事例紹介

富山県の観光人材プログラムを卒業した女性が、八尾で観光拠点づくりを実現!

富山県は観光人材の育成に力を入れている。そのプログラムには実地を経験しながら学べるという利点がある。ここで学んだ女性が、富山市八尾(やつお)町にある古民家を改装して、2016年の4月に観光拠点をスタートさせた。彼女は、観光について一から学べる機会が持てて良かったと振り返る。

古民家を改装した「越中八尾ベースおやつ」の入口

古民家を改装した「越中八尾ベースおやつ」の入口

ポイント:

・富山の魅力を発信できる若い観光人材を県が育成する
・実地研修があるおかげで、外国人目線による日本の魅力に気づく
・観光について、まったくの初心者でも研修を経てゲストハウスを完成

■富山県の観光人材育成プログラムを経て、八尾で起業!

富山県には、「とやま観光未来創造塾」がある。これは、観光人材を育成する富山県が主催するプロジェクトだ。
http://www.info-toyama.com/kankomirai/
このプロジェクトの中に、インバウンド人材向けとして、「グローバルコース」がある。これは、外国人旅行者向けに、ツアーのプロデュースやツーリズム事業の立ち上げ等を目指す人材を育成するものだ。着地型ツアー会社等で実際に働きながら、起業や就業に必要な技術・知識を身につけることができるコースとなっている。

2015年にこのグローバルコースで学んだ原井紗友里さんは、2016年4月に富山市八尾町に「越中八尾ベースおやつ」をオープンさせた。原井さんは、富山市の出身ではあるが、八尾が地元ではない。しかし、未来創造塾に入塾し、最初に富山県内の観光地を視察してまわった際、八尾の街の美しさに感動したそうだ。そして、八尾で暮らしを体験できる場づくりを目指そうと考えたのだった。そういった思いから、ここには、八尾の魅力を巡るツアーの拠点として、宿泊施設やカフェコーナーを設けているのだ。

ちなみに、この施設は、1872(明治5)年に建築された古民家で、元蚕種・生糸商人の家だった旧数納(すのう)邸を改装したものだ。重厚な蔵の扉もそのまま利用している。

オープン当日は、同所で開業記念式を行い、地元住民ら約80人が集まった。原井さんが「八尾は自然、文化が豊かで魅力的だ。外国人旅行客の飛越地域観光のハブ的役割も果たせる」とあいさつした。八尾山田商工会の井山泰樹会長や未来創造塾で講師を務めた「美(ちゅ)ら地球(ぼし)」の山田拓代表もお祝いにかけつけた。

開業記念式典には多くの参加者がお祝いをした

開業記念式典には多くの参加者がお祝いをした

■「とやま観光未来創造塾」の「グローバルコース」、そのプログラムの内容とは?

2015年に原井さんが未来創造塾の門をたたくきっかけの一つとなったのは、県内の企業コンサルティング会社に勤めていた際、レストランで外国語のメニューが欲しいという意見を聞く等、県内にもインバウンドの波が来ていることを肌で感じたからだ。

そして、2015年5月に入塾試験があり見事合格。ちなみに、着地型ツアーの企画・実施について県内で起業意欲のある者かつ英語で日常会話ができる者等が入塾の条件だ。

研修は、岐阜県飛騨市にある訪日外国人向けのツアーサービスを提供する会社に、7月から約6カ月間派遣される形で行われた。雇用型研修となっていて、給料をもらいながら学ぶことができるのだ。

カリキュラムの狙いとしては、まずは、ツアーの現場で実際に働き、ガイド技術を身につけることだ。次に、ツアーのプロデュースやビジネスとしての起業・就業等に必要な知識・技術の習得を目指す。そして、最終的には、事業計画を策定して、実際に事業立ち上げ可能なレベルに到達することを目標としている。

研修先は、お祝いにもかけつけた山田氏の「美ら地球」だ。ここは、宿泊施設の他、「飛騨里山サイクリング」など、外国人向け田舎旅の総合プラットフォーム「SATOYAMA EXPERIENCE」を運営している。また、クチコミサイト「トリップアドバイザー」にて、4年連続で優良施設認定を受けている。

研修で滞在した飛騨古川にある棚田の素朴な景色が外国人には人気

研修で滞在した飛騨古川にある棚田の素朴な景色が外国人には人気

研修を受講した原井さんは、「実地と座学のバランスが良かった」と振り返る。
実地研修については、例えば、ツアーの満足度をいかに高めていくのか、現場の運営に直接関わることができる。
また、ツアーを企画するときに何が必要であるかのヒントを、外国人のお客さんが感動している姿から読み取ることができる。田んぼのあぜ道にも感動している姿は新鮮だったそうだ。ヨーロッパではあまり米を作らないので、水田が珍しいのだ。また、畦道でランドセル姿の子供たちの姿を目にして、喜んで手を振っていた。

一方、座学では、業界の全体像、ロジカルシンキング、プロモーションの進め方、付加価値をいかにつくっていくかなど起業につながることを学ぶことができたそうだ。事業計画書づくりも、卒業後の今に役立っている。

■「越中八尾ベースおやつ」に込めた思いと、県産品の海外販路開拓支援へ

原井さんは、「おやつの時間のように人が集まるような施設にしたい」との思いを込めて八尾の施設を名付けたという。
この施設を国内外の個人旅行者と町人文化を受け継ぐ地域の住民をつなぐコミュニティースペース兼町人文化体験施設として機能させていくことを目的としている。また、三味線や越中和紙作りの体験、日本酒や養蚕の歴史学習、八尾の食文化や生活文化を体験できる外国人向けツアーなどを企画している。

一方で、「すぐにインバウンドだけで十分な利益を出すことは難しい」と、原井さんは言う。そこで事業をソフトランディングさせるための秘策を持っていた。
それは、インバウンドだけではなく、コンサルティング会社でやっていた県産品を海外へ送り出すサポート事業を並行することだ。具体的には、香港やシンガポールなどアジアの商談会で、富山の食品の売り込みをコーディネートしている。
その際、現地の商談会で、その富山の加工食品を作る過程や農場を見に行きたいという話が、商談先から持ち上がった。すかさず観光情報や宿情報も提供したところ、喜ばれたと言う。

インバウンドと県産品を送りだすクールジャパンを組み合わせていく。
実は、このコンセプトは、原井さん自身が入塾試験でプレゼンした内容だった。「とやま観光未来創造塾」で、より具体的にブラッシュアップできたと振り返る。
越中八尾で始まった新たな動きに、今後も目が離せない。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

Categories:インバウンド | トピックス | 関東・信越

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