事例紹介

関西空港から一番近い13の自治体が結集して、立ち寄りポイントを訴求!

外国人利用者が急増する関西国際空港(以下、関空)。旅行者は大阪市内や京都市内に一直線に向かうため、空港近隣に立ち寄る人は限られていた。そこで、自治体が結集して魅力を訴求する取り組みが始まった。まだまだ知られていないが、見どころが多く空港に近いという強みを生かした好例だ。立ち寄り観光地としてのブランディング化を進める。

空からみた百舌鳥古墳群

空からみた百舌鳥古墳群

ポイント:
・素通りへの危機から地元が連携
・実情を踏まえターゲットを台湾の個人客に絞った

関空では、格安航空会社(LCC)を中心に中国や台湾などアジア便が増加し、平成27年1~6月の国際線の外国人客は58%増の458万人と大幅に伸びた。国際線全体の旅客数は21%増の756万人だったので、日本人利用よりも外国人利用が昨年より大幅に逆転している。

関空には日本の免税店の他、韓国のロッテデパートなどもすでに免税店として入っていて、さらに平成27年3月に免税エリアを現在の約1.4倍に拡張した。

こういった関空が盛り上がっている一方で、以前から地元は危機感を持っていた。
素通りされてしまうからだ。
例えば、関空から南海特急で大阪市街地へ、またはJRで京都まで一気に行く。さらに高速船で神戸に渡るというルートも人気がある。

地元では、これまでも黙って見過ごしていたわけではない。すでに手を打ち始めていたのだ。

大阪府内で、堺市以南の13の市と町を「泉州」と呼び、泉州観光プロモーション推進協議会という首長からなる協議会が設けられていた。堺市、和泉市、高石市、泉大津市、岸和田市、忠岡町、熊取町、貝塚市、泉佐野市、田尻町、泉南市、阪南市、岬町だ。

議題として、地域内に関空という国際空港があるにもかかわらず、素通りされてしまうことはもったいない。そこで、新たな戦略で当該地に外国人を呼び込む施策が練られ、平成24年9月1日に泉州観光プロモーション推進協議会が立ち上がった。

泉州の自治体と新関西国際空港株式会社が連携し、地域資源や特性を生かした関空イン・関空アウトのインバウンドに係る観光振興及び泉州地域のプロモーションを推進し、関空や泉州地域の活性化、国内外への泉州ブランドの確立に寄与することが目的だ。

会長は堺市長、事務局を堺市の観光部が担当。

アクションプログラムは、平成27年度までを「第1フェーズ」として、「泉州」を知ってもらうことに専念。
平成28年度~平成31年度を「第2フェーズ」として、「泉州」を訪問し、その魅力を発見・体感してもらう。
平成32年以降を「第3フェーズ」として、「泉州」を好きになり、リピーターになってもらうというもの。

当初、プロモーションを台湾に絞ることにした。

理由としては、台湾はリピーター率が高いこと。そして、個人旅行者が増加していて、団体客では訪ねないようなショップやレストランにも気軽に立ち寄る可能性が高い。また、団体のツアー客は、スケジュールが決まっているので、急に立ち寄るのは難しい。

個人客にはフライト時間に合わせた時間調整のために、地元エリアをまわってもらえる。泉州には、様々なニーズに対応できる魅力が点在していることから、立ち寄り観光地として訴求することとした。

ターゲットの台湾では、訪日旅行者のニーズを踏まえた、泉州ならではの魅力を印象づけることを意識したプロモーションを展開した。

現地の人気情報誌を活用し、地元で人気のラーメンなどの「食」を訴求ポイントに据えた。
ラーメン店のほか、茶の湯文化とともに発展を遂げてきた和菓子を含めたスイーツを中心に多く掲載された。

また、実際に関空を訪れた観光客向けには、「食」をはじめ、泉州が誇る「歴史」、「文化」「祭り」「匠の技」を訴求ポイントに据え、各所で公式ガイドブックを配布した。

「歴史」「文化」では、茶の湯発祥の地としての文化、世界三大墳墓である仁徳天皇陵古墳、岸和田城、水間寺などの史跡や神社仏閣が多数あり、日本の歴史を感じることができる。また、全国的にも有名な岸和田だんじり祭をはじめとしただんじりやふとん太鼓、やぐらなど、日本の伝統的な祭りで外国人に喜んでもらえる魅力的なコンテンツがある。

日本の伝統産業も盛んで、打刃物や人造真珠、毛布、つげ櫛、泉州タオルなどがあり、受け継がれてきた匠の技によって品質が高く、泉州のお土産品としても人気がある。

公式ガイドブックには各自治体の魅力が集まっている。日本でやってみたいことが凝縮されていることを印象づけ、最後の帰国前に立ち寄りたい地域として「泉州」を覚えてもらうのが狙いだ。

ところで、大阪市中心地のホテルは供給不足になり、郊外のホテル利用率があがっている。これはチャンスといえる。
地域内の宿泊施設にアンケート調査したところ、年々増加傾向で、200%にアップしているとの声も。

また、関空の観光案内所では、数時間の乗り継ぎや待ち時間があるので、観光や食事ができる場所を教えて欲しいという要望も聞いている。そういった要望にも対応できそうだ。

課題としては、依然として海外での「泉州」の認知度が低いという点がある。

そこで、留学生のPRサポーターを活用した取り組みが始まるのである。中国、台湾、韓国の出身で合計4名だ。
泉州のどこを発信したいか外国人目線で面白いところを自由に再発見してもらう。

現状はしっかりと台湾向けにノウハウを積んでいる。これを他の国に水平展開していきたいと意気込む泉州観光プロモーション推進協議会の事務局。

激しい動きのある岸和田のだんじり祭り

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岸和田城も見学が可能だ

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和スイーツも地域のおすすめとして外国人に紹介

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取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 中部・近畿

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