事例紹介

瀬戸内しまなみ海道をサイクリングで楽しむ外国人旅行者が急増!  

広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」。
海上の道を通り、多島美を楽しむこのコースは、2009年ころからサイクリング客が増加。2013年ころからは外国人旅行者も急増している。その陰には愛媛県、広島県、今治市、上島町、尾道市の広域連携による積極的な誘致活動とサイクリング環境の整備があった。

しまなみにしかない多島美の風景

しまなみにしかない多島美の風景

今回のポイント

1. 5つの県市町が「サイクリング」にフォーカスして本気の連携
2. 魅力ある地域資源「瀬戸内しまなみ海道」をさらに磨き上げる整備、工夫

1999年に開通した「瀬戸内しまなみ海道」は、6つの島々を9つの橋でつなぎ、日本で唯一、自転車道が併設されている高速道路であり、瀬戸内海特有の多島美を楽しみながら海峡をわたり、まるで海上を走るような感覚が味わえる。

愛媛県は、しまなみ海道を「サイクリストの聖地にしよう」と提唱し、広島県、今治市、上島町、尾道市と連携して、環境整備や地元住民の理解促進・支援、インバウンドを含めた誘致プロモーションに積極的に取り組んでいる。

広島県は、しまなみ海道の更なるブランド力向上に向け、関係自治体とともに、国に対してナショナルサイクリングロード制度の創設を働きかけている。

海風を感じながら爽快なサイクリングを楽しめる

海風を感じながら爽快なサイクリングを楽しめる

尾道市、今治市ではしまなみ海道開通を機に、その特性を生かした「レンタサイクル」の運営をスタート。また、瀬戸内しまなみ海道振興協議会は、展示会等のプロモーション活動やイベントの開催などにより、しまなみ海道の認知度向上に貢献している。

これらの多様な取り組みにより、国内外から旅行者が集まっている。
しまなみ海道観光マップ http://www.go-shimanami.jp/

世界から注目を浴びる起爆剤になったのは、2012年5月世界最大の自転車メーカーGIANT社の劉会長を団長とする台湾等の訪問団(自転車関係者やメディア)が瀬戸内しまなみ海道を訪れたサイクリング交流イベントである。会長がこのコースを「まさにサイクリングパラダイス」と絶賛。このイベント以前に中村愛媛県知事が台湾を訪問し劉会長と面談し、信頼関係を築いたことがきっかけで、サイクリングイベントにつながった。もともとサイクリング熱が高い台湾人旅行者をはじめ、2014年6月のCNNでの特集などもあり、世界各地の旅行者が訪れるようになった。旅行の口コミサイト「トリップアドバイザー」などでも高評価を得ている。

(※GIANT
2012年4月には、JR今治駅構内にGIANTのブランドストア「ジャイアントストア今治」がオープンしており、国内のジャイアントストアでは初となるレンタサイクルの独自サービスも開始されている)

この人気の要因は、関係県市町の地道な環境整備や地域住民のあたたかなおもてなしにもある。
沿線の各地区にある15か所のレンタサイクルターミナルで、気軽に自転車を借りることができ、乗り捨ても自由! サイクリング推奨ルートを示すブルーラインを全線に塗布するなど環境を整備してきた。
「サイクルオアシス」と呼ばれる休憩所では、小売店やガソリンスタンド、喫茶店、農家民宿などが、空気入れの貸出、給水、トイレの利用、観光マップの提供などを行って、世界各地のサイクリストをおもてなししている。

(広島県では、使用されなくなった港湾施設をリノベーションしてサイクリスト向け複合施設として尾道市に整備。自転車を部屋に持ち込むことができるホテル、レンタサイクルやメンテナンスも可能なGIANTストア、サイクルスルーのカフェなどを備え、民間事業者が運営している。http://www.onomichi-u2.com/))

具体的にインバウンドの数字をみてみよう。

しまなみ海道のレンタサイクルにおける外国人利用者数は2012年度では1361人、2013年度は2232人と倍増の勢い。2014年4月~10月の集計でもすでに2013年度を超えて、2700人が利用している。(出典:尾道市集計より)

2014年10月に開催した国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ」では、7281人の参加者のうち、外国人が500人以上参加。台湾145人、韓国138人、中国75人等、31の国と地域から参加があるという盛況ぶりだった(出典:瀬戸内しまなみ海道・国際サイクリング大会実行委員会)前年の2013年10月にプレ大会「サイクリングしまなみ2013」を実施、供用中の高速道路を交通規制するという国内で前例のないサイクリング大会を開催するという周到な準備の上での成功だったといえる。

「広域連携」とうたってもなかなか実質の事業がすすまないことが多い中で、「サイクリング」をテーマにしたこのエリアの取り組みには見習うべき点が多い。受入整備も誘致も連携すべきところは連携し、個別事業も切磋琢磨してより高い次元を目指している。

愛媛県内では「瀬戸内しまなみ海道」だけでなく、海側、山側のさまざまなルートを「サイクリングコース」として拡充している。これは愛媛県をサイクリングパラダイスにしようとする政策に沿ったもの。
広島県も「とびしま海道」などの海側コースだけでなく、山中などのさまざまなルートを整備している。これら整備されたコースを制覇したいなら、自ずと滞在期間はのびることになる。
上島町では観光客専用の自転車船賃をフリーにする「サイクリングフリー」事業などのサイクリスト向けの施策も行っている。2014年2月には上島架橋の愛称が「ゆめしま海道」に決定した。「ゆめしま海道」の認知を高め、サイクリングによる観光地化、地域交流の促進に向けてさまざまな事業に取り組んでいる。

誘客促進事業もますます推進する予定だ。

台湾では旅行商品も組まれているが、さらに国を超えた地域間交流も強化。瀬戸内しまなみ海道振興協議会(尾道市・今治市・上島町ほか19団体で構成)は2014年10月に台湾・日月潭サイクリングロードとの姉妹自転車道協定を締結し、サイクリングを通じた日台間の交流促進を進める。

愛媛県は、2013年からインドネシアで誘客戦略を開始。ガルーダ・インドネシア航空等と連携し、旅行会社との調整やムスリム受入体制の強化にも努めている。

広島県は、フランスやオーストラリアからの更なる誘客に向け、現地メディアやサイクリング団体を招請するなど、サイクリングの魅力PRを積極的に推進している。

尾道市では韓国・釜山国際観光展への出展やフランス・パリで開催された「広島フェア」などを通じて、サイクリングを中心としたインバウンド施策を積極的に展開している。

世界に向けて「サイクリングの聖地」として認知が広がっている。

サイクリストのために整備されたブルーライン

サイクリストのために整備されたブルーライン

サイクルオアシスであたたかいもてなしに触れる

サイクルオアシスであたたかいもてなしに触れる

2014年10月に行われた「サイクリングしまなみ」

2014年10月に行われた「サイクリングしまなみ」

2014年11月に台湾で開催したプロモーション 左から今治市長、尾道市長、上島町長

2014年11月に台湾で開催したプロモーション
左から今治市長、尾道市長、上島町長


取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 中国・四国

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