事例紹介

小樽雪あかりの路に韓国人がボランティア参加、日中韓交流の好事例

小樽はレトロな佇まいが残るエキゾチックな街だ。映画の舞台にもなり、海外でも人気が高い。毎年冬に開催される「小樽雪あかりの路」は、見るだけではなく、参加できるイベントとして韓国や中国の学生からも注目されている。

運河に沿って灯籠が並ぶ

運河に沿って灯籠が並ぶ

<今回のポイント>
1:参加型のイベントだからこその感動が見つかる
2:外国人ボランティアの受け入れを進め交流を図る
3:一人の韓国人女性の共感がムーブメントとなった

「小樽雪あかりの路」は2015年で第17回目となるイベントだ。今や「さっぽろ雪まつり」と肩を並べる冬の北海道を代表する風物詩となっている。
期間中延べ12万本もの素朴なキャンドルの灯りが小樽の夜を照らし出す。小樽と言えば運河が有名だが、水面に数百もの浮き玉キャンドルが浮かび、幻想的な天の川に。そして、そのほとりには毎年オリジナリティーあふれるオブジェが並ぶ。この他、街中に幻想的な灯りスポットが登場し、通行人を魅了する。

「~時代が変わっても、不変なもの~ を大切にしたい」というコンセプトのもと、毎年続いてきた。毎回、50万人前後が来場し、初めてなのに、どこか懐かしさを感じるという。

ところで、「小樽雪あかりの路」が開催当初から「さっぽろ雪まつり」と大きく異なるのが、「参加型」、「手づくり」にこだわっている点だ。

「人のぬくもり」を大切に、市民一人ひとりが「あったかさ」を込めて、訪れた人をおもてなしする。さらに韓国・中国からの海外ボランティアを迎え「手づくり」に参加してもらっている。

10日間のボランティア参加人数は延べ約2,400名にまで上る。そのうちの約4分の1は、韓国、中国から参加するボランティアなのだ。

厳しい寒さの中での会場設営は心身共に凍える作業。予測できない猛吹雪の後は、コツコツと地道に除雪する。期間中、毎日一つひとつのキャンドルを設置し、火を灯し、風が吹いて消えるたびにまた一つひとつ手で灯してゆく。こんな厳しい環境なのに、毎年、韓国や中国から大勢の人が参加する。小樽の受け入れ人数には制限があるため、現地で選抜するほどの人気だという。

韓国からのボランティアは、2003年の第5回大会から毎年参加し、当初8人から始まった参加者は2015年には53人に上る。

なぜ、韓国から参加するようになったのか。

第2回と第3回に韓国の女性3人が、ボランティアとして参加した。とても生き生きと楽しそうに取り組んでいた。その姿を実行委員の米花正浩氏(現副実行委員長)が着目。そこで同氏の会社の社員であった韓国人のユン・ミンソクさんを通じて韓国国内でのボランティア募集を働き掛けてみたのだ。

ユンさんは第4回から自らもボランティアとして参加し、その魅力をインターネットで広く発信。それを見ていた若者たちが独自でメンバーを集め、韓国人ボランティア団を結成。現地で規模を拡大させていった。
2007年には、OKOVO(Otaru snow light path KOrean VOlunteers)と命名された。

OKOVOは、韓国の大学生を中心に組織運営され、イベント期間中のみならず、通年で韓国国内において「小樽雪あかりの路」に向けた準備活動を続けている。毎年約50名の定員に対して300~500人の応募があるほどの人気だ。

なお、イベント参加滞在中の宿泊施設は、朝里川温泉ウィンケルビレッジ。彼らはここで合宿生活を送りながら、雪あかり会場とを往復し、ボランティア活動に参加。

中国からは、深圳大学の学生を中心に第10回から参加。このきっかけとなったのも韓国人のユン・ミンソクさんである。ユンさんは2007年に深圳大学に留学した際に「小樽雪あかりの路」の魅力を広め、メンバーを募ったことから始まった。その後、ユンさんが留学を終えて帰国した後も深圳大学の学生が中心となって活動を継続している。

一方、日本の学生を中心としたボランティア組織もある。「おたる雪あかりボラ『橙』(だいだい)」という。
「橙」の名前の由来は、「小樽雪あかりの路」に欠かせないキャンドルのほのかな明かり(橙色)だ。イベントにかかわるすべての人の心にあたたかい火を灯し、「ここに来て良かったな」と思われるようなイベントづくりに貢献することを目的に2013年に結成。
イベント期間中「日本人学生合宿生」として泊まり込みで共同生活をおこない、毎日さまざまな人と交流しながらボランティアをする。
このボランティアを通して、老若男女、さらには国境を超えて、韓国や中国など、実にたくさんの人と関わることができる。

その経験を通じてしか生まれない「感動の共有」、「友情」が、スタッフの間には芽生えていくと言われている。
参加した感想は、日本人も外国人も共通している。一緒に作るということが感動を呼び、幻想的なイベントに参加できた満足感がある。

このイベントは、韓国ドラマのロケにも使われ、2014年の開催時には、俳優のチュ・ジフンさんからの寄付もあるなど、大きな広がりとなっている。

小樽市は事務局として海外ボランティア受け入れをバックアップし、国際交流を後押ししている。
今後も、小樽と韓国・中国を結ぶ交流の掛け橋として期待が高まっている。

ふくろうの森を表現した

ふくろうの森を表現した

韓国ボランティアチーム(OKOVO)の作業風景

韓国ボランティアチーム(OKOVO)の作業風景

中国チームと日本人のチーム橙の作業風景

中国チームと日本人のチーム橙の作業風景

幻想的な雪明かりだ

幻想的な雪明かりだ


取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 北海道・東北

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