事例紹介

札幌がロケーションフォトウェディングという新しいマーケットで実績を伸ばしている

インバウンドは裾野が広い。結婚式前に記念写真を撮るという目的で、海外へ足を運ぶニーズがある。その新市場に札幌の結婚式場、フォトスタジオなどのブライダル業界が積極的にアプローチしている。現地の商談会の参加やモニターツアーなどの施策の結果、申し込み件数が伸びている。

冬の札幌ローズガーデンクライスト教会でライトアップ

冬の札幌ローズガーデンクライスト教会でライトアップ

<今回のポイント>
1:ロケーションフォトウェディングという可能性の種を見つけ育てる
2:香港のウェディングEXPOに出展して競合同士の連携
3:モニターツアーを募って魅力を拡散

2010年、札幌市が着地型観光(※1)の造成についてリサーチをしていた。
※1:着地型観光とは、観光客の受け入れ先が地元ならではのプログラムを企画し、参加者が現地集合、現地解散する観光の形態。地域の振興につながると期待されている。

台湾や香港から「ロケーションフォトウェディング」という目的で札幌を訪ねる人が増えていることがわかってきた。写真を撮影するのに、30~40万円の費用を使っている。

そのフォトウェディングという新しい市場とは何だろうか?

2000年代に台湾で人気が出たのが始まりとされ、香港や中国本土に広がっていった。
結婚パーティーの会場入り口に大きく引き伸ばした二人のウェディングの写真を掲示する。まさにウェルカムボードのように、パネルには幸せそうな2人の笑顔が来客を招くのだ。
その写真の背景にこだわり、ロケに海外まで足を伸ばすようになった。

日本では沖縄がすでに人気エリアで、青い海と白い砂浜をバックに写真を撮る。沖縄では「リゾートウェディング」というコンセプトを打ち出し、日本国内やアジアに向けて誘致活動が積極的だ。

そのリサーチの提言を受けて上田文雄市長(当時)は札幌をリゾートウェディングでの活性化策を打ち出す。
しかし、北海道で実際に結婚式をあげるとなると敷居が高い。できることからやるということで、ロケーションフォトウェディングに注力することに決定した。現地の結婚パーティーの入り口に、北海道を舞台とした新郎新婦の写真があれば、結果としてプロモーションにもつながると考えた。

2011年10月に「札幌ロケーションフォト・ウエディング協議会」が立ち上がった。結婚式場、写真館、貸衣装のお店など、6つの事業体が参画した任意団体だ。
今回のリサーチを担っていた株式会社KITABA代表取締役の酒本宏氏が協議会の代表としてサポートすることに。業界以外の人間のほうが調整役として適しているからと任命された。
http://www.sapporo-crw-photo.jp/

同協議会の活動の内容は、札幌のロケーションフォトウェディングの認知度を高め、海外から多く呼び込むことを目的としている。webサイト、パンフレット作成をして、香港ウェディングEXPOに参加することに。北海道運輸局と札幌市からブース代の補助も取り付けた。

香港ウェディングEXPOは、20年を超える実績があり、香港のみならず最近では中国本土からも訪れる人がいる。会場内は、リゾートウェディング、ハネムーン旅行、結婚式場、衣装、カメラ、婚礼サービス、ドレス、エステなど、ブライダルに関連することが、すべて揃い、ダイレクトに利用者に声が届く。2014年の実績で約300社が出展し、6万人を超える来場者があった。年に4回程度開催され、今年は80回目を超える。
札幌ロケーションフォト・ウエディング協議会のブースでは、パンフレットを配布し、通訳が案内する。

協議会のうち1社がすでにフォトウェディングの受け入れ実績があり、過去にもエキスポに参加している。そこが率先して、他の企業にもアドバイスをするなど連携が生まれた。普段は競合関係ではあるが、まずは札幌の良さを多くの人に知ってもらうのが大事だったからだ。また1社だけの出展だとコストも高くつくが、複数だと参加しやすくなったという。

具体的な商談は、各事業者の営業努力で頑張ってもらう。興味のありそうな方にメールアドレスなど連絡先を記入してもらい、後日フォローアップ営業をするなど、各社で対応。

2013年の出展時に、モニターツアーの案内をした。冬の北海道で写真を撮影し、イルミネーションの点灯式に参加してもらうコースだ。
フェイスブックやブログなどに写真や感想を投稿してもらい、評判を広げる作戦だ。

撮影場所としては、大通公園、永山というレトロな建物、さらに小樽運河だ。札幌市を通して小樽市に協力要請を取り付け、バックアップ体制もできている。

結果は好評で、夏もモニターツアーを開催し、富良野や美瑛の広大な景観で撮影をした。

最初は、5件の契約だったが、昨年の2014年は50件を受注した。単価が高いため、売り上げ総額が1,000万円を超えた。

認知度が高まってきた背景には、ハネムーンとして北海道旅行を満喫できることにある。ついでにブライダルフォトも撮影して帰るというオプショナル的なスタンスにあり、気軽に申し込みできるのだ。ドレスもweb上で選べ、料金も明快なため、そのままブッキング。
本格的ヨーロッパ建築の教会では、四季折々に咲き誇る花と、秋は色鮮やかな紅葉をバックに、冬は雪化粧の森と共に撮影が可能だ。結婚パーティーでは、自慢の写真を披露できることは間違いない。

カメラマンも勉強会を開き、よりドラマチックな写真など、どういったニーズがあるか情報交換をして満足度を高める研究をしている。

香港にスタッフを常駐させ、営業にあたらせるほど、力を入れ始めた写真館もでてきた。

札幌市の補助金は、設立当初から3年間のみということだったので、今年度はなくなる。
前向きに考えれば、今後は札幌市以外と組みやすくなり、これまで培ってきたノウハウを全北海道のために役立てられる。すでに十勝地方の新得町とロケーションフォトウェディングの取り組みをスタートさせた。今後も各地の写真館や結婚式場に声をかけていくと酒本氏。広がりが期待される。

上富良野の日の出公園でラベンダーをバックに

上富良野の日の出公園でラベンダーをバックに

大きなパネルでブースをアピール

大きなパネルでブースをアピール

熱心に商談を進める香港の参加者

熱心に商談を進める香港の参加者


取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 北海道・東北

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