで案内した

禅寺の可睡齋本堂をモニターホームステイで案内した

ホームステイ中は、ホストもゲストもコミュニケーションを楽しんだようで、終了後も前向きな感想が多かったという。
ホストからは終わった後にどっと疲れを感じたという意見もあり、初めてのホスト体験への高い緊張感と見送った際の安堵が見て取れる。

2019年のワールドカップの開催に向け、ホームステイの受入れや、そのサポート(語学、食事、日本文化体験等)に協力する世帯を500世帯まで増やすことが目標だと市の担当者は言う。大会を成功させるためには、多くのボランティアが必要になり、その布石にもなればいいと考えている。

■ワールドカップ観戦客の受入れという明確な目標に向かって、地域一丸となって推進

このようにラグビーワールドカップ2019の受け入れ推進には、市役所内でも、スポーツ、観光、教育、国際交流など、部署を超えて取組んでおり、さらに地域の住民や団体等とも連携し、多くの人を巻き込んだ取組を進めている。

観光担当部署では、ラグビーが盛んなオーストラリアとニュージーランド出身の国際交流員に相談しながら外国人観光客の対応について検討する機会も出てきた。また、小学校では、2017年度より小学1年生から英語教育を導入するなど、この機会にまちの国際化を進めようという機運が高まっている。

市内の子供たちにラグビーに親しんでもらう取り組み

市内の子供たちにラグビーに親しんでもらう取り組み

袋井市は、ラグビーワールドカップの誘致を契機に、市民の関心を高め、市民を巻き込んでまちの国際化の取組みを進めている。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 中部・近畿

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